まだまだ魔物に襲われる
ホールドベアを倒してくれたのは冒険者のパーティーのようだ。
「おい、大丈夫だったか?」
「ルーク、まだ周りに他の魔物がいるぞ」
「なんでこんな所にまで魔物がいるんだろーね」
太剣を持ったお兄さんに、短剣を構えるお兄さん、ローブを被った性別不明の3人組は私達の周りで油断なく武器を携えている。
ローブさんの言葉通り、私の視界にも赤い点が私達を囲むように集まってきている。
「そこのおねーさん、悪いけど魔法で援護してくれる?」
ローブさんがニコッと笑う。あんな魔法で宜しければ、という感じだが。
「来るぞ!!」
それにしても守りながら戦うのって難しいからな。先程ステータスで見た絶対防御とやらの説明文を読んでみる。便利なもので、ステータスの詳細も見れるらしい。
「んー、【シールド】」
キラキラした光に全員が包まれる。防御力をあげるだけでなく、物理魔法の攻撃を防ぐ付帯効果つき。まさにチート。便利なものである。
「おねーさん何したの!?」
「皆さんの防御力をあげました。あ、皆さん全員にです。これで心置きなく戦えますから。【風よ切り裂け】」
イメージ鎌鼬。威力は想像を越えるけどこれだけの数には丁度良い。
「かー!負けてられねーな。【ホワイトスパイダー】」
白閃が一文字に群れを切り裂く。ウサギっぽい魔物―――ルビーラビットと言うらしい―――が瞬殺される。
「【ホーセズネック】」
投げたお兄さんの短剣は螺旋を描き、襲いかかろうとしてきたサイっぽい魔物―――ユニサラス―――を次々に仕留める。
「いくよー、【テキーラサンライズ】」
太陽のような眩い光が放射線状に魔物を貫く。
数十はいただろう魔物の群れは撃退された。私の視界にも映らないから今のところ大丈夫だろう。
「助けていただきありがとうございました」
「僕らもついでだったし」
深々とお礼をするとローブさんが微笑んだ。
「それにしても見慣れない服装だな。どこから来たんだ?」
剣を仕舞った冒険者さんの質問。予想通りではあるが、なんて答えよう、と思案する間もなく。
「私達別の世界から来ちゃったみたいなんです!」
あー、新人ちゃん。気持ちはわかるけど初対面の人にそういう情報を軽々しく言っちゃダメだよ。
「別の世界?」
「どういうこと?」
同僚と目配せをする。
「俺達どうも迷ったみたいで、此処がどこかよくわからないんです。皆さんはどこから来たんですか?」
流石、元営業。トーク力抜群だな。
「俺達は冒険者で此処から少し先の街で依頼を受けて来たんだ」
「へぇ、街があるんですね」
「で、別の世界ってことは異世界ってやつか?」
「まさか勇者や聖女だったりして?」
ふむ、誤魔化せないか。話して問題ないかどうか、すみません勝手にサラッと鑑定させてもらいます。
名前:ルーク
レベル:30
種族:人間
称号:なし
職業:冒険者
名前:キール
レベル:28
種族:人間
称号:なし
職業:冒険者 元暗殺者
名前:リリー
レベル:25
種族:エルフ
称号:なし
職業:冒険者 治癒士
んん?1人ちょっと謎の経歴が見えたけど気のせいかな。気のせいだ。
まあこの人達なら話しても問題ないだろう。
「実は異世界から召喚されたみたいで」
「「えーーーー!?」」
ってなんで係長も一緒に驚いてるんだ。