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『異』世界の警察 日本  作者: かり助
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16話 降伏

久々の投稿です。記者会見のシーン、うまくできたかなぁ。

その後、上陸し、やってきた本隊によって要塞は完全に陥落、上陸した部隊は圧倒的な速度と火力を武器に帝都へ進撃していく。



ビーマイト帝国 国議院


「ニホン軍がここに向かってきているのは間違いない。ですが・・・対上陸作戦に帝都防衛の戦力を投入したため、もうニホン軍を止める戦力はほとんど残っていません。」


軍務局のベテラン官僚が議場でそう述べる。赤を基調とした美しい議場はかつてないほど静まりかえっていた。


「帝都に残った戦力でどれほど抵抗ができる?」


その場にいた貴族議員が聞く。彼の顔には自分の地位を保ちたいという欲望が垣間みえていた。


「抵抗なんてできません。どれだけの戦力を対上陸作戦に投入したと思っているんですかッ、そのほとんどが帰ってきてないんですよ。さらに要塞も陥落し、帝都は丸裸も同然。もう・・・、この国は・・・。」


興奮し顔を真っ赤にした先ほどの官僚が言う。普段なら、貴族議員に対しそのような口調で話せば不敬罪で更迭され、最悪処刑である。しかし今、それを指摘する者はいない。

もう皆認識した。今までの評価は過小評価だったとようやく認識した。この世界の基準では優秀な諜報機関を有しているにも関わらず、その情報を生かしきれない。それが敗因、いや何かのターニングポイントだったのかもしれない。

今までがうまく行き過ぎた。戦えば連戦連勝。負けると言う経験が少なすぎた。それで生まれた不思議な自信が『相手を過小評価する』と言う癖をつけた。今この議場にいる誰もがそれを噛み締めていた。


その時カツンと音が響いた。皇帝ビュランの杖の音である。ビュランが豪華な椅子から立ち上がる。


「ニホン軍に使節を送れ、白旗を持ってな。もう・・・、降伏だ。今までありがとう。」


皇帝の頰を涙が一筋流れた。これがこの戦争中唯一のビーマイトの英断とも言える。

帝都目前に自衛隊が迫ったころ帝都の門のうち一つが開いた。そしてそこから出てきたのは、鎧に身を包んだ兵士ではなく、白旗を手にした使節団であった。

自衛隊はそれを発見すると警戒しつつも接触。その後正式に使節と確認できたため、同行していた外交官が面会に望んだ。


「我々はビーマイト帝国の使節団です。国議院ではビーマイトの降伏を決定しました。これよりビーマイト帝国軍は武装解除を行います。帝都内では全て武装解除されています。」


「はい、わかりました。では帝都に入らせてもらいます。国家の要人に関しては、それなりの処置のために、身柄はこちらで押さえます。」


日本の外交官がそう言うと、ビーマイトの使節はやや暗い顔をしながら頷き了承の意思を示す。それからしばらくたち自衛隊の部隊は帝都に入ることになった。


帝都は繁栄した街だった。日本の都市ほど巨大ではないものの、この世界としては大きな建物があちこちに建っている。石畳で舗装された広い道を迷彩柄の自衛隊の車両が列をなして進む。帝都の住民たちは建物の影から怯えながら、こちらを見ていた。

自衛官たちは銃を持ち帝都を進む。目指すは皇帝の城。彼らの目の前には白い外壁を持つ大きく美しい城がそびえ立っていた。


「あれが皇帝の城か、大きいな。」


「ああ、とにかくあそこに辿りつかないとな。周囲の警戒を怠るなよ。」


軽装甲機動車の中で隊員が話す。彼の手には初めて実戦で使った89式小銃が握られている。

しばらく車を走らせると、城に到着する。門は開け放たれいて、車両はそのまま入城していく。


「ついに終わりか・・・。」


窓に映る自衛隊の車両を見て薄暗い自室で呟くビュランは目をつぶって自分が生まれてからの事を走馬灯のように思い出していた。そして日本に戦いを挑んだ日のことを思い出し、ウッと顔をしかめるとそこで思い出すのをやめた。


「時間です。」


秘書が呼びにくる。何の時間なのかは、容易に想像がつく。ビュランは無言で頷きニホンとの交渉に臨む。彼の目から色は消えていた。



日本


日本では開戦後すぐは先行きを不安視する見方も多く。マスコミの中には『勝てない戦いに望んだ日本政府』などと取り上げるところもあったが、サーミト沖海戦での勝利が伝えられると戦勝ムードが漂い始めた。それはそれでいけないと閣僚らが考え始めた頃、某メディアが『戦勝ムードに踊らされる国民』と言う記事を出し、ネットでも拡散極端な戦勝ムードは霧散していた。

自衛隊のビーマイト上陸に関しては世論調査の結果35パーセントが支持。30パーセントが反対、残りがよくわからないと回答した。


いつものように、そんなニュースが流れていた午後、日本中で政府発表の速報が流れた。


『ビーマイト帝国が我が国に降伏』


街では号外が配られ、SNSでは『降伏』に関する投稿が溢れた。



「今田官房長官による記者会見が始まりました。」


女性キャスターがカメラの前でそう伝える。今はどのテレビ局を入れても同じような光景が放送されていた。


「今回のビーマイト帝国降伏について説明いたします。日本時間本日11時に自衛隊の部隊とビーマイト帝国の使節が接触、ビーマイトの降伏を伝えました。その後自衛隊は帝都に入り皇帝ビュラン、及び閣僚らの身柄を確保しました。その際に戦闘は行われていません。今から1時間後、皇帝ビュランは正式に降伏を宣言する予定です。」


バシャバシャバシャとカメラのフラッシュが光る。


「それでは、皆様からの御質問をお受けいたします。所属とお名前を明らかにして御質問をお願いいたします。」


内閣広報官の言葉の後、記者たちが我先にと手をあげる。


「初めに参柄新聞社さんどうぞ。」


「参柄新聞の田沢です。これからの日本の対ビーマイト政策はどのようになる予定ですか。」


メモを手にしながら記者が質問する。


「はい、それにつきましてはビーマイトとの交渉次第になりますが帝都など一部の都市に治安維持のために自衛隊の部隊が駐屯することも考えております。」


「朝本新聞の新塚です。そのビーマイトの交渉は完全に国民に公開されるのでしょうか。」


「完全に公開とはならないでしょうが、多くは公開する予定です。」


「テレビ朝田の木元です。ビーマイトに自衛隊が駐屯することは憲法上考えてどうなんですか?」


今田はついに来たかと心の中で呟く。


「はい、それにつきましては治安維持能力の低下を防ぐことを目的に行うもので、地域の安定の為に行うものです。」


質問は続く・・・



ビーマイト 皇帝の城


降伏文書に調印したビーマイト帝国は、外交使節団を日本に派遣し平和条約を結ぶことが決定した。それまでは基本的に従来の法律などが適用されるが、一部の法(奴隷法など)については日本側からの要請により、早期に効力を失った。

れっきとした内政干渉ではあるが敗戦国である以上飲む他ない。


「我々は負けたか・・・。」


ビーマイトの外交官 ハルミンは控え室で呟いた。彼は明日から、交渉の為、日本に行くことになった。


「我々ビーマイトが負けた国、ニホン。興味が湧くな。」


ハルミンはそう言うと椅子から立ち上がり明日に備えて準備を始めた。



次の日


「ではこれに乗ってください。」


ヘルメットをかぶった自衛官がそう言う。ハルミンは開いた口が塞がらなかった。


「なんだ、この竜は・・・。胴体の中に入れるのか。」


その後ヘリコプターについていくつか説明を受け、乗り込む。音はうるさかったが意外に乗り心地は悪くなかった。

皇帝の城の広場からヘリコプターが飛び立つ。その後、海上に停泊している護衛艦まで飛び、日本に向け出発する。

彼にとって初めて見るものばかりのこの旅は、今までのニホンに対する認識を改めるのに十分な威力を持っていた。


(こんな物を持つ国を相手に我がビーマイトは戦争を挑んだのか・・・。)


彼の心の中には悔しさと悲しさ、そして日本に対しての畏怖の念が渦巻き彼の心を飲み込んで行く。

数日後、日本に使節団は到着し交渉が行われた。(交渉とはいえ自分から喧嘩を売っておいて惨敗したビーマイトは言えないことも多かったが)東京で外交交渉の後に、締結された戦後条約の東京条約で決まったことは・・・



・今後日本に対する敵対行為を行わないこと。

・帝国主義を改めた上で、国号をビーマイト共和国に変更。

・軍備は自衛の範囲内で認め、現在の『過剰な』軍備は廃棄および日本が接収をすることも認める。

・ビーマイト共和国の主要都市では自衛隊が駐屯することをビーマイト共和国は認める。ただし建造物等の日本による一方的な接収などは認められない。(軍備は除く)

自衛官などの日本人による犯罪行為は日本の法律で裁き、自衛官などの日本人に対する犯罪行為はビーマイト共和国の法で裁く。また一時的に施政権をビーマイト共和国は失うが、のちに日本は返還しなければならない。日本は占領地住民の生命・身体・私有財産を尊重しなければならない。

・ビーマイト共和国の教育方針などは日本と協議の上で変更することを認める。

・ビーマイト共和国の国有財産(食料など)は配給のため日本の管理下に置かれる。


そのほかにも戦争の賠償金ほか、鉱山などの採掘権、そして日本は租借地も得ることになった。この東京条約を元にビーマイトは新たな道を進む。かくして日本は実質的に東世界の大国、この世界の列強国の一つになったのである。






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