45話 船団(2)
お久しぶりです。かり助です。最近忙しくて更新が滞っておりました。この作品はメインの作品なので優先的に更新しようと思っています。『魔法戦線異状なし』に関してはゆっくり更新していくつもりですので。(その間に大幅に修正するかと思います)
この作品もそろそろ最終話に向けて進み始めました。この作品が終了した後の作品もある程度考えていて、ミリタリー(現実世界に近い)にしようと思っています。今年の夏頃には最初の1話を公開できる・・・かなと思っています(この作品の進度にもよりますが)今後ともよろしくお願いします。
「前方1000メートル先に帆船3隻を発見。通信魔石による警告を行うものの船団回避の意思なしッ。」
巡視船のブリッジ中央にある通信席から報告が飛ぶ。船長席にすわった巡視船の船長、大山はうん、と頷くと指示を出す。
「これよりこの巡視船『しきしま』は船団から離れ、不審船団に接近。必要とあらば如何なる措置もとる。これより巡視船隊の司令機能を『だいせつ』に委任。本船は船団から独立し警備を実施する。」
この時大山は巡視船の入れ替え(途中の港での)が済んでいてよかった。と感じた。もしも完了していなければ『しきしま』一隻で船団の護衛を行わなければならない。いくら海上保安庁で最も優秀な巡視船とはいえ荷が重すぎる。
大山の指示によって船団の先頭を航行していた『しきしま』は増速、同時に司令部機能を最新の巡視船である『だいせつ』に移した(しかし対空監視は対空レーダーを搭載した『しきしま』が継続する)
「ピューマ、上空からの監視のため特別警備隊員を乗せた後、直ちに離陸せよ。」
大山の指示を受け、すでに後部甲板に引き出されていた虎の子のヘリコプターがエンジンを回し始める。
しばらくするとバタバタと大きな音を立てながらヘリコプターが飛び立っていった。
「おいおい、まさかあんなヤツが出てくるとは・・・。」
アルトニア帝国海軍に一時的に雇われている元海賊のジャンは呟いた。
今まで襲ってきたのは民間の船だけ。それも木造帆船がほとんどである。彼の仲間の中には運悪くレストニア皇国海軍に捕らえられたものもいるが、今彼の目の前にいる船はそれには当たらないようだ。
彼らが海に出てから今まで見たことが無いような船(この両国による『嫌がらせ』までは海賊はこの航路から追いやられていた)貨物船かと思ったがどうも違うようだ。
「け、検疫を行う。」
彼がなんとか絞り出せた言葉は震えていた。
「ありゃ?あれはアルトニア帝国海軍の船じゃないっすよ。」
甲板の上で双眼鏡を覗いていた海上保安官の1人が言う。
「どう言うことだ?」
「この世界でも軍艦は統一されていましてただの船の寄せ集めじゃないわけです。しかしこの船はアルトニア帝国海軍が保有する軍艦の中にはなかったと思います。」
そう言った彼はさらに続ける。
「ひょっとしたら海賊とかが雇われてるのかもしれませんね。海軍だけじゃ無理だったんでしょう。だとすると彼らが法を守って・・・というのは期待しないほうがよさそうです。」
『検疫を行う』と宣言するとぐんぐん近づいてきたそのうち1隻の船は『しきしま』に横付けしようとする。しかし何をされるかわからない『しきしま』は日本国が検疫条約に批准していないことなどを訴えてそれを避けようとするが彼らは止まらない。
「そこの船、直ちに停船しなさい」
マイクで呼びかけながら、汽笛で警告を促す。電光掲示板にはこの世界の文字で『停船』という文字が点滅する。
「おいおい、本当にいいのかよ。」
一方、突進している方の船長も心配になって来ていた。目の前にいるにはよくわからない巨大な船、仲間は後ろにいる船団を襲う為には仕方がないと言うがそもそもこれはどうなのだろうかと頭を抱える。他の2隻の船も後ろからついてくる。
「よぉし、近づいて来たぞ。全船に命令。面舵して並走だッ。」
指揮を任せている副長の声が響いている。
「あー、海賊稼業も今日で終わりかもな・・・」
ひとり ボソッとジャンはくらい船室で呟いた。
「不審船団、停船命令を無視しました。」
『しきしま』のブリッジの中に緊張が走る。
「よし、現在を持ってあの不審船団を『船舶護衛特例法』に定める特定危険船に指定。実力行使を許可する。」
大山はそう言うと双眼鏡をとって並走しようとする不審船団を睨む。
甲板に出ていた隊員に丸いボールのような物が手渡される。閃光弾だ。それを受け取った数名の隊員が、わざわざ自分から並走してくれた先頭の不審船に向かってタイミングを合わせて投擲した。
ポンッ ポンッ ポンッ
不審船のすぐ脇で破裂した閃光弾は眩い光をあげる。ここからは分からないが、相当の音もしているはずだ。
閃光弾にビビったのか、一瞬針路を変えて離れようとした不審船だが、再び並走しようとしてくる。それどころか舵を左右に切って船体を掠めて煽ってくる。他の不審船は『しきしま』を包囲しようと左右に舵を切ってくる。
「放水だ放水。早くしろッ!」
甲板にいた隊員がそう叫ぶとすぐさまポンプの動く音がして格納庫の近くから放水がアーチを描いて不審船に命中する。迫り来る船団を振り払うように『しきしま』は体当たり覚悟で船尾を振る。時折放水銃のノズルを左右に動かして不審船の甲板に立っている男たちを薙ぎ払う。
「うううええぇ。なんだこの軍艦は!?水をかけてくるぞ。」「船倉に水が溜まってきている。船倉を解放して水を排出しろっ。」「バカ言え、余計に水が入ってくるぞ。」
放水をまともに浴びた甲板の上は大わらわだ。皆かがんで必死に放水を避けている。
「て、撤収だ。今すぐ引けー。」
今まで指示を出していなかったジャンが立ち上がって船団に撤収の命令を出す。
「りょ、りょうかぁーい。」
船団は重たくなった舵を切るとよたよたと反転して去っていった。