第二十一話 マナリスXI.
今回で2章終了です。
僕はルシフェルとヒルダの二人に話しをした後、マナリスとエリザにも事情を説明するため
二人が居る部屋にいた。
「二人に聞いてもらいたい話がある。」
僕は真剣に話し始めた瞬間だった。
ぶふっ!!
二人が同時に吹き出した。
「リュウト様、お話はその腫上がったお顔を冷やしてからでも遅くはないかと…。」
彼女はそう言って立ち上がり、水で冷やしたタオルを持ってきて僕の頬に当ててくれた。
ヒルダの一撃が思った以上に効いていた様だ。
ヒルダは瞬間的に、明らかに僕より強くなる事があるのは何故だろう?
「それで私達に話って?」
エリザが席に着いたのを見て僕に話の続きを聞いてきた。
僕はルシフェル達に話した内容を二人にも同じ様に伝えた。
「二人の事は、ルシフェルに頼んであるから不自由な思いをすることはないよ。」
僕は最後に僕が居なくても二人は安全であることも伝える。
二人は黙ったまま、僕の話を最後まで聞いていた。
「孤児院を作るって言うのは、お父様や私への罪滅ぼしなの?」
マナリスが見定めるように、僕を見ながら聞いてきた。
「そうだね。その気持ちが無いと言えば嘘になる。」
僕も正直に答えた。
今この子に気を使って嘘を付いても、見透かされる様に思えた。
「そう。」
マナリスが短く答えると、席から勢い良く立ち上がり、僕にビシっと
指を刺しながら
「なら、私は“リュウト”を側で見続ける権利があるわね!」
「でわ、三人分の旅の準備をしなくてはいけませんね。」
エリザがマナリスの言葉を聞いて立ち上がる。
「…は?」
この時の僕は随分とアホ面だったと、後にマナリスに大笑いされながらに言われたが、
それはまた別の話である。
「何を言ってるんだ!二人は連れては行かないぞ!」
僕は慌てて二人の同行を拒否した。
「なによ、“私達”の家族を探しに行くんでしょ?だったら一緒に行くに決まってるじゃない?」
マナリスの言葉に僕は驚いていた。
確かに、最近は打ち解けてきてはいると思っていたが、彼女は僕の事も家族だと言ってくれた。
父親を殺めた僕を家族だと言ったのだ。
僕は一生許される事はないと思っていた。それは当然の罪であり罰であると、マナリスの中でも
恐らく葛藤はあると思う。そんな簡単に割り切れる事では無いだろう。それでも彼女は僕の方に
歩み寄ってくれたのだ。
「マナリスお嬢様と私を守れる自信も無いとは、情けない主人です!」
エリザはわざとらしく落胆してみせる。
「いや!いつ僕がエリザの主人になったんだ!?」
「でしたら、旦那様?主様?あなた?」
「最後は、明らかにおかしいだろ!」
僕とエリザのやり取りを見ながら、マナリスは声を出して笑っていた。
そして僕たちは、この日家族になったのだ。
それから数日は旅の準備でバタバタしていた。
食料や衣服、その他にも準備するものは山のようにある。
僕とエリザが忙しく準備をしている中、マナリスは一人でヒルダのもとを訪れ
戦い方を教えて欲しいとお願いしに行ったそうだ。
ヒルダも最初は断るつもりだったが、
「自分一人足手まといにはなりたくない!」
真剣な目で言われたら、昔の自分を見ている様で断れなかったそうだ。
事後報告で、僕とエリザに話しに来てくれたヒルダにエリザも
「お嬢様の好きな様に…」とだけで特に反対はしなかった。
ヒルダも最後の方は、スジが良いと色々叩き込んでいたようだ。
旅に出る前日には、自分の護身用の折りたたみの出来る短槍まで渡していた。
マナリスも「ありがとう先生!!」とヒルダの事を先生と呼んでいた。
そして旅立ちの日がきた。
僕らは夜明けの早い時間から出発することにした。
マナリスを利用する者が居なくなった分けでもないので、なるべく人目の少ない早朝に街を出ることにした。
見送りもルシフェルとヒルダの二人だけだ。
「マナリス、あなたに教えたのは護身程度だから無茶しちゃダメよ!」
「わかってる。ありがとう先生。」
先生が生徒に無茶はするなと言い聞かせていた。
「最初はどこに向かうんだ?」
ルシフェルが僕に聞いてきた。
「とりあえず、先の大戦で大規模な戦闘があった場所に行こうと思ってる。」
僕とルシフェルが話していると、話終えたヒルダとマナリスがこちらに歩いてきた。
「そろそろ出発するか。」
僕の言葉にマナリスとエリザは頷いた。
「じゃ、行くよ。二人とも元気でな。」
僕はルシフェルとヒルダに挨拶した。
「ああ、気を付けてな。」
ルシフェルとは短い言葉だけで別れを済ませる。
「リュウト兄…、ちゃんと二人の事気に掛けてあげるのよ。一人じゃないんだから無茶も
しないようにね。あ、あと手紙もちゃんと定期的にだして…よ…ねっ…ぐすっ」
話ながら段々と泣き声に変わるヒルダを僕はゆっくりと抱きしめた。
「うん、わかってるよ。ありがとうヒルダ。」
我慢の限界を超えて、泣きじゃくるヒルダの頭を撫でながら慰める。
暫く泣いたヒルダはバツが悪そうに僕から離れていった。
「今度こそ行くよ。」
僕の言葉にエリザは二人に頭を下げ、マナリスは手を振りながら
僕たち三人は歩き始めた。
「お前は付いて行かなくて良かったのか?」
ルシフェルが横で手を振るヒルダに向かって言った。
「兄様が一人になったら寂しいでしょ?」
「可愛い妹が幸せになるなら我慢するぞ。」
「まだ、ここには私は必要でしょ。それを投げ出して付いて行ってもリュウト兄は
喜ばないよ。」
三人の姿が見えなくなり、手を振るのを辞めたヒルダがルシフェルの方を見て
「次合うまでに、もっと女を磨かなきゃ!争いも暫くは無いから、そっちの訓練に
力をいれるの!それに兄様が変な女に引っかからない様に見張らないと。」
そう笑いながら話す妹に苦笑し、兄妹はゆっくりと並んで歩きながら屋敷へと
帰っていった。
次回から新章です。
登場人物は色々考えているのですが、誰から出そうか悩み中ですww
少しづつですがアクセス数も増えて来ました。本当にありがたいことです。
まだまだ、拙い文章ですが楽しんで頂けましたら嬉しいです。
拙い文章ですが続きが早く読みたいと思って頂けるなら
ブクマや評価の方も宜しくお願い致します。
本当に書く原動力・励みになりますので宜しくお願いします。




