第六話 魔族統一Ⅳ
僕はフラウロスの当主と向き合っていた。
僕たち連合軍から見れば、この戦争のラスボス的存在になるのだろう。
「我が当主フラウロスだ!」
フラウロスの名は代々当主となったものが継ぐことになっている。
人間で言えば35~40歳ぐらいの見た目であろうか、鎧の下からでも分かるがっしりと鍛え上げられた肉体に、なにより目を引くのが燃え上がるような紅の髪に僕は目を奪われた。
「ふむ、あまり時間があるわけではないが、少しばかり語らうぐらいの時間はあるだろう?
貴殿もすぐにでも殺し合いを望んではおるわけでもあるまい?」
なるほど、流石現状最大の戦力を束ねる当主だ。
ただ、座して話しかけているだけなのに、かなりのプレッシャーを感じる。
「貴殿がルシフェルか?」
「いえ、違います。」
フラウロス殿の質問に僕は簡潔に答える。
「でわ、名を尋ねてもよろしいか?」
フラウロス殿が真っ直ぐ僕の目を見ながら名を尋ねてきた。
「お初にお目に掛かりますフラウロス殿、連合軍のリュウトと申します。」
僕もフラウロス殿の目を見て答えた。
「良い目だ、纏っている魔力もかなりのものだ、貴殿の様なものが配下にいるのなら魔族統一の夢もみよう」
「いえいえ、ルシフェルなら俺が居なくても、魔族統一を成し遂げますよ」
僕がフラウロス殿の言葉を否定する。
「ほう・・・」
フラウロスが面白そうに僕の言葉に耳を傾ける。
「あいつは、頭が良いのに時々人が考え付かないようなことを簡単に言葉にするんですよ。更にそれを実現できるから余計にたちが悪い、僕が過去にどれだけ振り回されてきたことか」
僕はルシフェルの不満を並び立てた。
誰かに、あの天才バカに対する不満を聞いて欲しかったのかもしれない。
「でわ、なぜ貴殿はルシフェルに力を貸す」
ルシフェルの不満を話し続ける僕にフラウロス殿が不思議そうに言葉を投げかける。
確かに今の言葉だけを聞いていれば誰でも不思議に感じるであろう。
でも、僕からすれば当たり前の答えを返す。
「??友達だからですよ」
「フ、フハハハハハ・・・・!」
僕の答えにフラウロス殿が大笑いをした。
失礼な人だ、人が聞かれたことを答えただけなのに、それを笑い飛ばすなんて。
そんなことを考えていると、僕も不満が顔に出ていたのか
「いや、笑ってすまなかった。貴殿の答えが余りに予想外であった為」
フラウロス殿が謝罪する。
「しかし、どんな言葉よりも納得できる答えでもあった!」
そう言ってフラウロスが立ち上がった。
「良き時間であった。礼を言おうリュウトよ。」
そう言って剣を抜く。
「こちらこそ、あいつの愚痴を聞いてくれる人なんて滅多にいないもので…」
僕は無駄だと分かっていても聞かずにはいられなかった。
「最後にフラウロス殿、降伏しては頂けませんか?」
先ほど会ったばかりだが、僕はこの人ともっと話をしてみたいと感じている。
これだけの配下を従えてる人だ、人を引き付けてやまない何かを持っているのだろう。
「できぬ相談だな」
フラウロス殿が首を振りながら答える。
「おそらく、この膠着した戦況もいずれは数に勝る連合の方に傾きます」
「だろうな」
そう答えるフラウロス殿に僕は始めて苛立ちを感じた。
「戦い続ければそれだけ犠牲がでるのですよ!貴方は自分を慕って戦っている人たちに無駄に命を捨てろというのですか!?」
「……私を慕って戦っているからこそ、私が最初にそれを投げ出す訳にはいかんのだ」
フラウロス殿が静かに答えた。
ああ、この人は分かっているのだ、新しい時代に自分が生きていてはいけないと言うことを…。
僕はフラウロス様の答えを聞き、ゆっくりと構えをとる。
「すまんな…、それでは死合おうか!!」
まったくの処女作になります。
誤字脱字、おかしい言い回し等あると思いますが温かく見守って頂ければ幸いです。
よろしくお願いいたします。