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出発前の準備を

朝起きて食堂へ向かう。部屋割りは単純に男女で分けた。


「で、なにしてるんですか…?」

「おはよう。朝御飯ならそっちだ。女将さん、野菜はこんな感じで良いっすか?」

「それでいいよ。助かるわぁ。じゃあスープ作っておいておくれ」


何故か同期が厨房にいる。しかも包丁を手に野菜を切っている。何してるんだ。

どうやら話を聞くと、食堂は女将さんと従業員数名でまわしているらしい。しかし料理はほとんどを女将さんが作っているらしく、朝御飯を作って配膳中にランチの用意、終わったら夜の準備とそれはもう忙しいようで。見かねた料理好きの同期が厨房を手伝うことに。


「ほんと、このままうちで働いて欲しいくらいだよ」

「ははっ、そう言って貰えると嬉しいっすわ」


料理スキルなんてものを持っているばっかりに彼の手際は素晴らしく、答えながらも野菜を刻み、スープを作る。その手元をよく見ると日本でお馴染みのコンソメスープの素。躊躇いなくそれを鍋へ投下、そのあと塩コショウで味を整えていく。


「えっ、それどうしたの?」

「それ?」

コンソメ(それ)

「あぁこれは「私が作りました!!」」


食堂に賑やかな声が加わる。後輩ちゃんが元気よく手を挙げた。


「……うん、わかった。また後で聞くね。あとそれはアイテムボックスに没収です」

「なんで!?」

「まぁそうだよなぁ」


錬金スキルで作ったであろうスープの素は女将さんにバレないうちに没収させてもらった。

なお同期が担当したスープは好評だったようで女将さんが困惑していた。そりゃそうだ。


◇ ◇ ◇


朝から疲れる出来事だったが気を取り直し、街道へ出発。係長は起きてこなかったが放置。昨日やるべきことは伝えてあるので大丈夫だろう。


「とりあえずギルドへ登録して、そっから出発だねぇ」


リリーさんが音頭をとる。ギルドへ向かう道すがら後輩ちゃんにどうやったのかこそっと聞くと。


「昨日のご飯も美味しかったんですけど、やっぱり日本のご飯には代えられないじゃないですかぁ。朝起きて食堂に行く途中で竜崎さんに会ったらその点で意気投合して、私のスキルで出来ないかって試行錯誤したら出来ました」

「…材料は?」

「食堂の隅に置いてあった野菜くずと、肉の骨でエイっと」

「すごいわね…」


先程没収したやつを鑑定したら【某食品会社のコンソメスープの素と同等品】と出ていた。足りない材料はどうやら補填されたようだ。

日本食が美味しいのは間違いないが、そんなところで意気投合しなくてもいい。


「えへへー、誉められちゃいました」

「じゃあ次も使っていいよな?」

「竜崎さんが料理する時だけね。あと女将さんには故郷の調味料とかなんとか誤魔化しておいて」

「「はーい!」」


きっとまた同じように日本食品を生み出すんだろうな、と遠い目になった私だった。


◇ ◇ ◇


昨日預けた魔物の換金分を受け取る。それを折半してルークさんと分け、更に冒険者登録をすることにした。


「まず冒険者ギルドに登録すると、入市税がかからなくなる。ギルドカードが身分証明になるからな。その代わり何か罪を犯したりすればカードは剥奪される。

登録には名前くらいでいいぞ。あとランクがあって一番上がS、A、B、Cと続いて一番下がDだ。最初はDランクから始まる。ポイントを貯めて上のランクを目指すのが冒険者だ。上のランクになれば受けられる依頼も多くなるからな」


窓口で説明してくれるルークさん。昨日聞く予定だった話の一つだ。昨日?飲み会で終わりましたよ。


「皆さん登録させていただきます」


昨日はあまり気にも止めなかったが窓口のお姉さんは可愛らしい兎耳の方だった。目の保養だ。

ピョコピョコ動く獣耳を眺めていると後ろに気配を感じた。


「…なにか?」

「珍しいのか?」


キールさんの声だ。あの出会い時以来の声だ。


「ええ、とても可愛らしくて素敵だと思います」

「そうか」


それだけ言うとルークさんのほうへ消えてしまった。なんだったのか。

無事に登録が済み、各自でカードを持つ。


「それじゃあ出発!」

「と、そう言えば皆さん依頼だと仰っていましたがDランクの私達が参加しても大丈夫なのでしょうか?」

「確かに!」


リリーさんが今気付いたと目を丸くする。


「あー、この依頼は大丈夫だろう。それにアンタ達はランクより強いだろうし」

「んじゃリーダールークの許可も貰ったし、改めて出発しんこー!」


何故か皆でえいえいおー、と掛け声をする。ギルド内の温かな視線を感じたのは言うまでもない。

準備のはずが、同期と後輩ちゃんが自由人。

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