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『異』世界の警察 日本  作者: かり助
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61話 関東防空戦 (3)

随分と更新遅れました。最近異世界感があまりないです笑

発進したF-35を擁する飛行隊は関東に向かって飛んでくるアメリカ海軍のF/A-18の編隊に向かって飛行している。

コックピットのレーダー表示はE–767からのデータリンクである。F-35自身の搜索レーダーを起動せずに自分の姿を隠して飛んでいる。


F–35はステルス機であり自身に照射されたレーダー波は受け流すように設計されている。しかしここで自分が搜索レーダーを出した場合、せっかく透明人間なのにフラフラと懐中電灯を振って自分の位置を晒しているようなものになる。

そこで早期警戒管制機であり戦闘機のレーダーよりも高い探索能力を持つE–767の取得した情報をデータリンクで送信し、F–35はそれを受け取るのみとしていた。

こうすることでF-35は自機の位置を晒さずに、最大限ステルス機としての利点を生かすことができる。



『中空SOCより各機に告ぐ、対処は領空外で行うこと。繰り返す対処は領空外で行うこと。領空侵犯の場合はこちらで対処する。』


日本で最も人口過密地帯である関東地方。その上空では空中戦を行った時何が起こるかは容易に想像できよう。


『聞いたな。自機の位置 敵の位置に注意して対処を行う。』


パイロットの西野は編隊長からの無線を聞いてHUDの表示を航法モードから照準環のある空戦モードに切り替え、さっと目を走らせて搭載物品管理システムで各種ミサイル等が機体のコントロール下にあるかどうか確認した。


彼にとっての戦闘前のルーティンをこなすと一回深呼吸する。彼は肺にマスクから供給される新鮮な空気が流れ込んでくるのを感じた。


「編隊長、敵機(・・)に警告は?」


『通常の緊急発進を行った別の編隊がすでに行なっている。撃墜されたそうだ。3分前の話だ。』


「なっ...海自からの支援はないのですか?横須賀から出撃したそうですが。」


『聞いていないな。あいにくデータリンクの情報は対空捜索モードの情報しかないから海面の状況はわからんよ。海自からの連絡もないみたいだしな。』



防衛省 本庁


「どうなっている?なぜ護衛艦隊は対空戦闘を行わん!!」


航空自衛隊の制服に身を包んだ航空幕僚が海上幕僚の一人に詰め寄る。

その眉間には深い溝が刻まれている。


「と、言われましても誤射の危険もある上に護衛艦とはいえいつも十分な量の対空ミサイルを常に搭載しているわけではありません。

積んでいるものはあくまで艦の自衛用のものですので...空対艦攻撃の威力はおたく(空自)が一番ご存知でしょう。」


そう言って海上幕僚の一人が首元に迫っていた手を振り払いながら答える。


「今我々は全力を挙げて防空戦闘を行っているんだぞッ、そうだあんたらの根拠地の横須賀だってうちらに守られてるんだ。少しぐらい協力しろよッ、おいッ」


興奮した先ほどの空幕の一人がほかの幕僚らによって抑えられる。その様子を海上幕僚らはじっと黙って見つめる。


「...気持ちはわかるよ空自さん。だけどなあんな高価値目標を手に入れるチャンスなんだ。無駄弾(・・・)は撃てないんだよ。」


そう誰にも聞こえないほどの声でポツリと漏らした男は海上自衛隊の制服に身を包んでいた。



首相官邸


「で、空自は戦闘状態だと...」


首相 伊佐元は地下の会議室でモニターを眺めながらそういう。


「ええ、海自も展開しているそうです。東京湾に入港する船は『ドラゴンが見つかった』ということで航路の変更をお願いしています。」


「全く恐ろしいもんだ。いつのまに日本はそんな嘘をつく国に戻ったんだか。」


財務大臣の田中がため息をつきながら言う。


「会議中失礼します。」


外務省職員が一例し会議室に入ってくる。冷静さを感じさせる動作であるが、若干乱れたスーツはここまで走ってきた印象を与える。


「...なッ本当か?」


報告を受けた外務大臣の岸根はそう言うと閣僚らの方に向き直り、先ほど渡されたメモを見ながら報告を始める。


「えー、拿捕されていた日本の自動車輸送船が先日解放されたそうです。拿捕した組織からの一方的な連絡が船団護衛の任に就いていた海保にあったと。現在日本に帰還中だそうです。」


「それは良かった。ただ、今は...この難局をどう乗り切るのかだな。」



房総半島沖 上空


「来たかッ。」


西野は呟く。ヘルメット表示は既にいつでもロックオン出来る用にしてあり、いつでも戦闘に移行できる。


レーダー表示にははっきりと敵である...かつては同盟国であった戦闘機に狙いをつける。

レティクルが人間の目には見えない距離の敵を捉える。

夜の闇に包まれているがヘルメットを通して見た景色はやけにはっきりした白黒の世界で、それに敵機と同期して動くレティクルであった。


「編隊長...」


そのあとの言葉が続かない。


『各機、ミサイル発射』


胴体中央部がパカっと開き重厚なミサイルが姿をあらわす。そのミサイルは出撃前にハードポイントに装着され整備員の手で赤い安全ピンを止めたバンドが引き抜かれたその時点で工業製品からヒトを殺傷する『武器』となる。


ハードポイントから切り離され数秒の間自由落下と慣性で機体から離れて行ったミサイルは自動でエンジンに点火され一気に加速する。


目指すは80km先のF/A-18。そのミサイルは夜の暗闇でも見えるような光を放ちながら飛んで行った。



米海軍空母艦載機 F–18の編隊


ビービービー


その警報が鳴ったのは突然だった。数分前に自分達に対して警告を発した航空自衛隊のF-15に向けミサイルを発射し、撃墜してすぐのことだ。


「おいおいもうやって来たのかよ。」


米海軍のエビエーター(米海軍でパイロットの事)のジョニー伍長はそう言った。

先ほどのF-15との戦闘で自分たちの編隊は損失はなかったものの精神的にも体力的にも消耗している。

意外に早い航空自衛隊の防空体制の構築に驚きながらも自分達の任務を思い出す。


たしかに同盟国への攻撃は気乗りがしない。航空団の中にも機に乗ること自体を拒否する隊員がいたのも不思議なことではないだろう。

だが自分たちは上の命令に従う軍人である。空母にのったのならその組織の部品として動かなければならない。

そうジョニー伍長は思っていた。


『くるぞ。ミサイルだ。終末誘導はARHッ』『振り切れぇ、頼むッ』『まずいッ落とされる、ああああああ』『いやだぁ、いやだぁ来るなぁぁぁぁ』


ガンガンとヘッドセットに仲間達の声が響いてくる。暗闇の中にミサイルの光を捉えた。レーダー画面を見てもそれは恐ろしい速度で迫って来ている。


各機は今まで組んでいた編隊を崩し回避機動に移行している。チャフ フレアディスペンサーから次々とチャフ フレアをばら撒きミサイルを躱していく。


「くっそ。E-2の支援があればこっちだって...」


一方的に攻撃を受ける形になったことに対し悪態をつきながら機体を操る。たまに姿勢指示器で機体の確かめながら回避、ミサイルの接近を知らせる警報が鳴り止んだと思ったらまた鳴り出す。そんなことを何回繰り返しただろうか?


レーダーには航空自衛隊のF-35の姿が映りこんだ。スロットルレバーの兵装選択スイッチを引き中距離AAMを選択、操縦桿の兵装発射ボタンを押し込んだ。


発射されたミサイルは飛んでいく。周りの生き残りの機もミサイルを発射し始めたようだ。



航空自衛隊 E-767


『敵 ブラボー編隊から飛翔体の発射を確認。エポック20は警戒を!!』


E–767からの警告を受け、先ほどミサイルを発射したF–35の編隊は進路を変更、ミサイル到達前にできる限り距離をとりミサイルに軌道変更を強い燃料切れを狙う。


ビービービー


ミサイルの接近を知らせる警報が機内に鳴り響く、各機はチャフ フレアを撒きながら回避軌道を取る。燃料を消費していたミサイルはF–35の機動に追随できずにその速度を失いながら高度を下げていった。




その日、米海軍の空母航空戦力は航空自衛隊との交戦によって壊滅、しかし航空自衛隊も決して小さくはない損害を受けたのだった。



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