1話 転移と接触
初めて投稿する作品です。
あまりストーリーとかに自信はありません。
世界の警察はアメリカだった。強大な軍事力で世界の秩序を作っていた。日本は世界の警察にはなれないだろう。この世界では・・・。
20XX年日本は尖閣諸島を突如として占領された。
時の内閣であった民平党 越世 輪内閣はその弱腰姿勢から対応が一歩二歩遅れたうえ、自分の支持層であった『平和主義』の人たちの『少数』意見に流されたため、強気に打って出ることもできなかった。さらに基地問題の兼ね合いからアメリカに協力を求めることもできずに気付いた時にはあっさりと占領されていたと言う体たらくだった。
するとどうだろう?数ヶ月前まで憲法9条と叫んでいたデモが自衛隊の増強を求めるデモに変わったのである。この国は無くなってからその必要性を認識するというか、『平和』というものの実態がやっとわかり始めた。それにしても極端な国民性だ。
まあここまでくれば当たり前だろうがまあまあ安定していた内閣支持率は一転、急降下し解散総選挙、その後政権交代となった。その後の流れで憲法改正運動が盛んになり。憲法9条は改正されることになるのだが、圧倒的に賛成多数という訳ではなく、慎重な意見が多かったことも事実だった。
《転移まで18時間》
「・・・について総理お答えください。」
今では数少ない民平党議員である山見議員がいう。
「伊佐元総理」
議長の声。
「はい、お答えします。」
ここでは新たに海上自衛隊に配備される航空機搭載護衛艦(空母と言ってはいけない)についての答弁である。
「日本が軍拡の道を歩んでると山見議員は述べられましたが、今日本はかつてない脅威の元に立たされているのです。今まで自衛隊は多少の間違いはあったにせよ、周辺の環境にあわせて変化していきました。よって航空機搭載護衛艦の配備というのは周りの環境に合わせて自衛力を変化させていってることだと考えています。」
「山見議員」
議長が名前を言う再び山見議員が発言をするようだ。
「総理は陸上自衛隊も増強するようですが、なんですかこれは。まるで冷戦の時のようじゃないですか。ばかばかしい。もっと国として予算を使うところがあるんじゃないですか?」
「今私はこの緊迫した国際情勢を米中冷戦と考えています。日本はその最前線であり現在被害も出ていますよね?」
民平党政権の時のことだから山見議員は苦虫を噛み潰したような顔をしながら黙って座っている。
総理は話を続ける。
「現在の情勢では日本本土上陸も考えられます。事態は非常に緊迫している。減らすのは簡単かもしれませんが増やすのには時間がかかる。ここで一つ、昔の話をしましょう。米ソ冷戦が緊迫したソ連のアフガニスタン侵攻のとき、我が国は北海道の戦車部隊を増強しました。編成が終わったのは9年後の1988年。被害が出なかったからよかったようなものです。我々は国民の命と財産を守ることを最重要としています。ならばこれが予算を使うところでしょう。陸上自衛隊を増強するのはなんら不自然なことではないですよね。そして予算とは国あっての予算です。私はそう考えてます。」
答弁はその後、夜まで続いた。
翌日朝 《転移まで1時間》
日本ではその日の朝、全国各地で地震が多数発生する。ほとんどが人間では感じないような地震だったが気象庁では担当職員が頭を捻らせていた。この群発地震はその後「転移予兆群発地震」と呼ばれることになる。
《転移まで1分》
日本各地で巨大な積乱雲が発生。異常な速度で発達した積乱雲は日本全土が飲み込まれる巨大な雷のようなものを発生させた。その直後積乱雲は一瞬で消滅・・・日本と共に。
世界中では直後日本と連絡が取れなくなる。各国の偵察衛星が日本が『有ったところ』を撮影した結果。日本は消え失せていた。その後の世界は未曾有の災害に見舞われることになる。
《転移直後 日本》
「総理 緊急事態ですです。海外と連絡が取れなくなりました。」
補佐官が慌てて執務室に駆け込んでくる。
「地震といい、雷といい今度はサイバー攻撃か。」
どっしりと椅子に座ったまま伊佐元は言う。しかし彼も内心非常に焦っていた。航空搭載護衛艦のこともあり、支持率は不安定。下手をすれば、流石に政権交代はないだろうが、大幅な議席減はあり得るのだ。
「まだサイバー攻撃と断定はできてません。しかしこれは日本の安全保障に関わる問題です。全閣僚を招集し緊急の閣僚会議を開きます。」
「うむ、わかった。」
伊佐元は一人で考える。以前ネットの何かの小説投稿サイトで読んだ物語を思い出す。確か日本が異世界に行く物語だったような気がする。なかなかおもしろかったがそれは物語だ。伊佐元は自分の頭に浮かんだ妄想をかき消した。
「では緊急の全閣僚会議を始めます。」
補佐官が会議の進行をする。
「現在起こっている通信不良はサイバー攻撃に起因する可能性は極めて低いかと思われます。」
補佐官が手元の書類から顔を上げながら言う。
が、そう述べた瞬間そこにいた全員が首をかしげる。そりゃそうだならなんだって言うんだ。
「ではなんだと言うんだね?」
財務大臣である石井大臣が不安そうな声で聞く。
「それは・・・」
補佐官の言葉が詰まる。彼は今にも泣き出しそうだ。
「ここは地球ではない可能性があります。」
声を振り絞って彼は言った。その後一瞬の沈黙、その後会議室は今までの雰囲気から一転、叫び声と怒号が飛び交う修羅場と化した。
P-3C
今機体は沖縄から飛び立ち南西方向に向かっていた。日本中で数多くの作戦機が各方面に向かって飛び立っていた。
さすがに「異世界に転移した」と言われ機内では不安そうな顔をした隊員が周辺を観察している。
「機長陸地です!」
一番若い隊員が発見する。
「よしわかった。針路を変更、通信員は基地に連絡!」
「了解」
今までチャートを記録していた隊員が基地に連絡を取る。
数分後機体は発見した陸地上空を飛行する。
「家らしきものがあります・・・ただ」
「なんだ?」
「その・・なんか現代の家じゃないっていうか、昔みたいな感じの家です。」
「うーん、まあ文明のレベルの違いだろうな。ここの世界の歴史なんてわからないからどんな文明なのかもわからないし・・・」
「ヒトなのかもわからないけど」
不安な隊員を乗せたP-3Cはとりあえず基地に戻る。その後隊員たちは指令に報告を行う。
「確かに陸地があって人が住んでたんだな」
内海司令が聞く。
「はい、目視での確認が行えていない上、異世界である以上、ヒトかどうかはわかりませんが・・・」
「今はそんなことはどうでもいいんだ。まあ写真もあるし政府の方にも伝えといたから多分海自とかが上陸することになる。ただ・・・。」
何か含ませた内海司令の返事に戸惑う隊員たち。
「お前たちが言ってた文明の話だがそれがちょっとな、もし本当に文明のレベルが俺らとかけ離れてたらそれはそれで厄介かもしれんぞ。俺らからしてみれば宇宙人がやってくるようなもんだからな。」
陸地発見から三日後
第二護衛隊群及び新造艦である航空機搭載護衛艦 しなの、輸送艦おおすみが出港した。
輸送艦には水陸機動団や現地の言葉に備え言語学者などを乗せ発見した陸地に向かっていた。
「艦長、我々はコロンブスですね」
しなの艦長の矢田艦長に話かけたのは、しなの航空司令の旗本司令だった。
「我々は大航海時代の西欧のように侵略しに来たのではない。ただ国民を飢えさせないためにはどうすればいいか・・・。」
その場の雰囲気が現実を直視した悲しい雰囲気になる。皆心の中には、圧倒的な技術格差による植民地支配と言う気持ちがあるのだ。
「前方に陸地を発見」
「LCAC発進。」
LCACには水陸機動団の隊員や言語学者などが乗せられている。
「上陸するぞ、衝撃に備えて」
上陸して、LCACから降りた装甲車に乗った隊員たちは装甲車の銃眼から外をのぞいている。装甲車は砂浜を走り、P-3Cが見つけた集落の方へ走っていく。集落の2キロほど手前で止まり隊員たちが下車する。
「なんか地球のビーチと違ってゴミがないね。やっぱり大きな国は近くにないのかな。」
「かもなー」
ゆっくり周辺を警戒しながら集落に近づく。集落手前の林に入った時、前方から槍を持った人が現れる。
「隊長・・・どうします?」
「どうしますもこうしますも、だいたいわかるだろ攻撃されるまでするなって。」
「まあ そうですよね・・・」
すると槍を持った人がこちらに話しかけて来た。
「お前らはどこの国のものか?」
隊員の一人が答える。
「自分たちは日本国のものです・・・・ん?日本語!?」
どうも言語学者の仕事はなくなりそうだ。