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『異』世界の警察 日本  作者: かり助
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2話 接触とその影響

2話目の投稿です。これからも頑張ります。

「ニホン国・・・知らんなぁ」


その場のリーダー格の人物が周りの人物に尋ねるが誰も知らない。まあ数日前に転移して来た国だから当たり前だが。


「おぬしら、ニホン国と言ったかな?その国はどこにあるのだ」


「向こうのほうです」


小隊長が方角を確認しながら指をさす。もし地図とか方位磁針を知らなかった場合こっちの方が直感的でわかりやすいと考えたのだ。


「北東の方か」


リーダー格の人物がいう。方位磁針とかはあるようだ。そのような些細な事でもメモを取り、記録を取っていく。


「ここの国はなんていう名前ですか?」


「ここはサーミト王国じゃ。お前たちは知らずにやって来たのか。」


「ええ、まあ。実は我々はこの世界に転移して来たんです。」


あっさりカミングアウトした団長がそう言ったあとしばらくの沈黙。


「本気で言ってるのか?」


リーダー格の人物がそう聞く。そしてしばらく考えてから。


「とりあえず私から領主様にこのことを話しておこう。」


こんな素っ気ない会話から、日本とサーミト王国の関係は始まる。




東京 外務省

「陸地に上陸した部隊からです。現地住民とコンタクト成功しました」


外務省に新たに作られた部署では歓声が上がった。その情報は政府に送られ使節団を編成、三日後に派遣することになる。


「総理 やっと日本がこの世界で生きていくための足がかりができました。使節団の派遣、そして直ちに貿易の交渉に入ります。」


補佐官が言う。


「うむ。だがこれからどうなるか・・・。まだしなければならないことが、食料確保に国内の治安維持、通信の復旧に気象衛星、準天頂衛星など諸々の衛星の打ち上げ、あーあと石油とか産業に必要な資源の確保、いっぱいあるなぁ。」


今だある課題に気を重くする伊佐元総理。


「そうですねぇ 我々の仕事もこれからです。」




サーミト王国に上陸した部隊は集落から少し離れたところで野営をしようとしていた。


「隊長 なんか集落の方から監視されててちょっとしんどいですね」


「まあ こんな不審者たちを集落の近くに受け入れてくれただけいいだろ。ちょっと眠りにくいが。」



夕方になり隊員たちが食事の準備をしていると、匂いが気になったのか一人の少女が家から出て来てこちらにやって来た。

それを微笑ましく見ていた隊員たちだったが、その後少女の母親らしき人が家を飛び出して来て、少女を捕まえ何やら少女を怒りはじめた。多分あの変な人たちに不用意に近づくなと言っているのだろう。


「まだ自分たちは不審者なんだなぁ」


日本で感じたことのない心に何か刺さるものを感じた・・・




数日後、日本から使節団が到着した。彼らは領主の城に招かれ、そこで対談を行うことになったが・・・


「断じて認めん。」


この地域(ベルカイト地方)を治めるハーラッド領主は野太い声でそう答えた。


「なぜです?貴国の政府との仲介はできないのですか?」


使節団は疑問を投げかける。


「お前らのような新興国が、小さいとはいえ歴史ある我が国と対等に話し合おうなど・・・バカにしておるのか?」


「ですから、我々は転移してきた国で・・・そうだ。我が国の技術をを見れば・・・」


「お前ら新興国の技術なんぞ見るまでもない。」


日本の船などを見たことのある集落の人物は必死に領主にそれは違うと訴えているが聞く耳を持たない領主。

たしかにハーラッドの言うこともわからんでもない。

いきなりやってきた得体の知れない新興国(日本は違うのだが)がいきなり自分の国の技術自慢をしようというのである。そりゃ一蹴されることもあるだろう。


結局その日の対談は失敗した。




翌日


「では第2回ハーラッド領主様とニホン国の対談を始めます」


今日も対談が始まった。ただこの日日本は作戦を変えてきた。


「ニホンから領主様に渡したいものがあると言っておりますが・・・どうしましょう?」


領主の家臣の声


「ふん、面白い。なんだ新興国の大使殿?」


なかなか失礼な言い方だがここで怒っては交渉にならない。何しろ日本国民全ての生活がかかっているのだ。


「こちらを・・・」


使節団の一人が取り出したのは紫色の風呂敷に包まれた木箱、その中身は・・・。


「おぉ、これは純金か」


要するに賄賂である。




これは外務省内でもかなりもめた。献上品という名目で渡すにしても普通に見れば賄賂である。「お主も悪よのぉ・・・」の展開である。

なぜ日本の工業製品を渡さなかったのかというといくつか理由がある。

大きな理由としてはそのハーラッド領主が『技術』というものに関心を示さなかったからである。日本側がハーラッド領主の前でいくらスマートフォンなどを触っても興味を示さなかったということから工業製品を渡してもその価値を理解してくれないだろうというものである。



「フームなかなかいいものを貰ったどれお前たちの話を聞いてやってもいいぞ。」


どうやら賄賂を貰って機嫌が良くなったのかやっと話を聞いてもらえるそうだ。単純な男である。


「ではサーミト王国政府との仲介をしてもらえるんですね。」


やっと本格的な交渉ができると安堵した使節団の面々。


「おお、いいぞ一週間ほど待っておれ。」


単純な領主のおかげで一週間後サーミト王国と交渉が始まることになる。




しかし国内ではこの賄賂騒動が大きな問題になる。


「この賄賂を渡したのはどういうことか?総理お答え願いたい。」


資料を叩きつけながら共民党の議員が質問する。

伊佐元は落ち着いた表情で答える。


「はい、日本は今までいた世界とは違う世界にいるのです。つまり歩んできた歴史が違うということで持っている価値観などは違うとこがあります。そんな中、交渉を進めるにあたって『献上品』として渡したのが『金を原料に使った』製品だったわけであります。」




この賄賂騒動は内閣支持率にも影響を与え、比較的安定していた伊佐元内閣の支持率は一時『支持しない』が『支持する』を超える結果になった。しかしサーミト王国との交渉が成功したことにより支持率はある程度回復、賄賂騒動に関しては以前不支持があるものの、仕方ないことだったという意見もちらほら出始めニュースでも取り上げられなくなってきた。




「伊佐元さん、なんとか食料確保ができ、この世界で日本は生きていけそうですね。」


外務大臣の岸根がいう。


「やっとだな。賄賂騒動もなんとかなったし。しばらくは日本も安定かな。しばらくは・・・。」


伊佐元は何か心配事があるらしい。


「伊佐元さんなにか心配事があるんですか?」


「ほら使節団が報告してきた5大国あれがな・・・。」




伊佐元はサーミト王国との交渉で出てきた5大国に目をつけられるのではないかと心配している。


「確かにこの世界で日本は圧倒的な技術優位に立っている。それならあの5大国に戦争を挑まれても多分勝てるだろう。だがこの世界はその5大国によって秩序が作られてきた。それをこの日本国が崩壊させることになるのではないかと・・・。」


伊佐元の不安は後に現実となる。




下落していた内閣支持率を復活させる特効薬となったサーミト王国との交渉では日本が絶対譲れない条件として食料輸入が挙げられた。


日本では賄賂騒動が飛び交っていた頃、サーミト王国と日本の交渉


「では日本がサーミト王国に求めるのは食料の輸入であります。こちらのプリントをご覧ください。」


外務省職員が徹夜で翻訳したプリントが配られる。


「なんと、この量とは・・・。なんて量だ。」


サーミト王国外務大臣シーラーは日本側から提示された食料の輸入量に目を丸くして驚く。

「まあ農業が主な産業とも言える我が国とその連合全てで賄える量ですが・・・。これだけの量とは人口は1億を超え・・まさか。」


と、人口にも驚くのが産業大臣キュリーネ


「ええ。皆さんが驚くのも無理はありません。日本の人口は1億2000万を超えていますから。」


「そんなに多いとは・・・。連合総人口の6倍ではないか。」


驚きのあまり目が虚ろになっている外務大臣シーラーは椅子から立ち上がりフラフラしている。彼の頭の中には、近所にこんな大国があったという事実を受け入れないでいる。


「もちろんそれなりの対価は支払います。」


「それでしたら我が国としてはそのニホンの技術を求める。その、そなたらが使っていたその光る板、スマートフォンとか言ったかな?それを見るにニホンの技術はすごい。それを対価として求めよう。」


技術大臣リット、技術大臣という役職だからか日本の技術に関心を持ってくれた。あのハーラッドとは大違いである。


「はい。日本側もそれは結構です。しかし全てというわけにもいきません。日本ではこの世界での技術流失を防ぐため技術優位維持法というのが作られました。よって全てこの技術をオープンというわけにはいかないのです。」


日本側の説明にやや戸惑うサーミト王国側。


「どれほどの技術なら我が国に譲ってくれるのか?」


外務大臣シーラーは日本側に尋ねる。


「現時点ではまだ決まっていません。そしてサーミト王国側の使節団を日本に受け入れたいと考えているのですが、いかがでしょう?」


「おお、それはありがたい。」


こうして日本にサーミト王国の使節団が訪れることになる。




サーミト王国使節団が日本に出発する当日


「これはでかい船だ。なんだあのデカさは。城のようだな。」


外務大臣シーラー


「だな。これだけ大きな船とは5大国でも持っていないだろう。」


産業大臣キュリーネ


ここで日本側は「5大国」という単語に引っかかる。

「5大国とはなんですか?」気になった日本側の使節団は尋ねる。


「そうか知らんかったか。5大国というのはこの世界を区分する中央世界、北世界、南世界、東世界、西世界にそれぞれ一つずつある大国の総称のことだ。」


日本はこの5大国について国益に関わるとして政府にすぐ報告。それぞれの大国と早急に交渉を行うよう求めた。


サーミト王国の使節団は日本までの船旅の間、日本に行く際の注意点、例えば交通ルールや一般常識、また日本の政治体制などについても日本側から説明を受けた。


「ニホンの『センキョ』と言うもので議員を選ぶ制度は不思議ですね。平民に政治参加させているようなものですから。」


シーラーは選挙制度について疑問があるようだ。


「そうだな。日本は最高法規である『ケンポウ』に国民の平等が定められているからな。わが国とは考え方が違うな、成熟した社会と言うものなのか・・・。」


キュリーネは日本を『成熟した社会』と言ったがそれが正しいのかどうか・・・。周囲にいた日本側職員たちは苦笑していたという。




「さあ着きました。ここが日本の首都東京です。」


サーミトの使節団が東京に到着した。


「すごいな・・・、事前に配られた資料にあった『シャシン』で見ていたが実際に見てみると大きいな。」

「この大きさの船がこれだけあるとは、考えられんな」

「これだけの都市見たこともない。この石造りのような巨大な建物はどうやって建てているのだ?」「ここまで国が発展するまでどれだけ時間がかかったか」


驚きを隠せない使節団の面々。

その日のうちに国交や通商条約について交渉を行った使節団は次の日から本国に報告するために視察を行った。その報告は・・・。


《サーミト王国日本使節団 ニホンについての報告書》

ニホンでは4種類の文字が使われておりそのうち『カンジ』と言うものは通常使われるもので2000字を超え、実際にはその数倍存在する。これはわが国が確認した中の国では最も多いものであり今後ニホンからもたらされる書物の翻訳作業は難航するものと思われる。


ニホンには魔力が存在せず全てにおいて科学で発達したものである。ニホンの科学力はわが国を凌駕し、リット技術大臣によれば「わが国が全力で研究したとしても、今後100年経っても追いつくのは不可能だろう」と述べられるほど発達している。現時点において科学分野においては5大国の中でもニホンと同等レベルのものを有してる国は存在しない。


ニホン国の町にある店は1日中営業も珍しくない。それを支えているのは『デンキ』と呼ばれる力でそれを使うことで絶えることの無い光を提供している。『デンキ』は光以外にも生活で使う多くのものに使われており、『エアコン』と呼ばれる室内の気温を変えることのできるものや、一部では『ジドウシャ』と呼ばれる荷車の動力にも使われるなど非常に多くの可能性がある・・・・・・・・・・・




《日本国 異世界についての報告書》

我が国が最初にこの世界で国交を結んだ国であるサーミト王国は26からの国からなる連合である。主な産業は農業であり、この世界にしては比較的前世界に近い価値観、倫理観を持っている。そのためかこの世界では一般的である奴隷制度がここでは禁止されている(裏では存在しているらしいが)


サーミト王国からの情報によればこの世界には『魔力』と呼ばれるものがあり、この世界での通信手段または攻撃手段にもなる。また動物の中には『魔力』を使用できるものもありこれから接触するにあたって脅威になる可能性もあるのでこれから研究が必要となる。


この世界の技術力は総じて、前世界の中世ほどの技術力ではあるが、『魔力』などにより一部は現代に迫っているものもある。特に通信に関しては現代と差がないほどタイムラグが少ない。しかしインターネットのようなものがないため電話のような情報伝達しかできない。


この世界の資源分布については未だ石油、レアメタルなどを使用する国がないため多くが不明である。しかし鉄鉱石などのように一部判明しているものもある。


気候については長らく不明であったがサーミト王国の記録によって明らかになってきた。年間の気温は前世界の日本よりやや涼しく、温暖化進行前の日本とほぼ同じである。降水量は不明だがほぼ同じであると考えられる。そのため我が国の農業生産自体に大きな影響は出ないと思われる。




その後日本、サーミト王国、それぞれの国は国交を正式に結び大使館を置いた。それに伴いサーミト王国には日本企業が進出することになる。


「サーミトは過ごしやすいですね。治安もまあまあいいし、気候も悪くないですし。」


「そうだなぁ。今まで前世界のヘタな国よりよっぽどいいな。現地の人とも交流が進んでいるし。」


大使館員にとってはこの治安の良さや過ごしやすさなどはとても嬉しいことのようだ。

たしかにサーミト王国はおおらかな人も多く、見慣れぬ服装をした日本の大使館員にも優しく接してくれる。




日本企業が進出すれば日本の文化が広がっていくわけで・・・。


「おいなんだこの光ってる箱、やけにでかいな。」


通りを歩いていた若者が何か見つけたようだ。


「お前知らないのか。『ジハンキ』って言うんだぜ。なんでもお金を入れてここのボタンを押すとうまい飲み物が出てくるんだぜ。こないだ初めて使った時はびっくりしたぞ。」


自販機経験者が自慢げに熱弁する。


「なるほど、ここにお金を入れて・・・」


ちなみにサーミト王国仕様の自販機になっている。


「おお、本当に出てきた!しかも冷えててうまそうだ」


取り出したコーラを自販機から取り出すと、プシュッと開けて満足そうにその場を去っていった。

そのほかにも日本が売り込んだもので人気が出たものは『自転車』だった。軽快に町を走り抜けていく日本企業の日本人社員を目撃したサーミト王国の人々は自転車を売ってくれと一大運動を展開。これに目をつけたメーカーが進出、自転車を売り出した。しかしここで問題が、『自転車に乗れないのである』そのため・・・


「みなさーん。自転車教習所卒業試験でーす。」


自動車ならぬ自転車教習所である。場所はそこらへんの空き地で開催と設備はよくないが、走れればいいのである。


「やっと卒業か、あの『ホジョリン』ってやつの安心感はすごかったが、やっぱり『ホジョリン』がない方が軽快でいいなぁ」


快晴の空のもと集まった100人近いサーミト王国の人々は自転車教習所の卒業試験に挑む訳である。

となりのまだ補助輪をつけて自転車を走らせているのがいかついおっさんや、若い女性だから笑えてくる。ちなみに教習所を開いた理由としては自転車の乗り方だけでなく交通ルールを教え、ゆくゆくは自動車を売れたらいいなぁ、と政府の灰色の願望も混じっているのである。


日本の文化は確実にサーミト王国に広まっていった・・・













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[一言] 自販機は硬貨の精度が中世文明程度では、一定でないから無理なんじゃないかな。
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