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1章 -14- ろくなヤツがいない…


 翌朝。

 部屋に差し込む朝日で目を覚ました。

 窓は木の板なので、その隙間からキラキラと入ってくる光の筋が目元を照らしていたのだ。

 ミズキたちのクーラー魔法のおかげで寝覚めはすっきりだった。


 部屋を出ると、外では朝食の準備が始まっていた。

 昨晩のイノシシ肉の残りと、木の実などのサラダが用意されていた。

 俺に気付いたエルフ達が駆け寄ってきて、丁寧に席へと案内される。


 席につくと、すでに南雲が案内されていた。

 相変わらず椅子はない。

 朝は弱いのか、ぼーっとつっ立っている。

 クラスメイトの女子に朝一番どう挨拶すればいいのか一瞬躊躇した。


「お、おはよう」

 思わずどもってしまった。

「おはよ……」

 南雲はこっちも見ずにぼそりと答えた。

 低血圧なのだろうか?

 とりあえず、エルフの方々にお願いして南雲の席も用意してもらう。

 朝食が始まった。


「南雲、お前大丈夫か?」

 ぼーっとしたまま手を動かして食事をしている南雲に問いかけた。

「別に。ちょっと寝つけなかっただけ……」

 確かに夜も暑かった。ミズキたちのクーラーがなければ俺も寝れなかったかもしれない。

「あんたはすっきりしてるわね……」

 ギロリと睨まれた。

「あ、あはは。まあ、アウトドアとかも好きだったからな」

「ふーん」

 興味なさそうな返事だな。

 食事が終わり、村長に呼ばれた。

 昨晩の件で話があるようだ。



「俺たちに何する気だこの原住民ども!」

「さっさとこの縄をほどけぇ!」

 檻を見に行くと、昨晩の男たちが騒いでいた。

『反省してないわね……』

 ミズキのイラっとした声が聞こえた。

 お前ら、痛い目見たくなかったら大人しくしとけよ……。


「おい」

 近づいて話しかけた。

「ひいっ!?」

 一人悲鳴を上げたやつがいる。失礼な。そんなに俺が怖いか。

「こ、これは悠太さん! おはようございます!」

 さっきまでの怒声はどこへやら。急にかしこまった態度で話し始めた。

 一番屈強そうな男だ。一番最初に飛び出してきたやつ。そして俺を殴ろうとしたやつ。

 明るいところで改めてみると、やっぱり筋肉ごつすぎる。何とか神拳とか使いそう。


「お前ら結局何者なんだよ」

 とりあえず状況整理から始めようと思う。

 村長も俺の隣で成り行きを確認しているようだし。

 話しが通じないから、俺に判断を仰ぐって事なのだろう。


「お、俺は北野拳士郎といいます! 日本から来ました」

 名前も世紀末っぽいな!?

「日本からって事は、転世か?」

「そうです! 死んで女神様に力をもらってここへ来ました」

 てことは悪人か。

 元の世界で何かしらの罪を犯した人間がこちらに送られるのだ。罪状と死因くらいは確認しておくべきか。


「お前は何の罪状で地獄送りになったんだよ」

「は、はい。俺はヤクザの下っ端してたんですが、JKが好き過ぎてよく女子高に忍び込んではパンツを盗んでまして」

 女神にはそれが原因で転世が決定したと言われたそうだ。いろいろ残念なやつだな!?

 ヤクザやってたくせにヤクザが罪状じゃないのかよ。

 ちなみに死因は女子高から逃げる際に校舎の3階から転落。打ち所が悪くお亡くなりになったそうだ。本当に残念なヤツだな。

 本人はJKのパンツに包まれて死ねたのだから本望だったとか言っていたが、忘れよう。

 それで南雲に反応していたのか。


「で? どんな力をもらったんだ? 正直に言えよ」

「はい。俺は“強靭な肉体と付随して屈強な力”を貰いました」

 単純なパワータイプか。しかしその能力名はなんだ。

『嘘じゃなさそうですね』

 脳内会議でそう結論付けられた。精霊たちがそう言うのなら事実なのだろう。


「他の4人もそれぞれ答えろ」

 そういって全員から話をさせた。


「俺はアイドルの追っかけで自宅やら学校やら撮影場所やらを付回しすぎてストーカーだと言われてここへ来ました。能力は“強靭な肉体と付随して屈強な力”を頂きました」

「あっしは覗きがやめられず近隣の銭湯全てで出禁になるくらい覗きすぎでここへ来やした。能力は“強靭な肉体と付随して屈強な力”を頂きやした」

「俺は女子の臭いをかぐのが好き過ぎて電車で女のにおいをかぎすぎでここへ来ました。能力は“強靭な肉体と付随して屈強な力”を頂きました」

「オレは盗撮がやめられなくて撮影枚数が100万枚突破記念にここへ送られました。能力は“強靭な肉体と付随して屈強な力”を頂きました」

 能力レパートリー少なっ!? 全員同じかよ。

 てか盗撮100万枚突破記念ってなんだよ!?

 ろくなヤツいねぇな!


 話しを聞いていると状況が分かってきた。

 世界を変えろと言われ力を授かってここへ転世されたようだが、何をすればいいのか分からず力に任せて暴れていたそうだ。そのうち同じ境遇のやつと出会い今に至ると。

 そして力こそ正義な感じのこの世界なら自分たちけっこうやっていけるんじゃねと結論づけ、まずは美女で有名のエルフを狙って活動を開始したそうだ。

 マジで駄目なやつらだった。


「あんたたち……」

 気付くと俺の横にミズキが顕現していた。

「あ、姐さん!?」

 なんだ姐さんって。

「あんたたちはこれから悠太のドレイよ。しっかり働きなさい!」


「こんなムサい奴隷いらん」

 こんなヤツら連れて歩くと思うと吐き気がする。想像すらしたくない。

「奴隷なんていらないわ! ……とにかく絶対服従。まずはこの村のために献身しなさい。でなければ全員殺すわよ」

「は、はいいい!!」

 拳士郎たちはビビリ上がり、分かりましたと元気良くうなづいている。

 縦に首を振りすぎて、そのまま折れそうだ。いっそ折れてしまえ。



 まあ、これ以上悪さはしないようだし、大丈夫だろう。

 身の程も知ったわけだし、無謀な夢は持たないだろうし。

 言うこと言ってすっきりしたミズキが俺に頬ずりしてくる。

「$“%#$%#」

 その横ではエルフ達がひざをついて頭を下げていた。

「おおう?」

「聖なる精霊様にお会いできて光栄ですだっテ」

 ミザリーも横に出てきていた。自由だな。

「%#%$$#、“”%#“」

 ミザリーが跪くエルフたちに何かを言っている。

 それを聞いたエルフ達が俺を見て、ことさら深く頭を下げた。


「なんて伝えたんだ?」

「その聖なる精霊をも従える精霊王・悠太様に献身せよト」

 何言ってんだよ。

「%##$“”$“」

 エルフたちにどよめきが走る。

 今度はなんて伝えたんだ?

「悠太様に憑いている精霊は私たちだけではないっテ」

 面倒そうだったから言わなかったのに……


「$%“%#”#」

 エルフの長が何かを言っている。

「この村の全てを捧げてお接待をするっテサ」

 無期限でこの村に滞在できるようになったらしい。

 まあ、悪い話ではないが。

 優遇されすぎて逆に居心地が悪くなりそうだ……。


頑張って更新していきまーす。

今後とも宜しくお願い致します。

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