閑話 食の交流
久々に書くのでとりあえず閑話を書こうと思いこうなりました。料理には詳しくないので不自然かもしれません。
異世界で日本の食文化は非常に特異なものと言える。まず使っている食材から違い、食事に関する考え方も違う。異世界での食事と言うのは、第一に栄養補給、第二に簡単に手に入ってすぐ調理できるものを基本とする。そしてやっと味見た目である。
不安定なこの異世界では食事は『楽しむもの』と言う考え方はほぼない。せいぜい貴族、それもかなり上の方の貴族である。(下級の貴族は騎士のようなものであるから戦争が身近だったため)その為日本の『皆が食事を楽しむ』と言う考え方は非常に新しい考え方であった。
サーミト王国 首都ベルテラ
「おーい、クランツェ。なんだこの店は?こないだから工事してるのを見てるんだが、よくわからん。」
工事現場の前で男が通りかかった友人に尋ねる。
「なんでもニホンの料理店らしいぞ。ニホン・・・。どんな料理なんだろうな。」
サーミト王国内で広まりつつある日本の文化、自販機、自転車、服・・・。それによって『日本』と言うものは流行の最先端。ちなみに今のサーミト王国での流行の最先端は、上はカッターシャツ、下はジーパン、某コーラを持って颯爽と街中を自転車で走って行くと言うものだが・・・なぜこうなったのかはわからない。
変な流行も広まってはいるがサーミト王国ではひとまず日本文化が理解され広まって行ってるのである。
1ヶ月後
「ついに今日オープンか。先週から異音がするから何かと思ったぜ。」
1ヶ月前工事現場の前で話していた男である。彼が言った『異音』とは日本人の作業員が使っていた電動工具の音のことだ。
「そうだな。しかし何を出すんだろうな。」
そうこう話しているうちに店がオープンする。店の名前は『日本料理 和』。事前に予約していた30人ほどが店に入ってくる。彼らは事前にこの世界になかった食べ物のアレルギーの検査を受けている。
店内はカウンターと畳の座敷の席からなっており、予約の先着順に席が決まっている。座敷になった者達は初めて見る畳に興味津々だ。
皆が席に着くと写真付きのメニューが配られる。その中から選んで頼んでいく。
「この『スシ』ってやつ2つ。」「『タキコミゴハン』をくれ。」「『ソバ』と『ウドン』を頼む。」「この『ラーメン』に入ってるクルクルしたやつ何?後で売ってくれないか。」
店内は色々と盛り上がっている。日本人の店員達は大忙しである。
「この『スシ』ってうまいな。この『スメシ』ってやつも食欲を誘ってるな。この上に乗ってるのは魚の肉か。ニホンは変わった食べ方をするんだな。」
「ああ、この『ウナジュウ』もうまいぞ。タレがうまいな。」
それからサーミト王国では日本料理、いや前世界の料理が広まっていくことになる。
日本 東京
サーミト王国で日本料理店がオープンした頃日本でもサーミト王国の料理店がオープンしていた。名前は『サーミト王国料理店 ベルテラ』
ここも予約してアレルギーのチェックをした人たち50名ほどが店の前に列を作っていた。
「ベルテラ オープンです」
店から出てきた店員の声が響く。店の前に列を作っていた人たちが店に入っていく。店の周りには報道陣の姿も多く見られる。
店の中の内装はサーミトなど極東地域の建築様式を模しており窓の位置が高めであったりなどの特徴がある。スマホを取り出し写真に収めている人もいる。
この店ではサーミト王国の料理を日本人の口に合うようアレンジした物がメインであり(そのままだと日本人からするとあまり美味しい味付けではない。)しかし、材料などはサーミト王国からの産地直送であり新鮮である。メニューは・・・
ガリクパン にんにくのような風味を持つガリクの実を混ぜたナンのようなもの。
ピリピリ豆のサラダ 軽く炒ったピリピリ豆とレノサイ(レタスと白菜を足して2で割ったような物)モッシー(もやしを一回り大きくしたようなもの、これが成長するとピリピリ豆になる)のサラダ。甘辛いソースをかけて食べる。
牛のガリク蒸し 薄く切った牛肉をガリクと一緒に蒸す。ガリクの風味が牛肉に移る。
など・・・・
この世界の料理は割とヘルシーで人気が出ることになる。その後両国でそれぞれの国の料理店が多数出店することになり、食を通じて関係は親密になっていく。