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1章 -20- 森を抜ける


 さて、ゴブリンは森を東に抜けた人間の街の手前に陣取って生活しているらしい。

 しょっぱなからぶつかることは避けることにして、ひとまず人間の街を目指すことにしてみた。

 ゴブリンのような初級の魔物は楽勝とか思ってしまいそうだが、ここはゲームやマンガじゃない。

 チュートリアル無しで盗賊や大イノシシとのエンカウントだってあったのだ。

 マンガとかでよくある定石通りとは限らないのだ。ゴブリンだからと気を抜けない。 


 そもそも人間が手を焼いているという事は、それなりに強敵だということでもあるだろうし。

 エルフの皆さんはあまり情報を持っておらず、ミザリーたち精霊は言っていることが楽観的すぎてちょっと不安。

 ひとまずは人間の街で情報収集と、観光を楽しもうと決めたのだ。後半が本音。


「で、南雲サンは何をしていらっしゃるので?」

 いざ旅に出ようと村の端まで来たところで振り返る。

 エルフたちには挨拶を済ませて、見送りに人が集まっていた。

「ついていこうとしてるに決まってるでしょ!?」

 そんな中、俺の背後から荷物を背負ってついてくる南雲にイライラ気味に言われた。

「何で? ここの生活にもだいぶ馴染んできたじゃん」


 これからどんな危険があるかもわからない冒険に出るのだ。

 初日のように盗賊に襲われることもあるかもだし、もっとヤバイ魔物に遭遇するかもしれない。

 俺みたいな変人はともかく、南雲がわざわざそんな危険を犯すとは考えていなかった。


「あんた無しで生きていける自信なんてないわよ」

「え、それって俺に揉まれながらじゃないと寝れない身体に……ぶへっ」

 思いっきり頭を叩かれた。

 だって俺にゾッコンみたいなこと言うから……

 ていうか何で今防御魔法発動しなかったの?

『叩かれるべきノリかと思いまして』

 カグラさんは空気が読めるなぁ。さすが風の精霊様。ちくしょう。


 目の釣り上がった南雲を前に頭を押さえてうずくまる。

 まあ、確かに俺無しではエルフは人間には厳しい対応をするだろう。

 元々俺が精霊憑きだったから受け入れてくれていたのだ。南雲は俺の従者扱いだったし。

 会話が出来るようになったと言っても、南雲はエルフと馴染んではいない様子だった。

 そう考えると置いていくのもしのびない。

 仕方ない。

 連れて行くことにした。


「ほれ、乗れ」

 俺は南雲に背中を見せてしゃがんだ。

「なによ、自分の足で歩くわよ」

「歩かないつもりなんだけど」

「え?」

「いいから乗れって」

 ちなみに俺は手ぶらに近い。

 なんか良く分からないが空間を扱う精霊がいたので収納してもらったのだ。○次元ポケット的な。便利だぜ。


「人を乗せてやるのは初めてなんだけど、大丈夫だろ」

 南雲を背中に乗せ、しっかり掴まらせると、身体に魔力を張り巡らせる。

 ついでに背中に集中し、2つの柔らかな幸せを感じとる。

「それじゃ皆さん、しばらくお世話になりました!」

 エルフの見送りたちに挨拶をし、空を見上げる。

 両足に力を入れると同時、カグラの力を解放する。

 次の瞬間には俺たちは空の中にいた。

「な、何これっ!?」

 びっくりした南雲が必死にしがみついてくる。一瞬嬉しくなりかけたが、マジでしがみついてくるのでちょっと苦しい。

 もっと程よい感じでギュッとして欲しかった。


「空中散歩だよ」

 圧縮した空気を足の裏くらいで爆発させ続け、その反動で飛び上がる。

 そして回りの空気ごと風で押し上げ、空気抵抗を消していく。

 そのため、けっこうな速度で空を飛んでいるものの風圧による苦しさはない。会話も出来てるし。

 周囲を覆う風はバランス調整の意味もある。おかげで安定飛行だ。

 うぇーい。

 こんな爽快な移動方法、元の世界では一生体験できなかっただろうなぁ。

「南雲さあ、こっちの世界も案外悪くないだろ?」

 だから俺をこっちに連れてきたことなんて気にしなくて良いんだぜ?

 いまだにこいつは俺たちの死因について気にしている節がある。

 ギャルのくせに気にしいだ。笑い飛ばしてもいいくらいだと思っているのだが。

 それでも、こんな楽しいことを知ってもらえれば少しは変わるのではと思うのだ。

 そう思いながら声をかけたが、


「……マジで怖いっ!」

 あ、そうっすか。

 南雲サンはそれどころではなかったようだ。

 まあ、こういう話はもうちょっと落ち着いてからしようか。



「南雲ってさ、高いところ苦手?」

「あんたバカなの!? 苦手じゃなくてもあんなの怖いに決まってんでしょ! なんで人間が空飛んでんのよ! 常識考えなさいよ! しかも高すぎるわよ! どれだけ高いところ飛ぶのよ!?」

 キレまくってる南雲サンが怒鳴りまくってくる。

 俺もマジ怖い。

 しばらくの空中移動を楽しんだ(俺だけ)のち、地上に降りて小休止中。

 森を一気に抜けるにはさすがに休憩が欲しかった。

 魔力の残量的には割りと余裕があるのだが、使い切ってしまうのも怖いもの。何かあったときに魔力なかったとかヤバすぎる。

 とりあえず温存しながら移動しようと考えたのだ。

 2時間ほどの飛行で森の半分くらいまでは来た。地上付近を飛ぶと何かと遭遇しても怖いので、わりと高い空を進んでいたのだが、その際、人間の街と思しきものまで見えていた。

 だいぶ遠かったが、飛行魔法(仮)が思いのほか優秀であっという間に半分きてしまったというわけだ。


 現在は森から離れ、そこそこ標高のある岩山に着陸している。

 進路からは若干逸れたが、せっかく高いところを飛んでいたので地上まで降りるのがもったいなかったのだ。

「だいたい、アンタは自分で飛べるからいいけど、アタシは落ちたら死ぬのよ!? 何で説明も無しにいきなり空飛んでんのよ!? 落ちたらどうするのよ!?」

「んー、今度は死んでも助けるよ」

「え、そう…………って違うわよ! 何であんたが死ぬのよ! アタシなんか見捨てなさいよ!」

 一瞬落ち着きかけた(というか、照れかけた?)南雲だったが、理不尽にまたキレた。

 どういうキレ方だよ。

 これはやっぱりまだ気にしているようだ。重症だな。

 まあ、とりあえずそういう話は落ち着いてからだ。さっき学んだもの。

「とりあえずそれは置いといて、説明無しで飛んだことは謝るよ」

「何で謝るのよ!」

 理不尽!

「だって南雲サン怒っていらっしゃるし」

「キレてんのよ!」

 ですよねー。

 どうすりゃいいんだよ。俺にはギャルの思考回路は分からない。


 悩んでいると南雲から回答が出てきた。

「…………ごめん。アタシがテンパッてた」

 地上に降りて少し落ち着いたのか、若干冷静になった南雲が気付いてくれた。

 よくキレる南雲だが、物分りは悪くない。自分の理不尽に気付いてくれたようだ。


「まあ、説明無しに空飛んだのは俺が悪いし」

「そうよ。あんた常識って知ってる?」

「一応は」

 とりあえず飛行魔法について説明する流れとなった。

 南雲は岩場に腰掛け、ふんふんと話を聞いている。

「それってアタシにもできる?」

「一応練習すればできるんじゃないか? ただ、魔力の消費はけっこう多いから魔力量しだいだけど」

「そっか」

 そういえば、こいつも転世時に『魔力が溢れてくる能力』を貰っていたはずだ。

 転世のギリギリのタイミングだったので本当に貰えているのかは謎だが。

「ま、そのうち練習してみるか」

「うん」

 素直にうなずく南雲。

 こいつ、なんだかんだ言って自分も空飛んでみたいのでは???


 のんきに話しをしていると、突風が吹き抜けた。

「おおっ?」

 驚いて空を見上げる。


『ドラゴンね』

 ドラゴンだな。

 俺たちの真上に真っ赤な翼竜みたいなのが飛んでいた。

 何で空飛べるんだろうと思う巨体を艶やかな赤い鱗が覆っている。バカデカイ翼が周囲の空気を巻き込みながら羽ばたいている。まさしくドラゴンというやつだろう。


「ドラゴンだな!?」


連続更新っぽいですが、以前書いてたものを手直ししてるだけなのです。。。

しばらくは更新できます。

その後も頑張って更新して参ります。

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