魔物を売って一休み
モーネ―――ユエ国、四大都市の1つで南寄りに位置する温暖な街。南側に接するヴァルテン国との交易を担う。また温暖な気候を生かして果物の栽培が盛んな地域。特産品はバナナの味でレモンに似たクーという果物。
なお入市税は10ムーンかかる。
鑑定って街も出来るのか。頭の中の文字を追いかけて思う。
とりあえず誰一人欠けることも怪我することもなく街まで辿り着けた。チュートリアルで誰かが死ぬのは勘弁願いたい、心理的に。
「そうだ、入市税は立て替えしておくぞ。魔物の換金後、返してくれりゃいい」
「なにからなにまで申し訳ございません」
ルークさんとリリーさんが顔を見合わせると不思議そうに首を傾げた。
「さっきからあいさんは謝ってばっかりだけど謝って貰うことなんてないよぉ?」
「お礼を言われるならまだわかるが…」
その言葉に今度は現代っ子3人が顔を見合わせる。なんでも謝り癖があるのだ、日本人。
「確かに…そうですね。改めて、皆様ありがとうございます」
「「ありがとうございます!」」
「おぅ!」
「ふふ、こちらこそ。皆が居なかったらもっと戻るまでに時間が掛かっただろうしねぇ」
入市税を立て替えてもらい、ルークさんたちはカードを提示している。
「それは?」
「あぁ冒険者のギルドカードだ。他にも商人のギルドがあるぞ。あとはギルド以外の身分証明は教会だな。ギルドカードがあれば入市税は不要だ」
なるほど。この世界にもあるんだな、ギルド。何処かに登録する必要がありそうだ。
◇◇◇
魔物の買い取りのため冒険者のギルドへ向かう。街中は至るところに露店や常設店舗があり貿易の拠点という言葉通りだ。
「うわぁ!美味しそう!」
「鴫谷さんはぐれないようにね」
「はーい!あ、見てくださいあのお店!可愛い雑貨がありますよ!!」
「はいはい後でね」
後輩ちゃんは楽しそうにキョロキョロする。往来はそこまで混雑していないが迷子になるのは困るのだ。
「おー、面白い野菜?果物?売ってるな。なぁ後で見に来てもいいか?」
「お前もか」
同期が目をキラキラさせながら八百屋のような店をロックオンしている。
係長は……呆然としながら着いてきていた。良かった。
「一先ず換金だな」
街の中心にギルドはあった。ちなみに何故か文字が読めるのは異世界あるあるだ、なんて思ったが。
真っ白な扉を開けて買い取り窓口のもとへ向かう。窓口には兎耳の女性と、ちょいハゲな厳つい男性が対応していた。
「あんちゃん達か。街の外に行ってきたのか?」
「あぁ。やっぱり街道は魔物だらけだ。おかげで大漁だけどな」
「交易できねーってのは痛いなぁ。ま、とりあえず買い取りだな?大漁ってことは数がありそうだな。倉庫行くか」
「頼むわ」
気安くルークさんと厳つい男性がやり取りしている。
「ほんじゃ出してくれ」
「はーい。あいさんも」
「わかりました」
2人で溜まった魔物をポイポイと出していく。魔物の山が3つ出来上がった。それをポカンと見上げる厳つい男性。
「こいつぁー………大漁に狩ってきたな」
「これでも街道沿いに一時間圏内だ。異常だろ?」
「王宮から移動にはBランク以上の冒険者に限るとしたのは、強ち間違いじゃねーんだな。早く解除になればいいが」
「とりあえず換金よろしく。前借りで少し貰えないか?」
「ほぅ。良いぞ、じゃあ一山だけ見てやる」
男性が魔物を仕分けている間にリリーさんが教えてくれた。
「魔物はね、基本単価が決まってるんだ。そこから状態を加味して上乗せがあったりするよ。今回前借りは基本単価分を貰うことになるかなぁ」
ゲームみたいだな。あれも売るときの単価は何処でも一律だった。買うのは街によって違ったが。
「ちなみにギルド加入者は手数料が無料だよ」
なるほど。魔物で稼ごうと思うとギルドの加入は必須か。
「ほら、一山分の基本単価2,000ムーンだ」
「………結構狩ったんだな」
ルークさんがしみじみ言うと、
「んじゃ半額の、入市税を引いた960ムーン返すぜ」
「ありがとうございます」
皮袋に入った貨幣の重み。キャッシュレスの現代じゃなかなか感じないものだな。
「残りは明日までにやっておくぞ」
「「お願いします」」
皆で仲良く頭を下げると、男性が照れたように笑っていた。
「次はどうするんだ?」
ギルドの登録もしたいところだけど圧倒的に情報が少ない。出来ればルークさん達にもう少し詳しく話が聞きたいところだ。
「はい!先輩!お腹が空きました!」
「だいぶ日も陰ってきたしな。そろそろ一服したい」
自由だね、君たち。
「ご飯食べれる場所を教えて頂ければと…」
「ハハッ、宿屋の一階が食堂だからそこ行くか」
本当に、お手数をお掛けします。
ようやく街に入りました。長かった…。




