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『異』世界の警察 日本  作者: かり助
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50話 開戦の時(2)

パーサーミッツ島攻撃開始とほぼ同時刻、パーサーミッツ島から北50km。ガットレー諸島沖


霧がかかった静かな海に多くの船が浮かんでいる。レストニア皇国の上陸部隊だ。主力艦隊の更新を優先した為、ほとんどが木造艦で構成されている。

「陸軍第2師団、および第6師団を乗せた輸送船は時間通りに上陸ポイントに到着する予定です。」

輸送船の護衛をしていたフリゲート艦(帆船)の艦橋で兵士が報告する。

「了解した。予定通りフリゲート艦隊は現在位置に停止、輸送船は揚陸作業に移る。」

騎竜が発艦したのとほぼ同時刻。もう一つの戦いが始まろうとしていた。


じっとりと薄暗い輸送船の中。男たちは黙々と上陸の準備をする。

彼らはレストニア皇国最精鋭の第2師団。1番に上陸する彼らの大隊はその中でも特に優秀だ。

その為装備の更新も早く、最新の後装式魔導銃を手にしている。


そもそも魔導銃は火薬式のマスケット銃と異なり、魔力を使って弾丸を加速して発射する銃のことで、比較的高い精度と初速の速さ、煤などが殆どないことで手入れが簡便であることがメリットとしてあげられる。

しかし今までの前装式魔導銃の実包は、形こそ薬莢(魔力が充填された金属製の筒)に入ってるものの、銃口から押し込んで装填するのには変わりなく、射撃後は奥に入っている薬莢を何とかして取り出さなければならないことから、殆ど役に立たなかったが、後装式の魔導銃が開発されたことで装填速度は向上、伏せ撃ちが可能になるなど戦場に革新をもたらした。


「総員、揚陸艇に移れ。」


兵士たちが布袋に入れた魔導銃と背嚢を背負って公園の遊具に使われるようなロープで編まれたネットを伝って揚陸艇に分乗していく。輸送船の中では他愛もない談笑をしていた兵士たちだったが、初めての強襲上陸作戦という事もあり、揚陸艇に移ったら皆黙り込む。


「揚陸艇発進、輸送船は全揚陸艇が離れるまで動くなッ。揚陸艇が転覆するぞ。」

輸送船の甲板の上では、海軍の兵士たちが揚陸艇のもやいを解き、ネットを引き揚げ、浮遊物(と言う名の転落者)が居ないか確認するために駆けずり回る。

そんな中でも手が空いたものは手を振って揚陸艇を送り出す。


真っ先に上陸し、橋頭堡を確保する2個大隊を乗せた輸送船4隻から放たれた40艇の揚陸艇はグングンと海岸に近づいていく。ビーチングまであと30分・・・



アルトニア帝国領 ガットレー島駐屯軍


ブーッ、ブーッ、ブーッ


机の上に乗っている機械のブザーがなる。近くに座っていた兵士は通信魔石に接続された受話器をとる。

「はい、こちらガットレー駐屯軍。」

『攻撃だ。レストニア皇国の攻撃があった。パーサーミッツ島の海軍基地がやられた。そっちは大丈夫か!?』

兵士は通信の途中だが受話器を顔から話すと上官の元に駆けていく。

「分隊長、パーサーミッツ島の海軍基地が攻撃を受けたそうです。うちは・・・大丈夫でしょうか?」

「それは本当か・・・、わかった警報を出す。いいな?」


兵士は再び受話器を耳元に当てると再び通信を始める。

それと同時に分隊長は伝声管の元まで駆けていき駐屯軍司令までつなぐ、司令は警報を出す事を了承する旨を分隊長に伝えると、分隊長は別の伝声管に口元をあてて言う。

「警戒警報、サイレン鳴らせ。」


すると駐屯地や監視所などの島中でサイレンが鳴り響く。それと同時に駐屯軍は待機していた部隊(2個小隊程度)を海岸に展開、同じガットレー諸島の他の島でも同じことが行われているだろう。

2個小隊が展開したのはレストニア皇国軍の上陸まで15分を切っていた。



「霧が薄くなってきたな・・・」

訓練でしか使ったことのない塹壕の中で、ある兵士が呟く。手に持ったクロスボウにはボルトが装填されている。

「本当に上陸してくるのか?」

また別の兵士が言う。

「わからな・・・・おいッ、あれを見ろッ!!」

一人の兵士の叫びに皆が霧が薄くなってきた海を凝視する。そこには数十隻の小型船が見える。


「来やがったな。おい、ダン、敵襲を報告しろ。他のヤツは攻撃準備、駐屯軍本部から本隊が来るまで時間を稼ぐ。総員射げッ・・・・」


ドンッ、ドンッ、パンッ、パパパン


小隊長の声は最後まで続かなかった。最期に命令を出そうとしながらも土嚢に突っ伏した小隊長、土嚢に赤黒い染みが広がる。


「射撃射撃射撃ッ。この島の土を踏ませるなーッ!!」


ベテラン軍曹が小隊長の任を引き継ぐ。その声でハッと我に帰った兵士達はそれぞれクロスボウやマスケット銃で射撃を開始する。


レストニア皇国軍上陸まであと2分・・・













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