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『異』世界の警察 日本  作者: かり助
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68話 新たなる戦争へ(2)

途中で視点が変わります。

日本が獲得した東見道は数年で急激な発展を遂げていた。


もともと日本政府は東見道は日本本土よりも移民等を受け入れ(規制が緩いのは租借地と同じである)本土と同等の教育を受けることになる移民二世を人口減少が未だに続く日本本土へ移住させようという計画であった。


つまり東見道は一種の踏み台であったのだ。


ただその規制の緩さと緻密な都市計画に基づいた快適な生活は(ちょっとした本土の地方都市よりはあらゆるものが整備されている)日本によって急速な発展を遂げる東世界から見ても十二分に魅力的であった。


当初約700人の元住民から始まった東見道は政府関係者の転居に伴う増加(割合となると自衛隊関係者によるものが一番である)、その都市計画を実施するための工事現場による働く場が溢れかえったことにより付近各国から若い肉体労働者が家族を連れてやってきたのだ。

渡航費を浮かせてやるために政府は民間のフェリーを借り上げて定期便を就航させたり、補助金を出したり大盤振る舞い。瞬く間に移住者は膨れ上がった。


さすがにこれ以上若い労働者をうちの国から持って行くな!!と付近の国は大使館に怒鳴り込んできたという。

それを聞いた外務省は移民受け入れの対象を世界各国に広げて現地の日本大使館で審査を行う形式を整えた。なんとも大規模な話である。


そのおかげか

東見道の開発初期には2校の小中一貫校が設置されていたが予定を超える移民の増加で開校から半年ほどでパンク。

そのため廊下はコンクリ打ちっぱなし、窓無し外廊下というベビーブームの時に慌てて作られたような学校がポンポンと建てられていった(お陰で都市計画は変更が相次いだという)


年間にすると10万人に近づく人口増加は0からのスタートとなる東見道では働く場の減少ではなく増加をもたらした。

これは政府および進出した企業の努力もあるがそれ以上に社会としてのシステムができていったからだろう。


もともと自給自足に近い生活を送っていた移民の人々にとって失業するという考えはない。日本への船の中で打ち解けた仲間たちと高めあっていこうと自分たちで働く場を作る。


開発現場の付近にはすぐに立ち退きがかかるとわかっていても屋台が立ち並び、

政府が対応に苦慮する魔獣についても彼らの手で駆逐されていく(いまいち政府が信頼していないギルドが管理しないうちにこの事業は日本の企業、というか第三セクターが担うことになった。)




開発されていく東見道の道庁所在地 『舞戸市』は行政を司る施設を中心に円形の都市が広がる。


次々と埋まっていく住宅区画と一定の区画ごとに建てられる小中一貫校、および高等学校。


建てられたら建てられる分だけ人が入ってくる。


自分の住居を待つ間はぐるりと現在開発中の区画を囲うように自然とできた移民キャンプ地、いや村と言った方がいいだろう。に人々は住んでいる。


開発が進むたびに村は円の中心から後退し、直径が大きくなるはずだが開発現場から安く売られた角材で作られた家々の密度はちっとも変わらない。

常に人はやってきているのである。

その村でのご近所づきあいがそのまま住宅区画でのご近所づきあいになるように道庁では名簿の作成を行なうなどきめ細かな行政サービスを行う。


住宅区画よりは開発がゆっくりであるがそれでも日本本土よりもはるかに速い開発が進む区画に商業区画がある。

日本本土と変わらぬ品揃えに加えて各国の品が並ぶ実に国際色豊かな場所だ。


迂闊にライバルとなるコンビニが付近にないからといって出店させると物珍しさとコンビニ弁当欲しさに集まった人々で店がパニックになったという。


このような開発区が道内に複数箇所あるというから驚きだ。




「いってきまーす」「いってきまぁす」「いってきますぅぅ」


「気をつけて行くのよー」


そう言って玄関から我が子を送り出す母の姿。あっという間に彼女の子供たちはエレベーターに乗り込む。

子供たちより一足先に出た夫の後に小学校に通うようになった子供たちを送り出すのがフラム家の1日の始まりだ。


「あらフラムさん。おはようございます。」


「おはようございます。タナカさん。今日もいい天気ですね。」


「あら、ニュースでは3時からから雨が降るとか言ってましたわよ。」


「えーっと3時っていうと....」


そう言って夫からのプレゼントにもらった腕時計の文字盤を数える。

まだ時計にはイマイチ慣れていない。


「この短い針がぐるっと回ってここに来るのが3時よ。」


「ああっ、ありがとうございます。もう最近は小学校に通ってる息子の方が色々知ってるものでアハハ」


「それならコミュニティセンターで共同学習会をやってるみたいよ。お弁当も出るみたいだし行ってみたらどうかしら?」


「参加してみようかしら。」


そのあとしばらくそれぞれの夫の話で盛り上がったあと家に戻り家事をこなす。

色々と慣れない日本での生活であるがご近所で支え合って過ごす。


ここに移り住んだ時は行きのフェリーの中からずっと驚いていた。

冬に移り住むこととなったが幸運なことにすぐに住居に入ることができ、初めて玄関を開けた時地域空調システムで暖められ、明るく電気がついた家には一番驚いたものだ。

何しろ今まで丸太小屋のような家ですごしていたのである。


子供たちは3人とも学校に通えるというのも驚きだった。

国では都会の方の子供たちは学校に通えるようになってきたようだが地方ではまだまだ学校すらない。

それが日本に来てからは学校の方から『学校に来てくれ』との書類が来るのだ。

子供たちは毎日楽しそうに学校に行っている。






「アハハハハハハハ」「おまえ、まじかよー」


もう学校へ通うのも慣れたなあ。最初は詰襟とかいう制服を着て、恐る恐る電車に乗って学校へ行ってたけど今はもう笑い話でもしながら学校に行ける。


昨日の『あにめ』は面白かったなあ。


「今日ってなに学校でするんだっけ?」


またかよクウェル、おまえいつもそうだよなあ。


「今日は『初等数学』だねえ。そろそろニホンの小学校の内容も終わるよ。」


サンキは割と真面目だな。


「失礼な言い方だね。君は。」


自分らぐらい年長だとどうもニホン本土の学校に合わせようと進度が早い。

6-7歳のガキはいいなあ。ゆっくりで。


「おい、見ろよ。すごい数のヒコーキだぜ。」


突然そうクウェルは言うと電車の窓に顔を押し当てる。俺にも見せろよ。


「ほんとだ....僕、学校の『てれび』ではみたことあるけど実物は初めて見るかも。」


「俺もだ」「俺も」


電車の中を見るとみんな窓に釘付けだ。


「あれ、全部自衛隊の飛行機じゃない?」「だよな旅客機じゃないもん。」



『パイセン』


俺らは日本本土からきた人をそう言う。なんでそう言うのかも意味もよくわからないが彼らが使ってた言葉をそのまま使ってる。

ほんとなんだろうこの言葉。


そのパイセン達も不思議そうに見てるから本土でも珍しいことなんだろうか?

彼らの話からするとジエイタイのヒコーキらしいが。



学校に着いてからもヒコーキの話題で持ちきりだった。そこで俺らは親がジエイタイに入ったというやつらに聞いて回ったもののまだ一番最初の基礎の訓練とかで何も聞いてなくてわからないらしい。



結局学校では収穫なしでの帰り道。クウェルが例のヒコーキについての話をし始めた。


「全く、なんのために親がジエイタイに入ってるんだか。」


クウェル、それはいくらなんでも違うだろう。


「ジエイタイに入れるようになったのも数ヶ月前かららしいからねえ、まだ基礎の訓練中というのも納得だよ。」


ふーん。サンキ詳しいな。


「この間図書館の『いんたーねっと』で見たんだ。」


「数ヶ月前っつーともう訓練は終わってんじゃねえの?前住んでたとこの近所のおっさんなんて1週間で戦場に行ったなんて言ってたぜ。」


「それニホンとビーマイトの戦争の時だろ。その時はビーマイトの方はまだ剣と槍がメインの武器なんだから銃をぶっ放す訓練とは違うだろ。」


「僕もそう思うね、ジエイタイは傭兵とか入れてないらしいし。」


そこら辺よくわからんな。社会の教科書でも読んでみるか。


「ふ、よくわかんねーな。ニホンは....ってここもニホンか。ハハハ。そうだっ、港行こうぜ港。また船員の兄ちゃんが何かくれるかもしれないぞ。」


唐突にクウェルは俺とサンキの手を掴んで港の方へ駆け出す。意外に遠いんだぜ....



「つ、ついた。」「もう疲れたよ。」


「なーにへばってんだ。この間みたいにジュースとかもらえるかもしれんだろ。」


そういえばぬるいジュースと食べかけのお菓子もらったな。


「ほら、船が.....あ。」


「どうしたクウェル、ジュースでも落ちてた....か....」


なんだあれ、いつもは緑とか白の船がいっぱいとまってるはずの港にそれが一隻もいない....?

いや隅に追いやられてるのか。


「な....なんだよあの灰色のでかい船。」「それも何隻いるんだ?」


港ではその灰色の船を岸壁に並べようとちっちゃい船が右往左往していて、今も湾外には入港しようとする灰色の船が停泊している。


「これも....ジエイタイの船なの?」「ジエイタイって何しにここまできたんだよ。今までこんなに集まったことあったか?」


一体何をしようとしているんだ。俺の新しい祖国は....


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