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『異』世界の警察 日本  作者: かり助
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42話 危険な航路

この世界において日本が位置する場所は『東世界』と呼ばれるところにあり、地球でいうアジアあたりになる。

そして地球でいうヨーロッパあたりに浮かぶ大陸のほとんどを占める列強国であり、西世界の大国。それがレストニア皇国である。

忘れている人も多いかもしれないが列強国の中で一番日本と親密な国であり、東世界以外でテレビ放送がされている唯一の国(レストニア皇国の支配下の国も含む)で、日本との技術的、文化的な交流が非常に盛んであったのだが・・・この国とその周辺で大きな問題が起きていた。



「そこの船、直ちに停船しろ。繰り返す、直ちに停船しろ。」


もうすぐでレストニア皇国の領海というところでその船は停船を命じられる。


「この船は郵便船だ。それにここは公海上だぞ。止まる必要はない。」


レストニア皇国の郵便船の船長は甲板の上に走り出てきながら停船を命じた船に反論する。


「アルトニア帝国との間に結んだ検疫条約を忘れたのかな?これより強制検疫を実施する。」


あっという間に郵便船に横付けしたアルトニア帝国のフリゲート艦から次々と水兵が乗り込んでくる。


「きっ、貴様ッ。何をする。」


郵便船の船長は必死に抵抗するが、乗り込んできた水兵は淡々と作業をこなす。

積み荷の木箱をひっくり返し、手紙の便箋を破り捨て・・・


「おやおや、船長さん。これは検疫(・・)ですよ。あなたの国に病気が広がらないようにね。」


郵便船に乗り込んできたフリゲート艦の艦長はニヤニヤと笑いながら、自由を奪われた船長に対し言い放つ。


「おっと。足の踏み場もないな。ハハハッ。」


艦長は革靴で床に散らばった手紙などを踏みつけながら何処かに歩いていった。



レストニア皇国とアルトニア帝国の間ではこのような嫌がらせが多発している。当初、レストニア皇国は護衛の船をつけるなどの対策をとったものの、護衛する小型艦の不足(戦艦で護衛なんていう金のかかることはできない)や、検疫条約を盾にした積み荷への破壊行為、軍艦だから領海内には・・・などという理由で効果はあまり出ることはなかった。

そこでレストニア皇国はアルトニア帝国及び、その植民地や衛星国船籍の船に対して同様の検疫を実施、泥沼化した嫌がらせ行為はズルズルと1年近く続いていた。



「で、このレストニア皇国とアルトニア帝国の不仲の原因を探ってきたと。」


ここは日本政府、もう何度目かわからない閣僚会議である。


「ええ、こちらがその報告書になります。」


そういうとスーツ姿の男はファイルから一枚のプリントを取り出し、伊佐元の目の前に滑らせる。

伊佐元はサッと目を通すと、次の閣僚へと回していく。


「DISAの職員の報告は素晴らしいな。局長殿。」


「それはお褒めいただきありがとうございます。」


伊佐元としては自分たちにも(閣僚ら)定期的に報告を行わず、時々思い出したかのように報告しにきて、まるで自由奔放に任務を行うDISAに対して皮肉をいったつもりだったのだがDISA局長に軽く躱すとニヤリと笑いながら話を続ける。


「その報告書に書いてある通り、レストニア皇国にある反体制派・・・つまり議会政治に反対する組織がこの件に絡んでいます・・・」


話を要約すると・・・


・レストニア皇国には民主的な議会政治に反対し、貴族議会の復活を求める反体制派組織がある。

・その反体制派に目をつけたアルトニア帝国(貴族の力が大きい国で、レストニア皇国と代々仲が悪い)が反体制派に資金を援助、議会制民主主義を逆手にとり組織票によってレストニア皇国の政治をコントロールしようとしたが、レストニア皇国の防諜組織がその計画を察知、反体制派への規制(というか弾圧)を強めた。

・弾圧を強めた頃から徐々に嫌がらせ行為が増え始めた。

・そして決定的だったのが日本とレストニア皇国が国交を結んだとき、ついにアルトニア帝国は国を挙げての(公式に言っているわけではないが)嫌がらせ行為を行うことになった。



「レストニア皇国とアルトニア帝国もめんどくさいですね。まあアルトニア帝国のやったことは相手の国の政治に介入する行為でアルトニア帝国の方が印象は悪いですが。」


外務大臣の岸根が頬杖をつきながら呟く。


「反体制派の規制ねえ・・・まあ実質内政干渉みたいなもんだからな。」


文部科学大臣の手塚も続ける。


「しかし、日本船籍の船もこの航路は使うからな。今はまだ被害はないが、今後もないとは言い切れない。海保か海自の護衛のもと、船団を組むべきでは?」


国家公安委員長の高野が言う。


「そうだな。俺も賛成だ。」


法務大臣の吉家も賛同する。


「いや、俺は反対だ。船団での護衛となると各企業の運行スケジュールを大きくずらすことになるし、何より輸送回数が減る。その影響をお考えか?」


経済産業大臣の田中がパァンと机を叩きながら言う。その希薄に一同黙り込む。


「しかし田中さんよ。船が沈められたら元も子もないし、民間船舶の運航本数も東世界内での貿易船ほど多くない。そりゃサーミト王国との間の民間船舶で船団護衛をしていたら各企業大打撃だろうが、西世界との貿易だ。なんとかやってくれんかね?経団連とかにもさ。頼むよ。」


防衛大臣の塚本の言葉に田中はうーん。と眉間にしわを寄せて考える。


「わかったよ。塚本さんよ。でもせめて船団を組む期間を決めてほしい。経団連には自分から話しておこう。」


こう絞り出すように田中は言うと、天井を仰いでため息を吐く。


「では、海保か海自の護衛をつけることにしよう。それぞれの省庁に持ち帰って審議を頼む。」


伊佐元がそういうと臨時閣僚会議は終了した。








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