2章 -45- グレゴリアとバレル
ちょっと短めです
「へっへっへ……」
とある建物の一室で、男はくつろぎながらソファーに身を預け、酒をあおっていた。
そこそこ値の張る酒だが、水のごとく流し込む。
贅沢な飲み方をしているものの酔ったりはしていない。
「今回の仕事も上出来だったな」
男の名はグレゴリア・アローバ。
“ケモミミ愛好会”に属する狩猟部隊の一団、“アグドーラ”の団長である。
身長ほどもありそうな大剣を武器とし、圧倒的な膂力で敵を武器ごと両断する戦法とも言えない戦法を主としている。生まれ持った屈強な肉体に加え、魔術による身体強化を重ねがけし、本来身体能力の勝る獣人すらも圧倒する。
その戦闘能力を買われ、この愛好会の中での地位を一足飛びに駆け上がってきた男だ。
戦闘能力だけでなく酒も強いようで、度数の強い酒を飲んで平然としている。
「くっくっく。ああ、そうだな。最初はどうかと思ったが、獣人相手も悪くねえ」
向かいのソファに腰掛けた男も、同様にくつろぎながら酒を口につける。
こちらはさほど酒に強くないのか、少しずつ味わうように飲んでいた。
グレゴリア同様この男も機嫌が良さそうだ。
“アグドーラ”の副団長、バレル・ローレルである。
こちらも戦闘能力に長け、その力でグレゴリアの後を追って今の地位についている。
グレゴリアほどではないが、それでも恵まれた体格に、グレゴリアから教わった身体強化を合わせて、非常に戦闘に特化した存在だ。その主な武器は戦鎚で、非常に重量のある戦鎚を軽々と振り回し、敵の楯ごと叩き割る。
「この調子で行けば、本部に引き抜かれるのももうじきだな」
「ああ。適当に獣人を殺しておけば出世できるなんて、良い組織だぜ」
「まったくだ」
グレゴリアとバレルにとって、獣人狩りは単なる仕事である。
上層部や客たちは見目の良い獣人を飼うことに楽しみを感じているようだが、この二人は違った。
グレゴリアたちが楽しみを感じているのは、単純な暴力だ。そしてそれによって生まれる自由。
最初はスラムの中で生き抜くために手に入れた力だったが、今では自身の自由を手に入れるために活躍してくれている。
“狩り”を繰り返すことでその戦闘センスをさらに磨きあげ、圧倒的な力を手に入れていた。
本来人間より優れた身体能力をもつ獣人たちは、良いトレーニング相手だと考えている。
今では圧倒してしまうことばかりで物足りないくらいだ。
王国が誇る騎士など取るに足らず、王国最強と名高い騎士団長ともタイマンを張れると考えていた。
「しかしそろそろ、大きな仕事が欲しいもんだな」
獣人を狩るばかりでは特別目立つ事はできない。
圧倒的な戦力で、こちらに被害を出さずに獲物を狩る。これでも十分評価をされてはいるのだが、より上の地位に行くためには特別感が足りない。
バレルは上機嫌のまま残念そうにため息をついた。
「そうだな。手ごたえのあるヤツと戦いたいもんだ」
グレゴリアも酒をあおりながらため息をついたのだった。
短めですみませんが、きりが良かったので。
またぼちぼち更新しますので、今後とも宜しくお願い致します。