2章 -47- 命の価値は……???
「てめぇらが侵入者か!?」
「ガキと女じゃねぇか!」
「しかも上玉だぜぃ! ひっひっひ」
更に奥へ進むとちょっとした広間に出て、数人の男が待ち構えていた。
「あー、そういうテンプレはいいんで……」
さっさと“エアブラスト”を打ち込む。
ワンパターンだが、現状これが一番加減がしやすいのだ。
慣れない魔法を使って、殺してしまったらまずい。
そんな俺の横ではメディーが雷撃を放っていた。一応威力は抑えてくれているようだ。よしよし。
そして反対隣に視線を向けて……
「ちょっ!?」
エルシアが気軽に放った“ウィンドブレード”を慌てて止めに入る。
「へっ?」
俺の背後で間抜けな声を出す男。
俺は思考加速と身体強化を全力でかけ、エルシアの正面にいた男の前に回りこんだのだ。
味方であるエルシアに正面を向け、敵である男を背後にかばっている。なんだろうこの状況?
男の両サイドの壁は真横にざっくり切れていた。
男は一瞬遅れて事態を理解したのか、「ふぉぉぉっ」と変な声を出して腰をぬかした。
エルシアが本気じゃなかったのが幸いして、“ウィンドブレード”は速度が遅かった。
そのためギリギリで前に回りこむことができたのだ。
「殺しは無し!!」
「あらそうなの?」
俺の行動が心底意外だったようで、本気で驚いているエルシア。
「て、てめぇら! 何者なんだよぉ!?」
俺の背後に守られた男は、自分以外全滅していることに気付き慌てだした。
「うっさいお前」
振り返り際に“エアブラスト”をみぞおちに打ち込んで黙らせる。
「そんなゴミ、生かす価値があるのかしら?」
「ゴミじゃない! クズだけど生きてるから!」
「ゴミとクズ、何が違うのかしら……」
そこは置いといて!
勢いで言っただけだからね!
「とにかく、価値なんて関係ない! 価値なんて生きてれば変わる事だってあるだろ?」
死んでしまったら終わりなのだ。反省することも更正することもできない。
生きていれば人生良いこともあるだろう。
こうして痛い目を見れば、少しくらい改心するやつもいるだろう。
人の価値なんてものは、生き方次第ですぐ変わるのだ。
「そういうものかしら」
「そういうものなの!」
希望的意見ダケド。
エルシアは納得してはないようだが、理解はしてくれたようだ。
今後殺さないように、と念を押すと、しょうがないわねとは言ってくれた。
命の価値をどれだけ見出してくれるのか、想像できないが、殺すのは良くないというのは伝わったと思う。
まあ、この人にとって命の価値なんて……
え、どう思ってるんだろう?
「……ちなみに、エルシアにとって価値ある人って?」
「そうね……」
俺の問いに一瞬考え込んだエルシアさんだが、
「――自分以外に価値のある生き物なんて、いないわね」
だそうだ。
ダメだこりゃ。
気を取り直して建物を進む。
街の中の建物であり、奥行きはそこまで無い。
すぐに一階部分は踏破してしまった。
いくつか部屋はあったが、生活物資などの一般的なものしか置いておらず、見張りがいたりいなかったりくらいで、檻などは見つからなかった。
「定石として地下だよなぁ」
外観は3階建てだったけど、こういう裏の組織って地下に隠れてるものだろう。
『そうね。地下に人の気配があるわよ』
『空気の流れがあります。そこが入り口でしょう』
ミズキとカグラの進言もあり、俺は確信する。
特にカグラの指摘は的確で、実際に空気の流れを追っていくと、地下への入り口が隠されていた。
先ほどの広間の絨毯の下に、大きな蓋があったのだ。
蓋を開き、中に入っていく。
蓋を開けると地下へ続く階段があった。
その奥は暗くて見えなくなっており、雰囲気結構長そうだった。
あまり長いと、どこかに別の出口などもあり、逃げられることもあるのではないだろうか。
そう考えると、普通なら逃げ口の方へも人を回すべきなのだろうが、調査も何もなしに入っているので、どこから逃げられるかは分からない。
仕方ないので、安全かつスムーズに進攻し、逃げられる前に撃退するのみだ。
幸いこの世界には電話や無線、監視カメラなど、事前に連絡を取ったりこっちの様子を確認する手立てはない。魔法や魔術で念話みたいなことをされるとまずいが、今のところ1階で出会った敵はそういう事はしていなかった。
様子を確認しに出てきた敵を残らず倒していけば、情報をボスのところへ持っていくこともできないだろう。
つまり、一人残らず、倒さなければならないわけだ。
「おいおい、ここがケモミミ愛好家“獣人狩り”の根城と知っての愚行か?」
通路を進んでいくと、数人の男たちが姿を現した。
なにやらオラついているけど、愛好会の名前のせいで雰囲気台無しだ。
さっさと片付ける。
さらに進んでいくと、地下にも関わらず意外と広いホールに出た。
両サイドには牢屋のようなものが並んでいる。
その中央にはソファーがいくつか並んでおり、数人の男たちがそこでくつろいでいた。
テーブルの上にはつまみや酒が置いてある。
「あ? 侵入者か?」
俺たちに気付いた途端、慌てることも混乱することも無く、男とたちは戦闘態勢に切り替わった。
戦闘慣れした集団なのか、武器を手にした今は先ほどまでくつろいでいたとは思えないほど、気の緩みが無い。
ここまでのザコみたいな隙はなく、警戒しながらにじり寄ってくる。
「おいおい。ここがケモミミ愛好会“獣人狩り”の根城と知っての――」
「あ、それさっき聞いたんで結構です」
「ぐふっ!?」
パターンが無い様子なので会話をスキップしてみた。
既読のセリフはスキップするに限るよね!
なんとか更新……
相変わらず改行が変な気が。すみません。