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『異』世界の警察 日本  作者: かり助
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65話 首都防衛(3)

かなり遅れてしまいました。


そろそろ事件を解決させなければ....

東京都内はすでに各地で厳戒態勢が敷かれていた。

湾岸エリアでは警察と魔導士の戦闘が起こっているので当然ではあるものの、それ以外の場所でもあちこちの警察官が立っており避難誘導や自衛隊車両の先導を行なっていた。


警視庁警備部部長率いる警察の主力、警視庁機動隊も魔導士との戦闘の最前線に投入された部隊は消耗し、増援の自衛隊の到着を前にしてなくなく撤退しているところもある。

当初から警察のみでの対処は不可能との判断を下していた対策本部は自衛隊の到着を今か今かと待ち望んでいた。



キィーーーッ


電車の甲高いブレーキの音が車内に響く。通常ならばスーツ姿の会社員でごった返す車内であるが今日は違う。

迷彩の戦闘服と弾帯付きの防弾チョッキに身を包み、負い紐を通して小銃を体に纏わせた隊員たちが整然と乗り込んでいる。


「小隊、下車ッ」


駅に着き扉が開くと小隊長の指示で次々と出てくる隊員ら。6個小隊を積んだ電車は外から見るとなかなか異様な光景だ。

電車全体では一個普通科大隊(・・)規模が乗り込んでいる大所帯である。

彼らは首都東京を守るべく投入された陸上自衛隊が誇る空挺部隊、『精鋭無比』を標語にする第一空挺団であった。


彼ら空挺団が陸路で移動と聞くと違和感を覚えるかもしれないがこの第一空挺団に限らず現代の空挺部隊。実際にパラシュートによるいわゆる空挺作戦を行うことは珍しい。

近年ではヘリボーン作戦の方が多くなっているという。

空挺作戦は訓練でもはコストがかかる上に事故も多い。おまけに現代ではヘリボーンの方が使い勝手が良いということであまり行われることではないが、

強力な歩兵部隊であることに違いはない。


過酷な訓練で鍛え上げたられた彼らは『精鋭無比』の言葉に恥じぬ部隊であった。


駅のホームに素早く整列した隊員らは駆け足で階段を登り、駅員によってすでに開けられている改札を駆け抜けて駅前に出てくる。

バスやタクシーが止まっているはずのロータリーには付近からかき集めた自衛隊のトラックやジープが並ぶ。

それに乗り込むと中隊ごとに車列が街中に走り去っていった。



ドンドンドン


商店の扉を叩く、インターホンを鳴らす、


「陸上自衛隊です。だれか居ませんか?」「陸上自衛隊です。もうすぐここでも戦闘が始まります。早く避難してくださいっ」「だれか残っている人はいませんか?」


外から見て電気が付いている家にはそう言って声をかける。本当はすべての家に声をかけたいがその余裕はない。


「り、陸上自衛隊??」


インターホンを鳴らしたうちの一軒から人が恐る恐る出てくる。ドアにはチェーンがかかったままだ。


「もうすぐここらでも戦闘が始まります。一旦通常の災害の避難所の小学校まで行ってください。そこに車両が手配されています。」


「で、でもこんな時間だし....」


「戦闘に巻き込まれてたくなければ早く逃げてください。近所のお知り合いの人にも声をかけて。」


煩雑なやりとりであるが重要である。本当は都や自治体が行うべき避難の周知、誘導であるが毎年のように出される避難指示などで実際に逃げる人が少ないように、昨今度々語られる『正常性バイアス』が働いて実際に避難する人は限られる。


なのでこうして戦闘が起こる前に余裕があれば自衛隊員らは直接付近の住民に避難を求める。


その避難を求める傍らでは、分隊支援火器のMINIMIにジャラジャラと音を鳴らしながら弾薬を装填し、装輪装甲車のハッチでは自動擲弾の弾倉を確認する。


『こちらオメガ31、小隊規模の集団の接近を確認』


観測ヘリからの無線が入ると同時に小隊長は隊員らに合図を出す。


さっとそれぞれが目をつけていた遮蔽物に滑り込んで装備が脱落していないかチェック、さらに自分の周りの隊員の位置も確認して射線上に入らないように注意する。

警察とは明らかに違う殺気が隊員らから漂っていた。




タッタッタッ


アスファルトの地面に染み込むような鈍い靴音をたてながら30人ほどの魔導士らが住宅街を走る。

彼らの後方には中隊規模の魔導士の集団が配置されており、いわば中隊のエスコート役となっていた。


自分たちが通ってきた道の障害物や、東京中心への侵入を阻止しようとする警官隊などをできる範囲で本隊である中隊の通過前に検索、掃討するのが任務である。


「おいおい、首都なのにあの兵士達思ったより弱いな。」「大した抵抗じゃないな。」


東京に侵入した時はこわばっていた魔導士らも、すでに日本側の警官隊をいくらかねじ伏せたことで軽口を叩き会えるほどにはなっている。

ただ彼らは今まで戦ってきたのが警官隊だったとは知らなかった。

もちろん魔導士の部隊の中にも銃器対策部隊やSATと戦闘を行うことになったものらはその火力に苦戦を強いられていたが、この部隊が戦闘を繰り広げたのは警ら中の制服警官を寄せ集めた警官隊である。

それを日本の軍事組織だと誤認していたのだ。


「この調子でいけば、グアッ」


ダダダン、ダダダダダダン


指定された道を曲がったところで激しい銃声に飲まれる魔導士の部隊。

観測ヘリからの情報で十字砲火を形成するよう展開していた自衛隊員らからの攻撃を受ける。


「止まるな、突破しろおおお」


十字砲火を浴びた時の最も良い対処法と言われているのはそのまま突破することだ。

現在の状況で後退してはいけないと部隊が混乱する中判断した魔導士部隊の指揮官は、突破の指示を出した直後にM2重機関銃の銃弾を体に受けて肉塊となっていた。


「反撃しろっ、逃げ隠れしても敵は倒れんぞ」


ベテランの魔導士の言葉で反撃を行う魔導士達。

彼らの杖から青白い光が次々と自衛隊に向かって放たれる。


『こちら第3斥候小隊。ニホン側の激しい抵抗に遭っている。我が隊のみでの撃破は不可能。中隊は直ちに前進してくれえええ。』


背中に覆いかぶさるような大きさの魔導通信機のマイクに怒鳴る通信兵。その周りには彼を守ろうと数名の魔導士が駆け寄ってくる。


通信兵に気づいた自衛隊員の1人が小銃の銃口を向ける。通信兵を守るべく別の魔導士が杖から3つほどの光の球を自衛隊員に放つ。


バンッ バンッ バンッ


大きな布をはたくような音と共に弾けた光の球で射撃を妨害し周囲の魔導士が魔導を叩き込んだ。


「うわっ、熱いいい熱いいいい」


右腕に魔導が直撃した隊員は地面に倒れもがき苦しむ。

彼の所属する班の班長の命令一下、小銃、分隊支援火器による猛烈な銃撃が先ほどの魔導士らを襲う。


『は、早く、中隊の増援を....』



小隊ですら十分に部隊を展開できない市街地でついに自衛隊と魔導士の戦闘が始まったのであった。



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