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プロローグ
プロローグ
『ドールマンサー』
言うなれば、降霊術師のことである。
黒魔術を用いる降霊術師は、一般的に“ネクロマンサー”と呼ばれるが、彼らは死体に霊を降ろす。それに対し、伊織は人形である。そのため、他の降霊術師とは一線を画す意味で、彼は、自らをそう呼称している。
降霊術師という性格上、伊織は、霊力の集まりやすい場所に居を構えている。車も通らぬような片田舎の、さらに山の奥深くである。それなのに、どこで聞きつけたのか週に一度ほど来客が現れ、彼に降霊を依頼する。降霊料は時価。降りてきた霊が人形に与える影響の善し悪しにより、価格が決まるからである。
暦は文月から葉月へと移り変わるも、古より変わらぬ八百四段の石段。
それは、山道から、細く長く、伊織の屋敷へと続いている。
今日も、そこを上がる依頼者の荒い息遣いが聞こえてきた。
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