第十四話 マナリスⅣ
話が進んでいるような、進んでない様なw
気長にお付き合いして頂ければと思います。
ヒルダに教えてもらい南の区に着いた僕だが、屋敷に居たメイドのエルザさんがこの街に来ている確証もなければこの中から探し出すアテもなかった。
幾つかの都市にバラけて移住させたとはいえ、数百人単位だろうし闇雲に探すには厳しい数だ。
僕は見張りの兵がいる詰め所を目指して歩いた。
少し歩いたところで詰め所を見つけて中の兵士に尋ねてみた。
「すいません。人を探しているんですが?」
面倒くさそうに兵士は僕を一瞥すると、
「ここにはフラウロス軍の捕虜しかいないぞ」
「大丈夫です。捕虜になっているかも知れない人を探してて」
僕が答えると兵士はゆっくりと武器を構えながら
「例え捕虜の中に貴様の知り合いがいたとしても、おいそれて合わせることは出来ない。」
「それに敵軍の捕虜に知り合いがいるなど、貴様何者だ!」
僕は兵士の態度に慌てて弁解する。
「いえ、本当に彼女に合いたいだけなんです。居るかどうかだけでも調べてもらえませんか?」
僕が兵士とそんなやり取りをしていると後ろから
「構わない、探してやれ。」
後ろから女性に声がした。
僕と兵士が同時に声の方を見ると、女性が数人に兵士を連れて歩いてきた。
僕と話していた兵士は直ぐに彼女が何者か分かったようで敬礼していた。
僕も彼女とは何度か会議等で面識のある女性だった。
一番隊の副隊長を務めていた女性だ。
名前はたしかグリモワールだったと思う。
大人の女性の色香をただよわせながらも眼鏡をかけた出来る女性といった感じの人だ。
「よろしいのでしょうか?」
兵士が彼女に確認をとる。
「大丈夫よ。彼の身元は私が保証するから。」
そう言いながら僕に微笑みかけてきた。
僕はその微笑に見とれてしまっていたが直ぐに現実に引き戻された。
「おい!探している人物の名前は?」
さっきまでやり取りをしていた兵士が僕に尋ねてきた。
「エリザって言います。」
兵士が名簿で名前の方を確認して、メモを書き僕に渡してきた。
「お前が探している人物かどうか、分からないが同名の者がいた。」
「メモのブロックに行って探せば見つかるだろう。」
僕はメモを受け取りながら兵士にお礼を言った。
「ありがとう、助かりました。」
僕は振り返りグリモワールにもお礼を言ってメモの箇所へと急いだ。
僕が去った詰め所で、
「グリモワール様宜しかったのですか?あのような素性も知れない者に情報を与えて。」
詰め所の兵士がグリモワールに尋ねた。
すると彼女は微笑みながら
「この国の英雄に恩を売って、損はないでしょう?」
グリモワールの言葉を聞いて兵士は驚いた様に言葉を発した。
「え、英雄とはまさか、あの者が?!」
公にされてはいないが、先の大戦で魔王フラウロスを単騎で討ち取った英雄がいると
兵士の間で噂になっていた。
「ただのその辺にいる若者にしか見えませんが…」
兵士が先ほどの若者が去っていった方向を見ながら呟いた。
「そのギャップに女性はキュンとくるものなのよ。」
そう言いながらグリモワールは微笑んでいた。
僕は兵士から貰ったメモの場所を尋ねていた。
「すいません、この辺にエルザと言う女性がいると聞いて来たのですが?」
ぼくは歩いていた女性に尋ねた。
「ああ、エルザちゃんならそこの家に住んでいるわよ。」
女性が直ぐ近くの家を指差しながら答えてくれた。
僕は女性にお礼を言うと、足早にその家に向かった。
家の前に着いて扉をコンコンと叩くと、中から女性の声がした。
「はい、今行きます。」
暫く待っていると扉が開き女性が出てきた。
「お待たせしました。」
扉から出てきた女性の顔を確認して僕は言葉を発した。
「お久しぶりです。と言うほど時間はたっていないですね。」
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