復讐者
「まあ、どうせやるなら頑張るけどさ。どうやって戦うんだ?」
霧のなんちゃらを倒したい!ってことだけは分かったが、戦い方が分からない。
「ああ、それは簡単よ。普通にあいつらの居住区に攻め込むだけ!呼び方は霧だけど、あいつらただの人間だしね」
「ええっ!?それってまさか……殺すってこと?」
「当たり前じゃない!これは遊びじゃないのよ?」
ユナは平然と答えた。ここそんな恐ろしい世界なのかよ……
「戦争なんて世界史の教科書とテレビ越しでしか見たことないんだが……血とか出る?」
「出るに決まってるでしょ。ここは死後の世界だけど、感覚は現世と変わらないの。パラレルワールド、とでも理解しておいて」
パラレルワールド……?昔なんかの漫画で説明を読んだことがあるが、同時に存在しうる平行世界、みたいな感じだった気がする。現世で俺は自殺して死んだが、ここは死なずに連れてこられた異世界ってことか……?うーん、理解不能!
「うわうわ、やだよそんなの!死んで安息を得るはずだったのに、なんで殺し合いなんかしなくちゃいけな」
「いい?この戦争に理由なんか要らないの。これは現世で成功できなかった私達による、世界への復讐なの」
ユナが言い切る前に割り込んできた。マナーがないよマナーが!
「現世で押し付けられた理不尽には、死後の世界で復讐するのよ。ああ、そういえば霧の説明がまだだったわね」
「あ、ああ。教えてくれない?」
「霧の連中は人生の成功者達。いや、正確には成功のレールに乗ってた連中ね」
「ってことは、そいつらも若くして死んだってことか?」
「ええ。交通事故や病気でね」
自殺した俺達とは大違いだ。残りの人生あげればよかった。
「なんか可哀想な奴らじゃないか。こっちではゆっくりされてあげろよ……」
「だから、言ったでしょ?なんで私達が優秀な奴らと劣等感を感じながら生活していかなくちゃならないのよ!理不尽には理不尽で返すのよ」
「お前らが現世で味わった理不尽より更に理不尽だぞ?何の関係もない奴らにいきなり襲われて殺されるんだぞ?」
「それでいいのよ。端的に言えば私達はストレス発散がしたいだけなの。理由も目的も報酬も要らないのよ」
「ただのテロリスト集団じゃねーか!」