魔術使いと弟子
心霊探査0
―――繰り返していく日常が今日も終わる。
ここは良くある地方都市。僕はどこにでもいる男子学生だ。
「はぁ…」とため息をつき靴箱に向かう。
「どうした?そんなため息をついて?今にも死にそうってぐらい酷い顔だなぁ」
「うるさい。それに死にそうなぐらいってそこまで言うのはやめようよ…」
「いや、だって相当酷いよ?ほんとに大丈夫か?」
「酷いのは君の方だよ涼。ただ学校が終わって家に帰るが退屈だなぁって思っただけなのに…」
彼女の名前は永井涼。小さい頃からの腐れ縁でよく遊んだ仲だ。頭が良く正直可愛いんだがあまり考えも読めないかなり変わっている。
「そんな事言うなよ…そんなに退屈なら私に付き合え。よく遊んだ仲だしさぁ…」
「分かったよ。――それでどこに行くの?」
「ん?隣町の心霊スポットだけど?最近噂だし行ってみたいんだよね。」
「また心霊スポットか。いい加減懲りないなぁ…」
「そりゃあ1人で行くのもいいけど、こういうのは知り合い誘った方が面白いじゃん?それがたまたま白霧ってだけだ」
「はいはい。断ったらまた1人で行って無茶するんでしょ?分かったよ」
「なら決まりだな。今から心霊スポットは…大体2時間程度で行けるし行く途中に商店街があったからそこ寄っていくぞ。」
「またたい焼きなの?いい加減飽きないの…?」
「あそこは安いし美味しいから飽きない」
こうして僕達は商店街に向かった。
商店街でたい焼きを食べ、例の心霊スポットに向かう途中に妖艶かつ圧倒的白に近い輝きを放つ髪の女の人にすれ違った。
「――彼女、このままだと死ぬよ」
「…え」
唐突に宣告されたのは彼女の死だった、振り向くと誰もいない。僕はそれこそ幽霊に襲われた感覚だった。
「ねぇ涼、誰か今隣を通ったかい?」
「いや、誰も?もしかして白霧…心霊スポットに行く前に幽霊にでも会ったのか?」
「ほんとに?なら僕の気のせいか…」
「お前怖くて頭おかしくなったんじゃねーの?」
「んなわけあるかぁ!ごめん、ただの勘違いだったみたい」
「ならいいけど、まぁあとすこしだし見に行ったら帰ろうぜ。なんなら飯が食べたい」
「いや、涼…そんなに金ないだろ…」
「細かいことは気にすんなって!最悪お前から頂くからさ!」
「そんな自分勝手なぁ…」
そうだ、こんなやつだ。死んでも蘇りそうだし絶対死なないだろ。僕はそう思って心霊スポットに向かうのだった。
「おぉ…ここが噂の心霊スポットか…案外しょぼいな。普通の団地じゃねぇか…」
「涼!本当だ…よくある団地だ」
噂の心霊スポットは墓地でも廃墟でもなくただの団地だった。
「絶対これ心霊スポットとか噂流したやつ見間違いだろ…まぁいいや面白そうだし1回探索してみようぜ」
「涼…!」
商店街ですれ違った人の言葉が頭から離れない。
「おいどうした?そんな顔して?置いてくぞ」
―――彼女、このままだと死ぬよ。この言葉が脳裏を駆け巡る。
「いよっし。探索終わり!白霧帰ろうぜ」
「あぁ…うん」
「白霧どうした?飯でも食いにい…」
その時異常が起こった。彼女が消えた。いや正確には彼女の存在が消えた。
「涼…!」
死にものぐるいで辺りを探し出す。彼女がいた痕跡すら消えてるのに必死で探す。
「涼…!涼!どこにいるんだ!」
手当り次第に探すが何も見つからない。
「どこだ…!何処に消えた…!答えてくれ…!」
「…あーあ。だから言ったのに。彼女もう時期この世のものでは無くなるよ?」
「誰だ…!?」
振り向くと商店街ですれ違った美女が何かを口ずさんでいた。
「―――幻よ、還れ…」
その瞬間、何もかも崩れ去り廃墟と化した病院が出てきた。
「こんなもんやるのはアイツしかいねぇが…少年!彼女を助けたいんだろう?」
「はい…!」
「なら行け!今なら間に合うかもしれん!」
「ありがとうございます…!ところで貴方は?」
「ただのお姉さんだ…!」
僕はそれを聞いたあとただ夢中で走った。
廃墟に入りしばらくすると見覚えのある顔にようやく会えた。
「…涼!」
「あぁ…白霧か…良かった…」
こうして無事に助かり例のお姉さんが目の前にいた。
「ほぉ…よく助かったもんだな」
「お陰様で…ありがとうございます」
「礼はいらん。私はここに調査に来ただけ。たまたまこうして手を差し伸べただけだ。―――それより…なぁ!見てるんだろぉ!お前の実験は台無しに終わったが?ウェルダン?」
「はぁ…よくお気づきで。ミス高野?いや失敗だらけのモルモットさん」
「よくも遠くから監視するくせに簡単に煽りよる。いいか!お前の実験は失敗してこうして生きている!今回はお前の負けよのぉ?」
「…チッ。まぁいいでしょう…では次回もお楽しみください。ミス高野」
こうして彼は消えていった。
「高野さん?その…今回はありがとうございました。なにかお礼ができれば言ってほしいのですが…」
「寄せ…コイツに関わってもろくなことにならないぞ」
「ハッハッよく言ってくれるもんだ。礼か…そうだな…」
深く考え込み彼女はこう言った。
「従業員にならんか?命の恩人なんだからできる限り従うこと。いいな?」
「そんなめちゃくちゃなぁ…まぁそれくらいのお礼はしないとダメか…」
「は?私はそんな環境嫌だしそもそも学生なんだから出来るのはバイトだけなんだけど?」
「ならバイトでいいし1日1回なにか食べさせよう。これでどうだ?」
「だったらいいけどそこまでする理由は?」
「そりゃあ決まってるだろう。私は君の命を救った。それにアイツの手から生き残ったのは君が初めてなんだからそりゃあ欲しいだろ?」
「…分かった」
「なら決まりだ。それじゃ飯でも食いに行くか!」
「あの…ところで団地を無くしたのはどうやってやったんですか?」
「決まってるだろ?団地は元々アイツの投影、いや現実のスクリーンに映していただけだ。そこにお前達が入っていって彼女が狙われた。まぁ彼女が図太いおかげでギリギリ生きていたけどな!ついでに言っとくと実行犯はアイツともう1人合計2人の魔術使いがいる。まぁ詳しい話は後だな。それより飯だ!」
「あの…ところで…」
「なんだ?」
「魔術使いってなんですか?」
「まぁ私みたいなやつを指すな…魔術使いとはな――」
こうしてよくいる学生から非日常の毎日が始まってしまった――。
お読みくださりありがとうございます。初投稿で拙い部分も多々ありますが応援よろしくお願いします