異世界での生誕
どこか覚えのある心地の良い温かさ。まるで母性のように、私を大切に包み込んでくれるその優しい温かさの中に、私はいた。フワフワとまるで浮かんでしまうようなその居心地の良さに、思わず幸せのため息を吐きそうになる。しかし、私はすぐに慌てることになった。
「ずっとここにいたいなぁ・・・」
それは、この幸せを言葉にしようと口を開いたときのこと。何気なく零した言葉が、自分の耳に入らなかったのだ。口から出るのはポコポコと浮かぶ泡だけ・・・。危機管理能力をあまり必要としなかった私でも、首を傾げる事態だ。私の耳がおかしくなったのだろうか?そう思い、閉じていた目を開く。そして、目を見開いた。ここでようやく、私は自分の置かれている異常な事態に気づくのだ。
「み…水の中にいる!?!?」
もちろん、この言葉も数個の泡と変わったのだが、そのときの私はそんなことは気にしていられなかった。私は生粋のカナヅチだったからだ。
「死ぬ! 溺れる! そして死ぬ!!」
頭がそれで占められ、慌てて私は体を大きく動かした。すると、手や足がすぐ近くの何かに当たり、私は何かに閉じ込められているということに気づく。こ…これは…何者かの殺意により、溺死させられそうになっている!?
「いぃーーやぁぁーー!!」
誰かに恨まれるような生き方はしていないはずだぞ。神様!無実な私を救いたまえ!というか救ってくれ!!
「助けてぇぇぇ!!!」
私は思いっきり叩いたり、蹴ったりした。すると、急に周りが揺れ、私はさらに焦った。このままでは確実に死ぬ、と。そして、私はさらに暴れ、体を上へ上へと身をよじらせた。どこかに私を入れたときの入り口があるはずだと信じて。この私を閉じ込めているものは、広かったり狭かったりしていて、途中圧死しそうになり、頬に冷気を感じるまで生きた心地がしなかった。そして、とうとう…私の命がけの戦いが終わりを迎えた。
「た・・・助かったぁぁ!!」
私は顔を出すと、あとは足を強く蹴り、体全体が外へと出る。私は口の中に入った水を吐き出すと、息をついた。正直、本当に死ぬかと思った・・・。誰だよ、私を殺そうとした奴…そいつこそ死に値するぞ…。私がバクバクといっている心臓を抑えようとしたときだ。不意に誰かが目の前に現れたのを感じた。誰・・・いや、ここにいるってことは、私を溺死させようとした張本人
に違いない!!
「お前が犯人かぁ!!!」
そう犯人に掴みかかろうとした私は、またしても異変に気づいた。私の犯人対する怒りの言葉が、今度は可愛らしい泣き声へと変わったからだ。
「産まれた! 女の子じゃ!!」
……はい?