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2章 -40- 死との対面

すみません、グロくなります。

ご注意ください。

 南雲を俺が背負い、俺の左右にメディーとエルシアさんが並ぶ形で森の上を飛んでいく。


「それで、私たちはどこへ向かっているのかしら?」

 今更だがエルシアさんが聞いてきた。

「あ、言ってなかったっけ?」

 戦闘の前に言った気がしないでもないけど、聞き流されていたんだろう。

「王都だよ」

 この間とり逃したケイトでも探しながら、のんびり観光がしたい。

「そうよ。ユータの玉座を用意しに行くの」

 いきなりメディーさんが何か言い出した。

「あら、それは良いわね」

 それに対してさも当然のように受け取るエルシア。

「良くないよ! 玉座なんていらねえよ!」

 ほんとこの人たちは何でこうなのか。


 メディーは元から発想が危ないけど、エルシアさんも同系統かもしれない。

 我がチームの火薬庫が増えてしまったような気がするぜ。

 これは危険物取扱資格とか必要な気がするレベルだと思う。

 ほっとくと本気で王座を持って来かねない。

「本気でいらないからな? 平和的にいくんだよ!?」

 念を押して言っておいた。



 それからしばらく空の旅を楽しんだ。

 新たに加わったエルシアさんだが、飛行には長けているので安心だ。

 今まで、俺もメディーも魔力量が多いので、飛行魔法程度での消費は気にせず休憩なしで相当な距離を進んでいた。

 エルシアさんの魔力量はメディーさんには遠く及ばないものの、飛行に関しては元々の種族特性か、非常に効率の良い魔力消費で飛ぶことができる。

 なので、下手をするとこのメンバーでは最長の飛行可能距離を有しているかもしれない。

 結果的に、エルシアがメンバーに加わってからも移動速度は変わらなかった。


「もうすぐ森が抜けるわね」

 メディーの言葉通り、森の木々が薄くなってきており、視界の先のほうには、森の切れ目が見えていた。

 その先には木々の無い草原が広がっている。

 森を抜け草原の先には王都があるのだろう。

 目的地はもうすぐだ。


「あれ?」

 森を抜けた先のところに、何かがあった。

「なんだ?」

 上空からだったのであまりよく見えなかったが、馬車のようだった。

 しかし、一見すると馬はついていない。

 馬車の周囲には何かが落ちている。

 なにも動いてもいないようで、変な様子だ。


「獣人ね」

 獣人!?

 エルシアさんには見えているらしい。

 さすがに高空を飛ぶ種族だけあって、視力も良いそうだ。

 ヴィーほどではないだろうけど、かなりの高さから、地上の様子をきちんと見極めているようだ。


「動けないようね」

 それはいけない。助けに行ってみようか。

 獣人も見てみたいし、助けてあげれば好感度もUP。仲良くなれるかも知れない!

 そしたら可愛い獣人とかモフれたりしたりして!!

 モフれたりしたりしちゃったりして!!!!!


 俺はそんな気軽な気持ちで高度を下げたのだった。




 地上へ降り立って、俺は完全に後悔していた。

「うそ、だろ……」

 そこにいたのは確かに獣人だった。

 頭部に獣耳があったり、一部毛深かったり、尻尾があったり、人間っぽい体格に、人間にはないパーツがたくさん着いている。

 それだけだったら非常に喜んだ。

 そこには、彼らが生きていれば見えるはずのないものが見えてしまっていた。

 大きな刃物でぶった切られたのか、はらわたを垂らしている者。

 獣耳の間から脳をはみ出させた者。

 すねから下が無くなり、先の折れた白い骨がむき出しになっている者。

 数人分のそれは、ズタボロだった。


「うっ……」

 意思とは無関係にこみ上げてくる胃液を、抑え切れなかった。

「おえ…………」

 その場でひざをつき、今朝方食べたものを全部吐き出してしまった。

「うっ…………」

 俺の後ろで、南雲もうめいている。

 それでも南雲はかろうじて吐くのは耐えているようだった。

「あら、死体は初めてだったのかしら」

 平然とメディーが言う。

「意外ね。あれだけの強さで、死者を経験していないなんて」

 エルシアさんも平然としたものだった。


 こちらの世界では当然のようにある死。

 元の世界の、それも平和な日本ではあまり身近にない死。

 俺たちにとって今まで間近に無かったそれは、もっとも衝撃的な絵で俺の前に現れた。

 日本で人の死体と対面したとしても遺体は綺麗な場合が多い。病死とか事故死でもよほどでなければここまでにはならないと思う。酷い場合はテレビでも放送なんかされないものだ。

 実際俺が経験していたのは親戚の葬式で棺の中を覗いた時くらい。

 今目の前にある真っ赤な景色とは程遠い。

 何より、その死に顔に浮かぶ絶望や苦しみの表情が俺の心を締め上げる。


「ぅおぇ…………」

 もう出すものは出し切ったのだが、それでも胃が痙攣を繰り返し、のどが絞めあがる。

 なんだこれ。

 本当に生きてたのか?

 それがこんなにも酷いことになるのか?

 真っ赤な視界が、涙でゆがみ始めた。

 前までまともに見えなくなる。

 こんなにも、鮮烈で強烈なものなのか。

 あまりの光景に、俺の意識は朦朧とし始めていた。

 しかし事態は待ってくれない。


「………………誰、か……いる……のか」


こまめに読んで頂いていた方はお待たせして申し訳有りません。

その上、思ったよりグロくなってしまってすみません。

しかし、悠太たちにとって重要な経験だと思っています。何卒ご容赦ください。

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