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『異』世界の警察 日本  作者: かり助
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21話 とある八百屋の情報戦(2) 腐った野菜

一人称で書いてみたつもりです。

カチャリ、小さく鍵の開く音がする。俺は少し開けた扉の隙間から体を滑り込ませた。

ここはレストニア皇国にあるとある八百屋。昼間は活気があふれているが、真夜中の今は闇に包まれている。

俺は今、自分が勤めている店のライバル店の八百屋に侵入している。防犯カメラもないこの世界では簡単な事だ。


あらかじめ下見をしていた為目標物はすぐに見つかった。木箱に入れられた野菜、これが目標だ。上着のポケットから腐った野菜を取り出すと積まれた木箱に入った野菜のうちいくつかを腐った野菜と交換する。

最後の仕上げに小瓶に入れた液体を野菜に振りかける。異様な臭気を放つ野菜の完成だ。


手元には腐った交換した高級な野菜がいくつか。

今日は野菜スープにするか。


次に帳簿や売掛け金が保管されている部屋に移動、鍵がかかっているが10秒ほどで手早く開錠するとその部屋に侵入する。いくつか作業(・・)を済ませるとさっさとその店から脱出した。



翌日の夕方


仕事を終えた俺がぶらぶらと通りを歩いていたら周りの人々のたわいも無い話の中から、俺が求めていた情報が伝わって来た。


「おい、お前知ってるか。ランバル様の所に野菜を卸しているケッホ青果店が潰れたらしいぜ。」「今日俺が朝通った時はやってたぞ。」「いや、どうもランバル様に腐った野菜を売ったらしい。おまけに売掛け金の詐欺と来た。」「なるほど、それでお取り潰しか。」


作戦第一段階成功。俺がこれぐらいで失敗はしないな。



数日後


「我々がケッホ青果店に変わりランバル様に野菜を卸すことになった。」


店長が日課の朝礼で言う。他の店員は驚いている。まあ俺は知ってたけどな。


「これからは一層気を引き締めて働くように。」


店長はその言葉で締めくくると店の奥に入って行った。

計算通り。本当の仕事はこれからだ。なんとしてでもランバル邸に野菜を毎朝卸す係にならなくては。

俺はそれから店長が無意識のうちに俺の仕事を見るように仕向けた。

ちょっとした仕草。店長と同調した動き。どれも訓練を積めば造作もないことである。係が決まる明日までに選ばれなければならない。もしそれを逃せばしばらくチャンスは巡ってこない(正規の方法では)。しかし相手の店長はスパイの訓練も受けていない素人。そうそう負ける勝負ではない。

しかし問題はもう一つある。ランバル邸の偵察だ。もちろんこの店の店員を家に入れるとなれば、この店にランバル邸からの査察が入る可能性が高い。

不審者が店員に紛れ込んでいないかどうか。もちろんこれも造作もなくやり過ごせるだろう。

そんな感じで1日過ごし、結果発表の明日を待つ・・・・




ことはできなかった。


無性に気になった俺は今後の対策を練ることも考え、またも深夜に八百屋に侵入。無用なリスクは犯したくなかったが、これからの方針がこの結果次第で大きく変わることを考えればこのリスクは大したものではない。

ちゃちゃっと職場に侵入し、店長の部屋を探す。机の上に置かれたメモなどから自分が選ばれていることを確認すると小さく頷き自宅に酒に酔っ払った男を装い帰って行った。

夜街を歩いただけで不審者扱いされるとは・・・。日本と同じ感覚じゃあやっていけんな。


朝礼で昨日確かめた通りの結果(ランバル邸に野菜を卸す係に選ばれたこと)を聞くと店の奥まで連れて行かれた。


「いいか、お前はランバル様の邸宅に野菜を卸す係だ。くれぐれもへまをしないようにな。」


店長に釘を刺されたが、身体検査(身元の確認)などをされないことを考えると、昨日相当秘密検査をしていたようである。

俺はとても素直に見える(・・・)お辞儀をすると、野菜の入った木箱を持って店を出て行った。


ランバル邸は通りを抜けて、なだらかな坂を登った閑静な高級住宅街にある。この地区は貴族も多く、通りの喧騒とは無縁の生活環境で、この地区への移住を目指す商人や役人も多い。その中でも真っ赤なレンガ造りで、ひときわ大きな邸宅がランバル邸である。


「ピスカー青果店のドルゲンです。野菜をお届けに参りました。」


大きなノッカは使いづらいなぁと思いながらメイドを呼ぶ。今日からは信頼関係が命である。「この部屋まで運んでもらえるかしら?」と言われれば合格だ。


「そうですか、ここに置いといてもらえますか。」


そっけないメイドは重そうに野菜を運んで行った。


チッ、1発目はダメだったか。まずはあのメイドを落とすか。そう思いながら閑静な坂を下って帰って行った。

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