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2章 -48- 不審者注意(俺は違うよ?)


 会話スキップついでにキャラ紹介もすっ飛ばしておいた。

 つまりホール内にいた男たちにお休み頂いたのだ。

 俺のエアブラストとメディーさんの電撃、エルシアさんの風魔法で屈強な男たちは何もできないまま全員倒れた。


 武器を構えヤル気満々、やいやい口上を述べている男たちに対し、こちらは話の終了を待たずに攻撃開始。奇しくもメディーもエルシアも同タイミングだった。たぶん同じ考えだったのだろう。

 聞いたことのあるセリフはスキップだ。

 あるものはその場で倒れ込み、ある者は痙攣し、あるものは壁にぶち当たってぐえっと鳴いていた。鳴くというより泣いていた。が、悪いやつの涙に思うところはないのである。残念!


 死人は出ていない。よしよし。


 崩れ落ちた男の内の一人が、なにやら良い感じの武器を持っていた。

「古川悠太は槍を拾った」

 テレレレッテテーン。


 自分で言ってみた。

 意匠性の凝った綺麗な槍だった。

 大きさは普通だが、なにやら良さげである。

「魔力で強化された武器のようね」

 エルシアにも分かるようで、興味深そうに見ていた。


「そうね。切断に特化するよう刀身自体の存在の強化と、切断の能力が付加されているわね」

 解説のメディー先生いわく、振りぬく瞬間に魔力を流すと風の魔術が発動して風の刃を展開、刀身が伸びたような効果を出す仕組みのようだ。

 こないだのカラドボルグのようなアブナイ武器ではないものの、通常の武器よりははるかに良いものらしい。

 見ただけでそこまで分かるのか。

 解説はメディー先生にお任せだな。


「風……」

 エルシアが興味深げに槍を見ている。

 空を駆け風を操る有翼人にとって、風の属性は相性が良いのだろう。

「いる?」

 俺は槍より剣のほうが好きなのだ。

「頂こうかしら」

「んじゃ、ほい」

 お渡ししておく。


 と言うことで拾った槍はエルシアの物となった。

「アンタねえ、それってそこの人のでしょ?」

 ため息混じりに南雲が言った。

「拾ったし」

「貰ったもの」

 古来より冒険者は人の家や敷地に入ってアイテムをゲットしたものだ。

 もっと言えば、敵を倒してドロップしたアイテムを拾わないなんてもったいない。

 全身緑の格好した耳の尖った人も良くやってたし。そういえばオカリナ吹いてみたいなぁ。


「…………はあ。もういいわよ」

 何故か顔を抑えながらため息を吐く南雲さんであった。




「で、ここってやっぱり……」

 ツッコミを諦めた南雲は周囲を見渡して言った。

「ま、アタリってことだよな」

「そうみたいね」


 この部屋の周囲は壁ではなく、柵で覆われていた。

 正確には、部屋の周りは全て檻になっていた。

 その檻の一つ一つに生き物たちが息を殺して納まっている。

 彼らはこちらを警戒しながら見ている。

 中には物陰に隠れて気配を殺しているものもいる。


「あー、この中にグルーの娘さんはいるかな?」

 とりあえず確認を取ってみる。

 しかし反応は無い。

 まあ、普通に考えていきなり乱入してきたヤツに自分がそうですと名乗り出るかというと出ないよね。

 俺なら迷う。


「…………わ、わたしです」

 しばらくの沈黙の後、返事があった。

 答えてくれて良かった。

 ガルーに似てる子を探せとかになったらしんどいものだ。


 帰ってきた声はかなり幼い声だった。

「君がグリーかな?」

「は、はい」

 返事のあったほうへ行くと、小型の檻に一人で放り込まれていた。

 不信がられて名乗り出ないのではと心配していたので、ちょっと安心した。


 グリーはガルーに似ていると言われたらそう思うところだが、ずいぶん可愛らしい女の子だった。

 うん。ガルーってちょっといかつい感じだし、ガルーの見た目を参考に探したら絶対見つからなかったな。

 人間でいうと小学校の低学年くらいの見た目だが、獣人の外見年齢も同じようなものなのかな?

 ガルーと似た茶色い毛並みの犬耳が、ちょこんと頭の上についていて、警戒しているのかピコピコ動いていて可愛らしい。これが真の犬耳少女か!おっさんの犬耳とか見ても嬉しくなかったよ!

 グリーは怖がっているのかオドオドしているのもあって小動物のようだ。

 なんとなく守ってあげたくなる子だな……。

 あれ? なんかオレがそのままつれて帰りたくなってきたぞ?


 いかんいかん。

 欲望が溢れそうに鳴る前に、さくっと鍵を壊して檻の扉を開いた。


「俺はガルーに頼まれてグリーを助けに来たんだ」

「お父さんに頼まれて?」

「そうそう。お父さんも来たがってたんだけど、すごく疲れてたから休んでもらって、俺たちだけで来たんだ」

 怪我をしてたというと心配しそうなので、疲れてたって表現にしてみた。

 それでも助けに来てくれないのは何で?とか言われると困るところだったが、上手い良い訳も思いつかずそう言った。


 しかしなんだろう、幼女を相手にこういうことを言うと、事実なのに不審者感出るの。

「………………」

 南雲も意味深な視線を送ってきていたが、事実だし俺がわざとやっているわけではないと判断してくれたのか、蹴り(突っ込み)はこなかった。


 とりあえずグリーは俺のことを信じてくれたようで、素直についてきてくれることとなった。

 それから他の檻を順番に空けていき、捕らわれていた獣人たちを檻から出していった。

「あ、ありがとうございます……」

 まだ俺たちのことを信用して良いのか迷っている様子の獣人たちだが、ひとまず檻から出られるということに感謝はしてくれた様子だ。

 捕らわれていた獣人は女性ばかりだった。しかも割りと綺麗だったり可愛い子が多い。

 やり方は許せないが、ケモミミ愛好会と名乗るだけの審美眼は持っているようだ。くそったれ。

 中には見た目の可愛い男の子なんかもいたが、こっちの世界でもそういう需要はあるのだろうか。


 というか、グリーと話している間にメディーやエルシアが鍵を開けてくれてたらスムーズだったんだけど、当然彼女たちが他人を助けるという発想は持っていないご様子である。

 暇そうに部屋の中を観察していた。


「ま、まだ奥に捕まっている獣人と強い人間がいるんです」

 助け出した獣人の一人がおずおずと進言してきた。

 その獣人も助けて欲しいということと、まだ強い人間がいるから戦いは終わってないということか。

 彼女たちからしたら、助けるなら最後まで助けて欲しいというところだろうし、檻から出ても安心はできないのだろう。

「りょーかい」

 何にせよ、もう一人捕らわれているのならそちらも助けに行かねばならない。

 それに、元々ここのヤツ等を無事に逃がすつもりはない。お灸をすえてやる。

 俺は気合を入れてさらに奥へと進んだのだった。


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