第三話 魔族統一Ⅰ
話は数年前に遡る。
この日、ある魔族の若者を中心として魔族統一がなされようとしていた。
そう、その若者こそ、この僕である!
…はずもない。
僕の幼馴染といってよいのか、子供の頃からの親友である。
名をルシフェル。
長い銀髪が特徴で、瞳も血のように赤い瞳が特徴的であり、
同姓の僕から見ても美しいと思えるほどの容姿だ。
おまけに、知力・魔力ともに最強クラスって天はこいつに幾つ才能を与えるつもりだと
本気で神がいるなら聞いてみたい。
町を一緒に歩いていても女性に声を掛けられ続け、目的地に辿り着くまでに普通の3倍は
時間が掛かってしまうほどだ。
ルシフェルと出かけるとき、僕が殴って顔面整形してやろうと提案するが
「冗談はよせ」と笑ってかわされる。
8割以上本気のつもりだ。
何十年も美しい花の隣に咲く雑草花の気持ちも察して欲しいものだ。
酒の席で、その話をするたびにルシフェルは
「私よりも、お前の方がよほど良い男だ」
と笑いながら答える。
モテル男の余裕かチクショウ。
少し話が逸れてしまったが、続きを話していこう。
現在ルシフェル率いる魔族統一を掲げた連合軍と現状魔族最大の領地と戦力を持った
フラウロス家が激突している。
数の上では連合軍に分があるとはいえ、フラウロス家は代々続く魔族名家であり、家臣も名の有る魔族を多数従えているため、戦況は双方決め手に欠いたまま時間と犠牲だけが増え続けていた。
「ご報告申し上げます。」
一人の伝令が本陣のルシフェルの下へとやってきた。
「第3部隊のヒルダ様より伝言を預かって参りました。」
ヒルダというのはルシフェルの実の妹であり、兄と同じく銀髪、赤眼を持つ女性であり
ルシフェルと同様、僕の幼馴染である。
見た目は幼馴染の贔屓目抜きにしても美人であると断言できる。
しかし、性格はルシフェルとは正反対のよく言えば活発的、悪く言えばじゃじゃ馬であり
戦場を槍一本で駆けるほどだ。
実力も並みの魔族では歯牙にもかけないほどで、嫁の貰い手がないじゃないかと本気で兄達は心配している。
本人にそんなことを言おうものなら、見ほれるぐらいの笑顔を浮かべながら、全力鉄拳が飛んでくるであろう。
「それでヒルダは何と?」
ルシフェルが伝令に問うたところ、少し困った感じで伝令が答える。
「はっ、それがその…一言一句そのままお伝えしろとのご命令で…その~」
伝令が躊躇していると、ルシフェルが少し苦笑いを浮かべ
「かまわないさ、そのまま伝えてくれ」
その言葉で覚悟を決めたのか伝令が一気に言葉を放つ!
「はっ!ではご報告申し上げます。「「リュウト兄が単騎でフラウロス家屋敷に突貫をかけるから、兄さまはこれ以上双方に被害が出ないように、戦線を維持することだけを考えて!」」とのことです」
伝令が言葉を発し終えると、少しの間をおき本陣がざわめき立つ。
「なにを考えている!」
「一人でなにが出来るというのだ!」
そんな言葉が飛び交う本陣で、ルシフェルだけが全く別の反応を示した。
「くくく、あ~はっははは!」
普段冷静なルシフェルからは考えられないほどの笑い声に本陣が静まり返った。
「リュウトやはりお前は良い男だよ」
ひとしきり笑ったあと、そう呟くとルシフェルは各部隊へと伝令を飛ばすのであった。
「これより、各部隊は戦線の維持に努めよ。命を無駄にすることは許さん。」
「さて、頼りにさせてもらうよ、親友!」
遠くに見えるフラウロスの屋敷を見つめながらルシフェルが呟く。
まったくの処女作になります。
誤字脱字、おかしい言い回し等あると思いますが温かく見守って頂ければ幸いです。
よろしくお願いいたします。