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『異』世界の警察 日本  作者: かり助
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43話 燃える海上保安庁

かなり軽いノリで書いています。

最後の方、ちょっと海上自衛隊が可哀想です。

海上保安庁の巡視船である『しきしま型』巡視船は巡視船でありながらも実際はフランスからプルトニウムを運ぶ船を護衛するために作られた船である。全長150m、総トン数7175トンのこの巨大な船は、多数の武装を搭載した強力な巡視船である。


転移後すぐは海上自衛隊と共同で日本周辺の探索を行った。ビーマイト戦役の際には、サーミト王国沖でビーマイト艦隊を海上自衛隊の護衛艦隊が取り逃がした場合に備えて全国から集結した巡視船船隊の中核の戦力かつ、作戦指揮所を務めたほか、唯一対空レーダーを搭載した巡視船として、敵騎竜の警戒監視を担う予定だった。


しかし結果としては海上自衛隊はサーミト王国沖で敵を撃滅したため、巡視船たちは護衛艦から捕虜を受け渡され、日本に移送するという任務を担った。

『ビーマイト艦隊絶対撃滅』に燃えて、各巡視船に13mm単銃身機関銃を増設したり、「いざとなったら体当たりで・・・」

と覚悟を決めていた海上保安庁だったが、無事に海上自衛隊がサーミト王国沖でビーマイト艦隊を撃破。活躍の場もなく、ニュースで取り上げられることもなく、挙げ句の果てには『海上保安庁の存在意義』まで問われて非常に肩身の狭い思いをしていた海上保安庁であった。


最近では国境警備任務(そもそもこれは海上自衛隊の任務なのだが)も事案が少なくなり、もっぱら水難救助と測量(これも最近は海上自衛隊がすることが多くなってきた)が海上保安庁の主な任務になっていて、活躍の場が少ない為、来年度の予算を心配するのであった。



そんな彼らに西世界と東世界を結ぶ船舶の護衛が政府で検討されているという話を聞いたのは先日のことである。

予算の雲行きも怪しくなっていた彼らにとってこれは組織の命運をかけた一大プロジェクト(本当か?)に色めきだった彼らは政府に海上保安庁が護衛を引き受けると猛プッシュをかけたのである。

実は現在、海上自衛隊はすでに護衛任務を引き受けている。東世界の中で不定期に日本船籍の船とともに行動するという、どちらかというとパトロール的な要素の強いものではあったが、海上自衛隊は『特別海上警備』と銘打ってこれを実施。東世界の住人にとって日本の船というのは民間のタンカーや貨物線、そして灰色の船(護衛艦)であった。



「知名度が低い・・・」


何かの機会で珍しく東世界のとある国の港に寄港した巡視船の上から海上保安官が呟いたという。隣の海上自衛隊の護衛艦には差し入れをしている人や手を振っている人がいるのに、巡視船の周りには人っ子一人いない。それどころか不気味な大型船は気味悪がられている有様である。


「この任務は我々のものだッ。来年の予算のためにッ!!」

「「「ハイッ!!!」」」

若干不純な動機もあったが、知名度アップも期待できるとして海上保安庁は燃えていた。



一方海上自衛隊は淡々としていて、この護衛任務も命じられたら引き受けようとしていた。第五護衛隊群の編成をそろそろ終わりそうなこの頃になると護衛艦の数はある程度余裕を見せ(その代わり国内の造船所は辛そうだったが)今回の護衛任務も無事遂行できるだろうと考えていた・・・のだが。

官邸で「この任務は海上保安庁に」と猛アピールをする海上保安庁を見るとなんだか可哀想になってきた為(実は演習の時間が少なくなっていたりする理由もあるが)任務を譲ってやろうと考えていたのだった。


が、ここでも海上保安庁はツイていなかった。




国会 外交・安全保障委員会


「今回の『西世界航路護衛任務(仮称)』では護衛任務を海上自衛隊が行うか海上保安庁が行うか揉めているようですが(実際は海上保安庁がアピールしているだけ)私としては海上自衛隊が護衛任務を行うべきだと思います。理由としては・・・」

「私も海上自衛隊の方が・・・」「海上保安庁はちょっと・・・」


与野党関係なく海上自衛隊推しの国会の現状は、異世界に転移してからの実績というものが挙げられていた。

おまけに尖閣事変での海上保安庁の対処能力不足まで挙げられ、海上保安庁は官邸から撤退を余儀なくされたのであった。



数日後


「こちらワッチ、前方100に漁網が浮遊している。」

「操舵席ッ面舵ぃぃ」


セイルからの指示を受けて操舵をしていた隊員は慌てて舵を切る、が間に合わず・・・


ギュルルルルルル


「こちら船務長、スクリューに漁網が絡まった模様。」


船務長からの報告に操舵室はため息が溢れる。


「スクリュー、逆回転。」


ギュルルッ、ガンッ


「・・・?」

「さっきの音・・・なんだ?」


その後調べて見ると漁網にくっついていた金属製のバラストによってスクリューが破損してしまったのであった。

この潜水艦が起こした事故によって海上自衛隊派はイニシアチブを喪失。原因究明(人為的なもので、原因究明をする必要があるのかは謎だが)と再発防止の十分な対策をとる必要がある、と国土交通省(・・・・・)が言ったこと。国民の世論が海保寄りになったこと。

などあって海上保安庁が護衛任務を無事(?)獲得することになったのである。


(潜水艦スクリュー破損事件は海上保安庁の陰謀 なんて言われたりもしたが)








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