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3章 -9- 笑顔の証


 翌朝。


 また微妙な表情をしているエルシアと合流し、食堂へと下りた。

 眠くなったとか言いつつ、ベッドに入ったらハッスルしてしまったのだ。

 だって、思春期真っ盛りの男子高校生が無防備な美女と美少女を前にして我慢できるとでも?

 無理だよね。

 そもそも夕方から“待て”状態だったメディーさんが積極的に迫ってきたのでどうしようもなかったし。

 というか、メディーや精霊の結界はなんでお仕事してないの?

 エルシアさんに筒抜けな感じなんですが?

 いや、その前にもう少し節操というものを……考えよう。考え……ま、いいか。



「おはよう」

 食堂へ下りてきた俺たちに、ハリーが声を掛けてきた。

「おー、おはよう」

 食堂ではハリーたちがすでに待っていた。エリーさんとマリーさんも一緒だ。

 どうやら同じ宿に泊まったらしい。

 ハリーは個室で、エリーさんとマリーさんは同室だったようだ。

 食事を取りながら、ハリーが言った。

「昨日の話だが、僕は王都に行って、もう一度あの伝記を読んでみようと思う」

 昔何度か読んで大まかな内容は覚えていたそうだが、著者の確認も含めて見に行ってみるそうだ。

 ハリーたちは昨晩あれからも話をしていたらしい。

 結論、彼らも考えるだけでは何も分からないという結論に至り、伝記の中にヒントが無いかを探すこととなったということだ。

 てか、王立図書館の秘蔵庫と言っていたが、そうそう入れるものなのだろうか。


「君たちはどうする?」

「あー、俺たちも王都には行こうと思うよ」

 逃げていったケイトのことも気になるし、ヴィーも探さないといけない。

 この辺にいないという事は、先に王都に入ってしまった可能性もあるのだ。

「そうか。ではまた会うことになるだろう。君とは不思議と縁を感じるんだ」

 ハリーはそんな気持ちの悪いことを行って先に旅立っていった。

 男と縁を感じられても嬉しくないぞおい。



 俺たちも食事を終えると旅立つ準備を整えた。

 といっても、宿に荷物を置いている訳でもなく、買い物をするでもない。

 ほとんどの手荷物はメディーのポーチの中か、俺の精霊さん空間収納に納まっている。

 着の身着のまま、宿だけチェックアウトして街を出るだけだった。

 この街では十分のんびりしたし、高橋たちにまた絡まれると面倒だ。

 さっさと王都に入ってしまおうということになった。


 王都への道のりはさして長くない。

 街から王都の城壁は見えているのだ。

 街道は一本道でまっすぐ伸びており、歩いて1時間弱で城壁にたどり着く。

 大体徒歩1時間といえば4から5キロメートルほど。そんなものなんだろう。

 城壁に近づきすぎないのは、万が一魔物などに攻められた際に城壁で対応するためだろう。

 そこに街があれば物陰に隠れられ、弓矢などの遠距離の攻撃もできなくなる。

 城壁には立派な城門がついている。

 アルシアードやエルケンリアードと比較するのもおこがましいほど立派な城門だ。

 高さも横幅も半端じゃない。たぶん厚みもすごいのだろう。全開にすれば軍隊が行進しながら出て行けるような大きなものだ。

 分厚い巨木と鉄とを合わせて作った扉は人の手で押す程度では動かす事はできないだろう。これまた太い鎖が繋がっており、両サイドの城壁の上から引き上げ、浮かしながら開閉するようだ。

 大門の横には通常時の通行用に小型の門もあり、旅人や商人たちはそこに並んでいた。

 俺たちもその列に並んだ。

 相変わらずのスローワークで、列は長く連なっている。

 進行もかなり遅いようで、列の中ごろでは寝ている人間なんかもいる。


 待ち時間に焦れて並ぶ人々を消し飛ばそうと言い出すエルシアをなんとかとどめながら待っていると、

「開門! 開門!」

 衛兵たちの大きな声が響き渡った。

「なんだ?」

 ガチャガチャと音を立て、城門を引き上げる鎖が巻き上げられた。それでも門は持ち上がらず、ズリズリと地面をこする音を立てながら、ゆっくりと開き始めた。

 列から離れて門の前にいた人々が慌てて道を開ける。

「王国騎士団だ」

 近くに並んでいた知らない人がそう口にした。

「おお、かっこいいな!」

 立派な毛並みの馬にまたがったフルプレートの騎士たちがぞろぞろと門をくぐって出てきた。

 一糸乱れず整列して進む様は非常に格好いい。

 一団が最後尾まで城門をくぐると、一気に馬を走らせ、あっという間に見えなくなってしまった。

 方向的に俺たちがさっきまでいた街、アルトーラへ向かったのだろう。

 何かあったのだろうか?

「さっきの騎士様たちはどうしたんですか?」

 順番の回ってきた検問所で聞いてみた。

「ああ、どうもアルトーラの街へ重要人物を探しに行ったらしい。詳しくは俺たちも知らないんだ」

「へー、そうなんですか」

 何度も質問されたのか、うんざりした感じで答えられた。すみません。

「ん?」

 そんなうんざり気味の衛兵さんもあら不思議。俺の身分証を見るとすぐ笑顔。

 “冒険者”という夢職業が書かれている俺の身分証。

 この世界においては無職を宣言しているボンクラ証明書である。

「おま、なんだこれっ」

「ぼ、冒険者? なんだぁ?」

「おいおい、いい年して何してんだよ!」

 他の衛兵さんたちも一緒になって笑顔になった。

 やっぱり笑顔は素晴らしいよね!

 人を笑顔に出来る俺って素晴らしい!

 くそ! 恥ずかしいわ!

 ああ、早く身分証の職業欄変更したい。

 3年固定か……長いな。


ちょっと短めでした。すみません。

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