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『異』世界の警察 日本  作者: かり助
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40話 海外旅行(2)

「・・・では皆さま揃いましたでしょうか?これより日本観光時の注意点を説明します。」


スーツを着こなした比較的若い男がマイクを片手に説明を始める。ここは客船内の宴会場だ。


「まず、先ほど配りました資料の通り、日本には大量の自動車・・・馬車が進化したようなものが走っています。基本的な交通ルールはその資料に載せてありますのでご確認ください。」


そういうと宴会場に集まった人々は冊子をパラパラとめくる。


「そして他に・・・これが一番重要です。日本の内政などについて調べている方は分かっていると思いますが・・・日本には『貴族』『平民』『奴隷』などの考え方がありません。日本の店の店員なども『店員』や『社員』であって『奴隷』ではありません。また自分の地位によって他人を蔑むのもあまり良い目では見られません。それはあなたが貴族であっても変わりません。そのところよろしくお願いします。」


その説明を受けるとその場の人々は一瞬ザワザワとなる。この世界では明確な人々の階級があるからだ。

しかし日本に来るぐらいの人々なので最低限それぐらいは心得ているのだろう、そのざわめきはすぐに鳴り止んだ。



「では最後に・・・どうぞ日本の観光を楽しんでください!!」

その日の夜、客船は日本の神戸港に到着した。



「我が国にできた港もなかなか大きいと思ったが、日本の港はさらに大きいなぁ。」

カルティーアは船から降りて伸びをしながら言う。後ろにゾロゾロついて来る従者たちも辺りをキョロキョロ見回している。

「しかしまずは入国審査を受けなければな。地図を見ると・・・あっちか。」

ゾロゾロと蟻の行列のように観光客たちは入国審査場を目指す。



「・・・っと、この薬品ですが持ち込み禁止です。」

入国審査官が横目に見ている端末には『注意』と言う文字が赤く点滅していた。

「んなぁ!?我が家に伝わる伝統的な治癒ポーションだぞッ。」

「しかし日本には持ち込み禁止の物質が検出されました。この『液体』を置いていけば入国ができます。」

「とは言ってもだな・・・」

一人の小太りの男が入国審査場で審査官と押し問答を繰り広げていた。そのせいで蟻の行列は一旦停止、後ろにつかえている人々はうんざりしている。

カルティーアもその一人だった。

「まったく、あの小太りの男は何をやっているんだ。」

「そうですねぇ。」


その後もダラダラと押し問答は続き、10分後にようやくカルティーアの番になった。


クンクンクン


「なっ・・・犬がなんでこんなところに?」

カルティーアに興味をなくしたようにその犬は別の人の所に行って匂いを嗅ぐ。

「日本では薬物などの検査に犬を使っていますよ。そのほかの仕事でも犬は結構働いています。」

丁寧に教えてくれた入国審査官の話に「ヘェ〜」となりながらカルティーアは無事に上陸許可シールを貰うことができた。



ゾロゾロゾロゾロ・・・



入国審査を無事に終えた観光客たちは『近畿観光コース』『関東観光コース』の二つに別れて行動する。北海道や九州の各自治体も激しく『自分たちもコースに入れろ!!』とプッシュして来たのだが、観光客の受け入れ体制(現地の警察の研修や大使館、領事館との連絡ルートの解説)などが終わっていないため、あえなくコースになることは叶わなかった。



「おっ、あんた達が観光客かい、安くしとくよッ!!」「へ〜いらっしゃいらっしゃい、ウチの名物の八つ橋だよ〜」

「海外からの観光客の皆さま限定のセールやってます。」

京都を訪れたカルティーア達は京都でも屈指の某観光地を訪れていた。車が通れそうな広さの道の癖に、あまりの人の多さにタクシーは途中までしか進めない。その為カルティーア達は少し手前で降りて、土産物屋が立ち並ぶ坂をゆっくり歩いていたのだ。


「しかしすごい数の人だなぁ。こんなに人が居るが全員観光客なんだろう。どうやってこの国は動いているのだ?」

「ニホンの人口だから出来ることなのでしょう。もし我が国で同じぐらいの人間が仕事を休めば、国としての機能が止まりそうです。」

カルティーアと執事はそんな会話をしながら道を進む。その時・・・

「なんだ?あの者達は?」「なんでしょうか・・・?」

カルティーア達の目の前には黒い軍服のような服を着た男達がゾロゾロと歩いて居た。よく見るとその周りにも同じような男達がたむろして居て、総勢500ぐらいではないだろうか?


「あっちにも居ますッ!!」

若い執事が指差した方には海軍の軍服のような服を着た者達が歩いている。しかし一つ不思議なことが・・・

「あれは・・・スカート。それも女だぞ。どう言うことだ?」

「確かに不思議ですね。しかしニホンはなんでこんなに兵士が観光地を歩いているのでしょうか?」



「変わった服着てるオッサンだなぁ」「外国人じゃね?」「この間なんかネットに載ってたぞ、外国から観光客が来るって」「じゃあ、あの人外国人・・・って言うか異世界人じゃね」「写真撮ろうぜ」

修学旅行生達はカルティーア一行をぐるりと囲み始め、正確無比なスナイパーのようにカメラのレンズを向ける。



「なんか囲まれているような・・・」「なんか怒られるようなことをしましたっけ・・・」「若いとはいえ、これだけの兵士に囲まれると怖いですね・・・」

そんな時・・・


「コラァ、お前らなんでそんな所に固まってるか〜。また良からぬことをしようとしているんじゃあるまいな。」

50mほど離れた所から怒鳴り声が聞こえる。

「げっ、ち、散るぞッ!!」

軍服姿(?)の若者達は蜘蛛の子散らすように走り去って行った。



「『タコヤキ』と言うのにタコが見当たらんぞ?」「なんかカンナの切り屑みたいなのが動いていますね。」「この黒い液体はなんですかね・・・」

カルティーア御一行は大阪にいた。

ガイドマップに載っていた『タコヤキ』なる物を買ってみたが、イメージしていたものと違って御一行は困惑している。


パクっ


「・・・熱ッッ!!でもなんか美味しい。」

できたてのたこ焼きを『丸々』口の中に放り込んだカルティーアがハフハフしながら言う(危険)

「ん?確かに。」「この黒い液体どこで買えるんでしょうか?料理担当としてこれは手に入れたいですね。」

その後も・・・

「巨大なカニが動いているぞ!!」「あれは・・・河豚?」「あのバンザイしている人の看板は何でしょうかね?」

新世界を巡った後も大阪城の階段でヘトヘトになったり、小豆色の電車に乗ったり、やたらと木の多い巨大な公園の塔を見上げたりして大阪を堪能した。


「今度ニホンに来た時は『カントウ』にも行こう。」

そう行って帰りの船に乗り込んだカルティーア御一行がお土産を入れた大きな風呂敷からは『たこ焼き器」の文字が覗いていた。








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