56話 接近を阻止せよ(2)
政治・経済の中心である関東に向けて進んでくる2艦の動向はマスコミ等にはこれが日米関係に及ぼす影響を考慮し徹底して伏せられていた。
また航空機の運航に関しては付近の飛行機は全て航路を変更させた。ただこれも名目は『気象庁の発表する気象情報に基づいて』である。
閣僚会議から45分後、横須賀を母港とする第一護衛隊、第六護衛隊の招集が完了、各艦は横須賀を出港していく。
「井垣司令、第六護衛隊のことですが佐世保の方には話をつけたのですか?」
副司令から井垣と呼ばれた男はチラリと目を外に向けると「ああ」と返事をする。
第六護衛隊は本来なら横須賀に配備されているとはいえ第二護衛隊群、つまりは佐世保に司令部がある艦隊の一部である。
それを横須賀の司令部が勝手に非常召集をかけたのである。
その指示を出したのが井垣と呼ばれたこの男。第一護衛隊群の司令であった。
「今回のアメリカの動きはここ、横須賀司令部にしか回ってきていない。最も現場に近いというのもあるが、外交上の影響もあるし情報の拡散を少しでも遅らせたいんだろう。」
結局話をつけてないじゃないか。と副司令は眉を潜めた。
それに構わず井垣は続ける。
「だがな、一応は同盟国の船だ。簡単に沈めることははできん。拿捕が第一の任務だ。いいな。」
空母ロナルドレーガン
「司令 横須賀から海上自衛隊の艦艇が出港したとの情報が。」
日本側の動きを監視していた隊員がラップトップを持ってくる。そこには横須賀から海上自衛隊の艦艇が次々と出港して行くと言うことが、ツイッターに次々と呟かれている。
「ついに来たか。」
そういうと、『元』空母打撃群司令のアンドリュー・ケンジットは椅子から立ち上がり一度周囲で、操艦やチャートに何やら書き込んでいる隊員達を眺める。
「いいか、先程海上自衛隊の艦艇が横須賀から出撃したとの情報が入った。もちろん目標は我々だろう。
いくら世界最高の空母とイージス艦とは言え、相手は1つの艦隊だ。
だがな幸運なことにアメリカ共和国と日本は同盟国同士、簡単に互いの船を沈めることはできん。
そこで我々は賭けに出る。海上自衛隊の艦隊は我々の拿捕を狙ってくるだろう。そこでだ、一時は海上自衛隊に従う、そして接近してきた海上自衛隊の艦隊を...全火力を持って道連れにする。
全ての飛行隊、あらゆる火器、艦の全能力を使って道連れにする。」
アイランドの中は静寂が訪れた。




