6話 戦いの舞台
そこまでミリタリーに詳しくないので艦隊の編成とかはあんまり考えてないです。あと整備中の艦艇なども考えていないので詳しい人にとっては違和感があるかもしれません。
ビーマイト帝国 国議院
「我が国の産業である鉄、その売り場を荒らすもの達が現れた。」
皇帝ビュランは壇上の上でそう言い放つ。
「サーミト王国は我が国の鉱山を奪い取り他国に売り渡した。そしてその鉱山から作った鉄を極東地域で売るものがいるそれがニホンだ・・・」
ビーマイト帝国 諜報本部
「スロペティカ王国からもたらされたニホンの軍事力ですが・・・ちょっと考えられませんね。」
軍関係者の一人がいう。彼は信じられないようで書類を眺めながらぶつぶつと何かを言い考えている。
「ふむ、確かにそうだな。ニホンの『センシャ』というものは馬のような速度で走り、大砲を撃つのだろう。それだけの能力があるなら装甲は無いに等しいだろうな。そしてその『セントウキ』って奴だが音の速度を超えるだって?馬鹿馬鹿しい。我が国の研究者が計測した音の速さは秒速350メートル弱だろ、その研究者も言っていたが音の速さを超える乗り物なんてありえん。それに攻撃方法もブレスを吐かないようだし、意外に弱いのではないか?」
中年、小太りのノルトラン諜報分析官はさらに続ける。
「新興国だと特にだが、自国の国力の鯖を読むというのはよくやることだ。ニホンの軍艦を目撃した人からの情報だが船体側面には大砲はないようだし、武器らしいものは捕鯨砲を大きくしたようなもの一つだけだ。技術力がいかに優れていたとしても軍事に応用できないとは・・・・。悲しい国だな。」
「確かにそうですね。我が国もそのような国をいくつか見てきました。それを取り込むことで技術を発展させてきたと言っても過言ではありません。」
別に自慢すべきことでもないのだが若い分析官はそう言う。
「確かにな。技術の有効利用と言うことだ。ニホンなんて国にあるから死んだような技術を我が国が生き返らせる。フッフハハハ。つい笑ってしまった。」
ノルトランがそう言うと周りもつられて笑い出す。
「よしでは軍部に報告してきます。しばらくしたらサーミト及びニホンの侵攻作戦が行われることでしょう。その時はぜひ諜報本部のお力を。」
そう言うと軍関係者は部屋を去って行った。
一週間後日本 防衛省
「あっ、これは戦列艦かな、うわーここ数日で一気に増えてるなぁ。それに軍港らしき港には兵士らしき人たちが集まってきてるし、侵攻の準備かなぁ。」
コーヒーを飲みながら自衛隊から回ってきた偵察衛星からの写真を見る職員。その周りには『侵攻』と言う単語に反応した周りの職員たちが集まってくる。
現在彼らは安全保障委員会、外交委員会などに提出する資料を製作している。
ちょっと一休みをしているとやはり話題は『日本とビーマイトの戦争』に自ずと絞られてくる。
「確かにそうかもしれんな。もしここから出撃したとしたら真っ先に狙われるのは沖縄だな。その前に先手を打って護衛隊群の派遣が行われるようだ。」
「しかしサーミト王国を経由してと言うコースだったら対馬を通って九州北部が狙われる可能性もあります。いくら自衛隊の護衛艦が強くても向こうは数できますからこちらも数が必要です。現在の海上自衛隊だったらビーマイトの船団二つを同時に相手にするのは数的に難しいかと・・・。」
「サーミト王国の近くで迎え撃つと言うのができればそれが一番です。日本にとって大切な国であるサーミト王国を守れる上に沖縄侵攻コース、九州北部侵攻コース全てに対応できます。しかし世論が許してくれるでしょうか・・・実質海外派兵になるものですし・・・・。」
「本当に日本が攻撃を受けるのか?まずそれが聞きたい。」
場が熱くなったところをその場で一番年上の職員が前提を尋ねる。
「ええ、公安によるスロペティカ大使館の極秘調査では日本侵攻の計画の話が出てきていますので、間違い無いでしょう。」
大使館への極秘調査なんて非合法のものをよくやるもんだ。ここは異世界だが・・・
「在日米軍にも協力を要請・・・。できるかなぁ。」
日本、サーミト王国、そしてビーマイト帝国それぞれで戦争の足音が近づいてきていた。
総理官邸
「ビーマイトと戦争か・・・。しかしサーミト王国も侵攻されるとなれば、日本の食料はおろか、やっと回復に乗ってきた日本の経済も影響を受けるぞ。」
伊佐元はいつも以上に深刻な顔をしている。
日本の戦力に関する情報がうまくビーマイト軍の中枢に辿りつけばそれだけ戦場での効果が大きくなる。
「そうだな。先にサーミト王国に自衛隊を派遣してそこで迎え撃つと言う案があるが、どうする?」
塚本防衛大臣が伊佐元に聞く。
「前の憲法改正では『日本は国の平和と国民の生命と財産を守るために自衛隊を保有し、その活動は国の平和と国民の生命と財産の保護さらには世界の平和の為に行う』と改正したが、さて世論はどうなるか・・・。」
その後『サーミト王国』に派兵以外の有効な手立てが見つからない為、国会にこの話を持っていくことになったが、こればかりはどうしようも無い話ということで、いつもは牙をむく野党からの攻撃も予想以上に少なく、自衛隊のサーミト王国派遣はあっさりと決まることになった。
数日前野党党首らと行きつけの店にお忍びで入っていく伊佐元らしき人物が目撃されたが国会での話とは関係無いだろう。
サーミト王国
「なにっ、ニホンがジエイタイを派遣してくれるのか。」
ミヌーテル王はそういうと少し考える。実際は『もし日本が手を貸してくれるなら喜んで受け入れよう』と決めてはいたのだが実際にこうなると迷うものである。
「よし、我が国はジエイタイを受け入れる準備があるとニホンに連絡をとれ。」
可憐な王座の間でバサリとマントを動かすと彼は正面を向く。大きな国難を打破する希望が見えた。
即決であった。ジエイタイとはいうが他国の軍隊である。それを自国に受け入れるということは『もう自分のところの軍隊だけじゃ自信アリマセーン。』と他国に宣言しているようなもので、よほどの脅威が差し迫っているということであった。
海上自衛隊は第3護衛隊群の第7護衛隊を除く残りの護衛隊群と日本が保有する唯一の正規空母である航空機搭載護衛艦しなのをサーミト王国沖に派遣することに決定した。
第7護衛隊が外された理由としては所在地が大湊であり、日本の中では1番ビーマイト王国に近いということで万一に備え残されることになった。
各地の港では家族や友人、恋人と涙を流しながら別れる隊員たちの姿が見えた。多くの人はそれに心を痛め、終戦後初めて日本が本格的に行う『戦争』というものの現実を突きつけられた気がした。
ビーマイト帝国南部 ホードワード港
「わがビーマイト帝国海軍は総力を結集して、サーミト王国そして、我が大国に挑戦してきたニホン。その蛮国らの夢を打ちくだき、我らのビーマイト帝国の永久の繁栄のため、ビーマイト連合艦隊は出撃致します!!」
青空の下、壇上で宣誓をする若い水兵に群衆からの盛大な拍手が送られた。
続いてプラーケン艦隊提督が壇上にのぼる。
髪には白髪が目立つようになったが未だその眼光は鋭い。
「わがビーマイト帝国軍は先進的な兵器を次々配備してきました。それは海軍も例外ではありません。騎竜搭載艦、そしてこの風がなくても動けるこの外洋戦列艦です!この最新の兵器を持ち、鍛えられた兵士、我が国は極東で調子に乗っている蛮国の鼻をへし折りに出撃します。必ず勝ってこの港に帰ってきましょう。」
群衆からは「おおー」という歓声が上がり、水兵の家族たちは泣きながら息子を見送っていった。
集まった群衆は1万人に及ぶとされ、その出陣式は宇宙からも見ることができた・・・・・
日本 情報本部
「これは ビーマイト帝国の海軍の出陣式ですかね、多くの人が集まって、船もだが、人もものすごい数だな。」
若い隊員がパソコンのモニターを見ながら言う。
「そうみたいだな。海自にもこれを伝えろ。」
上司がそう言う。
「はい。しかしこの艦隊は帆船が主力みたいですね。黒船みたいな外輪船がちらほら、帆船で木製の空母みたいな船が3隻確認できます。多分これが騎竜を載せる船でしょう。他の港には軍船みたいな船はほとんど確認できませんしこれが主力でしょう。」
「海自はしなの一隻が空母か、頼むから黒船なんかに負けないでくれよ。」「俺的には黒船の写真欲しいんだが。」「帆船で木製の騎竜空母のプラモデル発売しないかな。」
いつのまにか周りの職員が集まり初めていた。
「おい、お前ら任務中だぞ。席に戻れ。」
彼らの上司が注意する。その上司の机には黒船の模型が飾ってあった。
海上自衛隊の4つの護衛隊群の大艦隊はビーマイト帝国連合艦隊を打ち破るため南西に向かっていた。どこまでも広がる極東洋、そこは史上最大の海戦の舞台となるのだった。
なかなか短い作品になりました。最近ネタが思いつかないです。これから投稿スピードが落ちるかもしれません。