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2章 -39- エルシアさんと旅立ち

 夕食会の話の中で、この天樹でしばらく泊めてもらうこととなった。

 せっかくなので有翼人たちの生活も見ていきたいと思ったのだ。

 数日を過ごす宿は、エルシアさんの屋敷の部屋を借してもらえることとなった。


 夕食会が終わるころには日が暮れていたので、観光などはせずそのまま寝ることにした。

 この世界の風呂事情はどこも同じらしく、浴室には水瓶だけが置いてあった。やはり入浴という考えは無く、水浴びで身を清めるようだ。ただその大きな水瓶には水がなみなみと入っていて、エルフの村には無かった贅沢だ。自分で汲みにいく必要はなさそうだ。

 俺は水浴びを終え寝室に向かった。


 部屋は一人一室与えられた。

 エルザ婆さんの計らいだ。

 同室でも良かったのだが、仕方ない。

 人の家でお楽しみする訳にもいかないので、仕方ない。

 非常に残念なだけで。

 仕方ないのだ。


 そんな事を思いながら、することも無いので早速ベッドに入る。

「あれ、もう寝る気なの?」

 ノックも無く南雲が入ってきた。

「あら。そんなに疲れるほど魔力は使ってないでしょう?」

 続けてメディーも入ってきた。

 確かに魔力はそこまで消費していない。


 けどね!?

 どこかの誰かさんが喧嘩をふっかけたり、怪しげな呪いなんて発動するから俺の心労は結構なものだったんですけど!?

 ホント、そんな危ないことするの誰だろなー!?


「てか、え? 一緒に寝るの?」

 南雲たちは迷うことなく俺のベッドへ近づいてきた。

「あんたねぇ、ここは敵のど真ん中なのよ?」

 確かに。そうでした。


 一応話はまとまったものの、有翼人の全てが仲間になったわけではない。

 エルシアさんだって、素直に仲間になったとは言いがたいのだ。

 同行すると言っただけで、いつ寝首をかかれるかわからない。


「アンタは平気かもしれないけど、アタシは一人では寝れないわよ」

 そう言いながら、遠慮なくベッドに入ってくる南雲。

「ミキだけユータと寝るのはズルイでしょう?」

 メディーも結局入ってきた。

 宿屋のダブルベッドと違い、ここのベッドはシングルサイズだ。

 三人入るとぎゅうぎゅうで、必然身体の密着が増えるのである。

 我慢ができるわけが無いのである。

 だって、男の子なんだもん!




「……貴方たち、いつもあんなことをしているの?」

 朝、飽きれたように言われてしまった。

 部屋を出て、食堂へ向かう途中のことだった。

 そういうエルシアさんの頬は少し赤くなっている。

 あんなこと、とは昨晩のことか!?

 人の家なので控えめに……と一回ずつしかしてなかったんだけど……見てたの!?


 実は、有翼人は空を自由に飛ぶために、視覚とは別に空間認知能力があるらしい。

 最初に俺が懸念していたように、やはり別の認識方法があったのだ。

 ただ、それでも認識できない速度で動いたので対応されなかっただけで。


 戦闘時には警戒してても、夜はそこまで警戒していなかった。

 ただ、壁の向こう側まで認識できる感覚はエルシアさんとエルザ婆さんくらいしか持っていないのだとか。

 と、いうことは。

 逆に言えばエルザ婆さんにも認識されているのか。

 ちょっと顔を合わせづらいな。

 と思ったら、エルザ婆さんは町外れの仮住まいに昨晩急遽逃げ帰ったそうだ。

 うむ。バレてはいたが、朝食で顔を合わすことはなさそうだ。

 よかったよかった。


「あなたも入る? ユータなら貴女も受け入れてくれるわよ」

 ほっとしていると、メディーはそんなことを言い出した。

 いきなり何言ってるのこの人!?

 確かに受け入れることはやぶさかではないけども!

 やぶさかではないけども!


「いいえ、結構よ」

 ですよね!

 ちょっとこちらへ向かってくる視線がちょっと痛いんですが!?

「そう、残念ね。でも……………………。」

 メディーはエルシアさんの横を通り過ぎる際、何かを小言で伝えていた。

「………………」

 それを聞いたエルシアさんは、少しほほを染めてこちらを無言で見る。

 なにその反応っ!?

 メディーさん、いったい何言ったですか!?



 言うだけ言ったメディーさんは、さっさと一人で食堂へ行ってしまった。

 非常に気になったのだが、

「なんでもないわ」

 とエルシアさんが言うので、それ以上聞こうとするのも変かと思い、断念したのだった。


 朝食を終えた俺たちは有翼人の街に繰り出した。

 有翼人の街はそれなりににぎわってはいたが、エルフの村同様、あまり文化や技術と言った点で面白いものは少なかった。エルフ同様質素な生活が基本のようだ。


 空にあった島で生活していたころはもう少しいろいろあったそうだ。

 しかし地上に降ちてからは以前の文化や技術を維持できず、生き残った者たちで静かに暮らしていたそうだ。

 まあ、静かにと言ってもこの数年でエルシアさんが支配を広げたりいろいろしてはいたようだが。

 服や生活用品、武器などは心引かれるものもなく、正直言ってファンタジーが足りない……。

「あんた、夢見すぎじゃない……?」

 南雲に頂いた冷たい言葉は心に刺さったものだ。


 数日の生活の後、ついに旅立ちの朝を迎えた。

 朝食を終え、天樹アーガイアを立つこととなった。

 一応お見送りにはエルザ婆さんも来たのだが、微妙な表情をされたものの何も言われなかった。

 結局初日以外も毎晩致してしまったのだ。

 うん。気まずい。



 当初の宣言どおり、エルシアさんは俺たちに同行することとなった。

 有翼人のリーダーは代理でエルザ婆さんがすることとなった。

 他にも強い人がいるらしいので、その人が受け継ぐことになるらしい。

 それでもクイーンと呼ばれたエルシアさんの立場はそのままだそうだ。

 エルシアさんは非常にドライな挨拶だけを交わして、俺たちとともに天樹を旅立つのだった。


しばらく更新が遅めですみません。

ぼちぼち更新して参ります。

気長に宜しくお願い致します。

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[一言] エルシアさんの貞操が奪われそう
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