ふぁーすとこんたくと
明るいよりは仄暗く。
賑やかよりは膜を張ったような静寂が好きだ。
大学を辞めようと決めた時、両親はさほど心配していなかった。
「おまえの好きなようにすればいいよ」
「おまえの人生なんだからね」
そこから何故、こんな仕事をするようになってしまったのかはよく分からない。
始めは単なる興味本位と、少しだけ時給が良いからというくらいの理由だった。
俗まみれの世界を社会勉強程度に達観しているだけ。
辞めたくなったら辞めればいい。
そう言い聞かせて、安心しきって。
気づいたら擬態職は僕の、本来の色になってしまっていた。
と、勝つんか積んとヒールの音が近づいてくる。
この辺りに商売関係以外の知り合いはいないはずだ。
反射的に背筋を伸ばす。
「あの、すみません?」
話しかけられた。まずいな。
目の前にはファンシーなジャンクフードに、おまけの玩具。
ナメられる…この黒服なにやってんだって思われる…
「違ったら申し訳ないのですが…あまりおよろしくない職業の方ですよね?」
「そ、そうです…が?」
つくづくアホらし。と思ったのも束の間、ヒールの女は俺の言葉を聞くと頷き、(全身で頷いていたから顔を見ずとも分かった)俺の前の席に腰かけたのだ。
これはさすがの俺も驚いた。
「な、なんだよ。同業者か」
女は下を向いているようだ。
俺は思い切ってその顔を見た。そして衝撃がポテトの脂っこい匂いとともに全身を駆け巡る。
(こいつ、いったいいくつなんだよ!?)
黒色の、ワンピース。ゴスロリとまではいかないものの、それに近い系統のレースやリボンがあしらわれている全体に対して、身体はまるっつきり大人の女性のそれ。
しかし、顔だけはどうしても大人に見えないのだ。
そんなやつが目の前に座って、それだけじゃない。
俺のポテトを黙って食べている。
くりくりとした黒目がちの瞳が、きょとんと僕を見つめた。
「22歳…」
「年上かよ」