第十七話 マナリスⅦ
直接こちらで書いているのではないので、変なところで改行が入ったりしている事があると思います。
読みにくい場合があると思いますがご了承下さい。
順次気が付いたら修正していっております。
「やはり違いますね。」
エリザがスープを一口口にして呟いた。
今屋敷の厨房でエリザと僕でマナリスが昔母親に作って貰っていたスープを再現しようと
試行錯誤していた。
とりあえず、エリザが分かっているスープ材料はコリーンという甘味のある野菜をベースとして作るスープであることで基本的な調味料なども分かっているのだが、最期の隠し味が分からない為、現在色々な物を加えて試しているところだ。
「やっぱり、オリジナルの調味料なんかを作って入れていたのではないですか?」
僕が疑問を口にすると、直ぐにエリザは否定してきた。
「いえ、私も何度か奥様が作っているのを拝見しましたが、その様な物を作っている様子はありませんでした。奥様は私達メイドの仕事を取ってはいけないとあまり料理をしない様にしておりましたから。」
「なら、そのスープの為に調味料を仕入れてたとかは?」
「そちらの線も薄いでしょう。屋敷にある調味料は全て把握しておりましたので。」
「…マジで!?」
「マジです!」
エリザのとんでもない能力に驚きながらも、僕たちはスープ作りを続けた。
数時間が経過していた。
「これで、基本的な調味料とマナリスお嬢様の好物は一通り試しました。」
何十通りか試しても思い出のスープには辿り着いていなかった。
「調味料なんかも複数混ぜて使ってるかもしれないんじゃ?」
「いえ、あまり複雑な味なら逆に私の舌に残りますので、直ぐにわかると思います。」
となると調味料の線は限りなく薄くなる。
やはり果物や野菜などに絞られるが、それでも数にすれば相当なものになる。
しかも、マナリスの好物は直ぐに試したが、どれも正解ではなかった。
こうなってくるとヒントがなくなるので本当に手当たり次第になってしまう。
「少し、休憩致しましょう。何か軽いものでも作ります。」
そうエリザに言われて何時間もスープ以外口にしていないことに気付いた。
「リュウト様はなにか苦手な食べ物は御座いますか?」
「いや、基本食べれるモノであれば問題ないよ。」
「良いことですが、なんとも作り応えの無い人ですね。」
エリザが少し残念そうに言った。
「はは、戦場にいれば食べれるものは何でも食べないと体がもちませんから。」
「僕に苦手な食べ物があったら入れないでくれてたんですか?」
その質問にエリザは笑顔で答えた。
「いいえ、是非とも食べて頂いておりました!」
本当にいい笑顔だった。
「聞いたのは、ただの嫌がらせですか?」
僕は少し拗ねながら言うと
「メイドたるもの主人の好き嫌いを無くすのも勤めです。嫌いなものを如何に食べて頂くかを考えて料理をするのがメイド道で御座います。」
「なんですかメイド道って………………!!!」
と突っ込んだ僕だが、突然閃いてしまった。
「リュウトさま?」
突然話をしなくなった僕に戸惑いながらエリザが声を掛けえてきた。
「そうか…そうだったんだ!!」
「エリザさん試して欲しいモノがあるんだ!」
僕の確信めいた表情を見てエリザも直ぐに頷いた。
「畏まりました。どの食材を試せば?」
そう、僕が閃いた食材は…………………………。
小一時間後、僕たちは一杯のスープを持ってマナリスの居る部屋を訪れていた。
このスープが本当に正しいのかわからない。
スープを飲んでもマナリスに反応があるかわからない。
それでも…、それでも微かな希望に掛けてみたいと思う。
僕はゆっくりとスープをスプーンで掬いマナリスの口に含ませた。
「お…」
「お母様…。」
そう呟いたマナリスの瞳からは止めどなく涙が流れ出ていた。
心を閉ざしてから初めて見せた感情だ。
マナリスは涙を流しながら、何度も母を呼びスープを飲んでくれた。
エリザもマナリスを見ながら涙を流していた。
「奥様…。流石です、隠し味にマナリスお嬢様の苦手なお野菜を入れているなんて…。」
まさに、母親が娘に嫌いな食べ物を食べて貰う為に作ったスープであった。
「奥様、マナリス様は大丈夫です。私たちが必ずお守りしていきます。」
スープを飲み終えてリュウト様に抱き付きながら涙を流す、マナリスお嬢様を見て
私は亡き奥様に誓いを立てた。
恐らくあと、2・3話で2章も終わると思います。
孤児院の時間軸でも色々書きたいものが沢山あって
どこで出していこうか悩んでおります。
ブクマや評価の方も宜しくお願い致します。
本当に書く原動力・励みになりますので宜しくお願いします。