第三十六話 世話焼き魔獣と甘えん坊の神獣ⅩⅣ
長い章もようやく終わりが見えてきました。
「バッカじゃないの!」
マナリスの声が響きわたった。
僕たち男二人はポカンとした表情を浮かべた。
僕は我にかえり声を出す。
「あの〜マナリスさん。」
「バカだからバカって言ったのよ。」
マナリスは腰に手を当てて、男の前に立つ。さっきまで、柱に隠れていたヤツとは思えない態度だ。
「いや、突然どうしたの?」
「リュウトは黙ってて!」
「はい‼︎」
マナリスの迫力に僕は姿勢を正して返事をしてしまった。
「さっきから聞いてれば価値がないだの、止めをさせだの、情け無い事しか考えられないの!」
「子供に何が分かる!」
男が苛立ちを隠せない様に声を出す。
「わからない!けど、リュウトはあなたは違って前を向いて生きてる!」
「‼︎」
マナリスの言葉に僕は不覚にも涙が出そうになった。あの子の両親を幸せな生活を奪ったのは紛れもなく僕だ。マナリスが本当に僕を許してくれる日など来ないかもしれない。それでも、彼女達の幸せの為に残りの人生を捧げると誓ったんだ。許しを見返りを求めている訳じゃない、でもマナリスなりに僕を見ていてくれた事が嬉しかった。
「リュウトもあなたも沢山の命を奪ってきたのかも知れない。でも、その後に誰かの為に生きていけないなんて決まりはないでしょ!」
「彼は大義の為に戦ってきた…私は」
男が自分と僕とは違うと言いたかったのだろう。
「知らないわよ!私子供だもの。」
「なっ」
男は驚きの表情を浮かべる。
「私だって生きる為なら、誰かを殺すかも知れないし、殺した相手やその人を大切に思っている人を納得させる言い訳なんて思いつかないわよ。」
男も僕も黙ったままマナリスの言葉に耳を傾ける。
「ごめんなさいって思うだろうし、後悔だってすると思う…。」
マナリスが喋りながら表情を曇らせ俯いていく。
彼女なりに想像しているのだろう。
「でも!」
マナリスはキッと顔を上げて、男を見つめながら喋り続けた。
「でも!私は自分が生きる為に殺した命の分は、精一杯生きなきゃ駄目だと思うから!」
僕と男は黙ってマナリスを見つめながら彼女の言葉を聞いていた。
二人に見つめられて恥ずかしくなったのか、自分の熱弁に恥ずかしくなったのか、彼女は僕の背中に隠れた。
僕はそんな彼女の頭をポンポンと優しく二回叩いた。彼女の言葉は経験の無い子供の言葉だろう。だからこそ飾ることのない言葉だ。
「くっくっく、あーはっは。」
男が声を上げて笑いだす。
「私でも新しい道を探せると思いますか?」
男はマナリスを見つめて尋ねる。
「知らないわよ。」
マナリスさんや正直過ぎるぞと、思っているとマナリス言葉を続けた。
「でも、探さないと見つからないと思う。」
「僕も最近ようやく見つけたところだよ。」
マナリスの言葉に僕も付け足した。
「そうですか、お嬢さん名前をお聞きしても宜しいですか?」
男はマナリスの目を見て尋ねる。
「マナリス」
マナリスも男の目見て応えた。
「マナリス嬢、私に名前をくれませんか?」
「えっ?」
「私はすぐに生き方を変えるほど、強くはありません。新しい名前を頂き違う生き方を探したいと思います。」
「私でいいの?」
マナリスが戸惑いながら僕を見てきた。
僕はそんなマナリスに頷く。
「それなら…」
彼女は少し悩みながら、ヒントを探すように周りを見渡し、あるモノに視線が止まった。
「ダガー…それがあなたの新しい名前よ。」
「ダガーですか…ありがとうございます。」
マナリスよ、彼の投げたナイフを見てダガーとは安直過ぎないか。
「フェンリルは一番奥の領主の部屋です。」
ダガーがフェンリルの居場所を教えてくれた。
「立てるか?」
僕がダガーに声を掛ける。
「暫くは難しいですね。新しい名前も貰った事ですから、ゆっくり休んでから歩き出しますよ。」
ダガーは憑きモノが落ちたように、穏やかに答えた。
「よし、マナリス行くぞ。」
「うん、早く助けてあげなきゃ!なんだか凄く時間がかかった気がするわ。」
僕らは広間から奥の部屋を目指す。
一番奥の少し立派なドアの前に僕とマナリスは立っていた。
僕はドアをノックする。
マナリスは意外そうな顔で僕を見てきた。
お嬢さん僕は紳士だよ、いきなりドアを開けるよな失礼をするとでも思ったのかな。
部屋からノックに対して応えが返ってきた。
「さっさと入ってこい!侵入者の首は持ってきただろうな!」
「早く入ってこいだって。」
マナリスが僕を見る。
それがご希望なら応えなくてはいけないね。
僕は拳を振り上げる。
ドゴォォォォオン
ドアが吹き飛ぶ。
「失礼致します、領主様…。ようやく会えたなぁ!クソ野郎‼︎」
これからも多くの人に読んで頂ける様に頑張って書いて参ります。
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