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ある精死病復帰者の記憶 その6 その他大勢のアンサンブル

この柏木サンが見ているのは、実際の元精死病患者の記憶を書き留めたものと、それを題材にした年表と、それを題材にしたアニメ的な映像がまとめられた一つの作品的な何かです(今更

 皇紀二二四八年(西暦一五八八年)

 大和国 八島・紀伊 手取てとり演習場


 大和世界の八島はその存在の特殊性により人口の少なさにより、首都移転後の方針から軍の演習場としての側面が多々あった。

 この手取てとり演習場も皇歴一九九六年(西暦一三三六年)に開設された場所であり、主に瑞穂星での要塞もとい城塞の攻防戦を想定した演習場となっている。なお平地での演習場は関ケ原となっている。


 怒号と破裂音が響き、硝煙が舞う戦場と化した演習場。PVMCGの仮想物質構成で構成されており、やってる事は大河ドラマも顔負けな壮大なサバゲーであるが、まさしくそれは戦場そのものであった。

 その広大な戦場の隅にあるのが東京ドーム数個分の面積の基地があり、この基地こそが仮想物質構成を司るセンターであり、状況を記録する場所なのである。


 大和国は既に幾多の軍制改革を行っており、というかもう500年も経過してるので、同じという方がおかしいのだが……基本的に軍人=武士という認識なのだが、その構成はもはや別物である。そもそも軍人=武士という方程式すら今後薄れていく可能性すらある。

 大和軍は地上戦および敵艦へと乗り込んで戦う『大和陸戦武士軍』と、戦艦や巡洋艦のある海軍に相当する『大和星間武士軍』が防衛大臣たる『征夷大将軍』の指揮下に入っている。もはや陸戦武士軍は主戦場が惑星内ではなく星間戦争が主体であるがために、こちら側でいうアメリカ海兵隊のような性質になりつつあるが、正面作戦もしっかりできる。


 両武士軍団が刃向かわないようにと、総理大臣たる大関白の直轄軍隊がある。それは『大和惑星防衛軍』と呼ばれている。

 大和惑星防衛軍は天津防衛兵団が規模が大きくなったために改変されたものになっており、陸戦武士軍団と星間武士軍団を足して二で割った編制となっている。活動内容も惑星防衛や治安維持や国家内外の災害派遣やインフラ復旧に特化している等、陸戦武士軍が攻めであるのに対して大和惑星防衛軍は名前の通り守りと言った感じになっている……というか性質的にはアメリカの州軍みたいな感じとなっている。国家の象徴クラスの艦艇は全て惑星防衛軍の配属となっている。


 両武士軍団が刃向かわないように~という名目だが、逆に大関白が独裁に走るようになったら両武士軍団に叩かれる運命にある。というか性質的にはアメリカの州軍みたいな感じで戦闘はあまり得意ではないため、過去にいろいろと言われていたらしい……。

 いわく『武士にあらずんば軍にあらず』と酒の席で言ってしまったがために後日発言を撤回して謝罪会見を開く、某タイラの軍将官。また、某ミナモトの将官の、その弟の将官サンも『なぜ敵陣に切り込まない軍を軍としているのか』という事を公言していたとかなんとか……お兄さんが火消しに大変だったそうな。


 しかし今はもう法改正や権限の変更、国家規模の増量に対しての意識の変化……等の時代の変化により、もはやそのような事を言いだすものはなく、むしろ大和一の実働部隊とすら言われるほどとなっている。


 話が逸れたが、八島は陸戦武士軍の管轄下であり、その昔は総本部があったが今は裏月面に設置されている。なお星間武士軍は総本部を冥王星近隣の人工亜惑星しのほしめいたなにかに置かれている。こちらは高天星(火星)〜ティエ連間を結ぶゲートの中間点である為、イメージ的には高速道路乗り場の近くに基地があるようなものである。


 そんな訳で手取演習場の基地の、展望室には多くの軍関係者や学者やらがおり、戦場の様子を見たり情報交換などを行っている。今回の演習は、新しい方法で製鉄された鉄を使用した瑞穂星の新型ブラスターもとい火打ち石式の銃を使用してるとの事で今までの倍近く居たりする。立ち見もアレなので座る場所も多々あるので皆思い思いに観戦を行っている。


 そんな中、将官士官に交じって大和惑星防衛軍の士官服の女性がいる。見た目は二十歳そこそこだが、既に大和国は大幅な平均年齢の上昇により見た目年齢×2の法則が適用されている。

 女性は真面目に立ちながら合戦の様子を見て詳細をPVMCGに書き込んでいる。


 「おや、家康中佐ではないですか」

 「隆景准将殿? お久しぶりです」

 そんな中、三〇代そこそこの男性の大和星間武士軍の将官が声を掛けた。

 「いやあ、お久しぶりです。おや、今は大佐ですか」

 「ええ、合同参謀部での功績が認められまして」

 隆景と呼ばれる准将は彼女の胸にある階級章に気付いて言い直す。

 彼は隆景・ジィズ・マアーブ。もとは毛利という苗字であったが、養子によりマアーブ家となったのだ。

 彼ら二人はぽつぽつと近辺での話を続ける。


 「確かアカマツ宙域での任務だったと記憶しておりましたが」

 「ああ、一週……いや今日で二週間前に帰ってきたばかりでしてね。丁度後続と交代する番にあたりまして。まぁ一・二か月もすれば再びアカマツ宙域での任務ですがね」

 「……やはりかの宙域での問題は大事に?」

 「なるでしょうね。じきに合同参謀部にも案の提示があげられるでしょう」

 「既に案自体はいくつかありますが……わかりました。帰ったら案の再検討を行い、ケース毎の案を作成します」

 「ははは、相変わらず貴官は仕事熱心で」

 「仲間内では仕事ドゥスと言われる始末でして」

 家康は苦笑し、隆景もそれにつられて笑う。

 「旦那様とはうまくいっていて?」

 「ええ、これでも定時には帰っている方なので」


 それであの仕事ぶりなのか……と隆景は思案する。

 彼女……松平 家康は親が政府高官という事もあり、何かと噂になる人間であった。

 士官学校卒業後は有能視され、ファンも比例して増えていたが、どこの馬の骨やもしれぬ氏真とかいう輩に盗られてしまい、男性ファンたちにひどく恨まれたそうな……。なお氏真としては歌手としてそれなりに有名な人物であり、どこの馬の骨は芸能に詳しくないor軽視する方々の評価である。

 ちなみにその旦那様の氏真は現在、歌手をやめて剣道の先生をしている。流派はなんと新当流である。


 話はそれたが、そんな結婚生活をしつつ、家康は堅実な作戦立案・分析能力を発揮し、ティエルマスカにもその名を知られるようになっている。

 

 「貴官のような人間が、我が星間武士軍にも居てくれればよいのですが」

 「何をおっしゃいますか。私などそんな……」

 「そう控えめにならず。それだけ貴官の作戦立案は大したものですよ」

 「そうでしょうか、いささか慎重すぎて現場では評価は低いと聞かされましたが」

 「ははぁ。それは下士官以下の話ですよ。どうも最近の人々は強気で困ります。下士官の中にも統合参謀部は現場を知らないという話があるようですが、我々としては政治上の判断は難しい部分もあり、やはり合同参謀部はありがたい存在ですよ」

 隆景はポリポリと頭をかきながら話す。


 合同参謀部。本命は三軍合同作戦分析立案部であるが、基本的に合同参謀部と言われている。

 その名の通り、陸戦武士軍、星間武士軍、惑星防衛軍の士官・参謀らが集まって互いの軍隊の動きを交換しあって任務成功へと導く部署である。

 参謀と言うと軍師みたいなイメージが付きまとうが、こちらはドイツプロイセン式の参謀で、無数の行動パターンから有効な行動のみを選び出すタイプである。

 政治的な作戦判断も行う為、外務省等の人間も多数在籍しており、それがあまり現場の人間には面白くないらしい。家康はその出生からエリート街道まっしぐらなのでなおさらである。


 「そういってもらえると有り難いのですが……」

 「いえいえ。おっ。どうやらあちらの戦況も動いたようですよ」

 隆景が示すように、どうやら攻城側があきらめて撤退するのを、防衛側が追撃するも、撤退する攻城側もただ撤退するのではなく、伏兵を所々に仕込んでおり、大変加熱した合戦となっている。


 「伏兵は陸戦の島津殿ですね。相変わらず嫌らしい戦いぶりです」

 「しかし追撃側も雑賀殿ですから遠距離による攻撃で島津殿の得意とする接近戦が封殺されてますよっ」

 「いやぁこれは中々……歴史に残る戦いですよ、これは……」

 「確か雑賀殿は長男の重秀と孫の孫一の三世代の参加でしたよね?」

 「ええ。あっ、孫一少尉の切り込みがっ」

 隆景の興奮ぎみの声が示すように、映像では雑賀孫一とされている若いフリュの軍人が……というか見た目がまんま鋼鉄城の名前なしさんに見えるのは天のいたずらか制作スタッフの遊びか……ともかく、そんな軍装の少尉が襲撃部隊の小隊に切り込みあっと言う間に壊滅させてしまう……当然PVMCGなので上半身を分離させられても大丈夫なようにできている。心なしかうれしそうに見えるのは気のせいかもしれない。

 興奮気味な隆景だが、別に彼が少女趣味なのではなく、単にこういう殺陣とかチャンバラが好きなだけである……とは人物伝に書かれてはいるが、詳細は分からない。


 そんなスポーツ観戦のように楽しんでる隆景を横目に、状況を事細かに記録する家康であった。


 なお、その後アカマツ宙域での武力衝突により状況が動き、対策に追われる事となるが、見事家康は的確な案を出し、そして大関白へと抜擢される訳なのだが、それは今語るべき話ではない。

 今はとにかく、瑞穂での新型ブラスターの性能と、それによる戦術の変化を記録しなければならなかった。


     *    *


 皇紀二二四六年(西暦一五八六年)

 

 『なに!?お前の研究が、あの信長に使われてるだと!?』

 通信によりリアルタイムでやりとりをしている大和人が驚愕している

 『《うん、石炭の効率的な燃焼方法を模索していたみたいで、とても喜んでいたよ》』

 笑顔で答える、こちらはザムル人、笑顔である。どうやら二人は兄弟らしかった。大和人の方が兄。弟の方がザムル人。

 『サインはもらったか!?』

 『《うん、兄がファンなんですと言ったら向こうも笑ってサイン書いてもらったよ。後で送るよ》』

 その報告に兄は子供のようにはしゃいでいる。どうやら会話からこの二人は兄弟である事がわかる。

 『《兄さん、そっちも大変だろうけど、気を付けてね》』

 『ああ、お前も頑張れよー』

 そう言ってお互いにこやかに通信を終える。


 かの兄弟はマサミチ・ラグ・ダテとマサムネ・ラグ・ダテの二人であった。その後の未来では圧倒的な兄が人気で、弟サンは地味に知る人ぞ知るという知名度になっていくのである。


     *    *

 皇紀二二六〇年(西暦一六〇〇年)

 大和国 八島・安土 瑞穂星文化文明研究センター 


 「これ、ちょっともう無理じゃないんですかね……」

 一人の研究員がそう呟く。その言葉にその場にいる何人かはうんうんとうなづく。


 眼前にはPM1910重機関銃とマキシム機関銃を足して二で割ったような機関銃がある。そしてそれをぐるりと囲むのは信長率いる建御名方神タケミナカタ計画のメンバーであった。


 「空薬莢の排出と次弾装填に射撃時の反動を利用した連射性に優れた銃……これを置かれた陣地の攻略はかなり人為的な損害を受けますが」

 メンバー全員が周知の事を改めて告げる職員。

 「毎分500発以上の連射速度を誇るこいつを攻略しなくちゃいけないなんて……」

 別の職員が言う。そして小さくやっぱ無理なんじゃ。とつぶやく。


 その銃は、機構上の関係で大砲のような両輪付いたものであり、野戦展開は難しいが防衛拠点に関しては難攻不落と化すという報告を受けている。

 手取演習場や桶狭間演習場においても幾多の演習がおこなれたが、中には五〇人の小規模な部隊が三人以上の中世期の装備の軍勢を撃退している為、「弾切れと弾詰まりさえを起こさなければ無限に戦える」としてティエルクマスカ中の軍隊でその機構に興味を記していた。これにより兵器の幅に広がりを見せる<革命>レベルの現象を起こす訳なのだが…建御名方神タケミナカタ計画の面々の目下の目的は『こいつで固められた拠点の攻略』である。


 「現状では数か月以上にもおよぶ包囲と散発的な砲撃を行い、疲弊した所を全力で攻めるか、質量な砲撃を行って制圧するか、処理しきれない数で攻めるかぐらいしないと攻略できないってのが現状ね」

 そういうのは鋼鉄城の名前なしさんに見える雑賀孫一さん。どうやら現場の声として代表として派遣されてきたらしい。

 「やはり塹壕ってやつがかなり効いていて防衛側有利は固いわね」

 大砲の野戦砲化と性能向上により、射程向上と連射速度向上により歩兵は密集体系ではなく散兵戦術へと移り、最も大砲のダメージを軽減される防衛陣形は城壁ではなく土塁であった。

 塹壕は土塁をつくる際に生じた穴であるが「ここに潜って顔と銃だけ出して撃てばあんまりあたらなくね?」という主張により試しに潜って戦った所、絶大な防衛力を発揮したのであった。

 そこに連射性の半端ない機関銃を配置したらどうなるか……そこはもう難攻不落と化してしまったのだ。

 チームはどうにかしてこの難攻不落の防衛拠点を突破する術を考えねばならなかった。


 「毒素のあるガスでも撒いて防衛側を沈黙させます?」

 「ダメだ。防衛側も対策を講じてマスクかなにかを配備すればそれまでだ」

 「盾使う?」

 「火縄銃ですら貫通するのに?」

 『分厚イ盾』

 『ダメデス。機関銃は防げても、動きが遅いから迫撃砲で吹き飛ばされるのがオチデス』

 発言しては否定される状態に、聞いていた信長はまとめに入る。

 「結論を言えばだ。歩兵銃、機関銃、迫撃砲をものともせずに突き進むすごい盾があればどうにかなる訳だ」

 そりゃあ、まぁそうなる。と皆が頷く。

 「まさしく無理難題。人力で運ぶのは困難ですよ」

 「人力でなければいけるのだろう?」

 『人力デなければって……何リキを使うのデス?』

 「石炭。確かお湯沸かしてその湯気でなんか歯車回す奴あったじゃん、あれ使えねぇかな」

 《あー長曾我部機関ですね。確かにあれを歯車を組み合わせて乗り物を作る計画がほかでやってるのを聞いた事があるので、私のツテでどうにかなるでしょう》

 そういうのはダテさん。やはり脳波信号を使ってるのであった。

 「おう、そうしてくれ」

 「この前、試作段階の奴見ましたけど、相当のデカさですよ? この部屋ぐらいはある代物で……」

 「どうにか小型化してこの部屋ぐらいの乗り物に乗るぐらいにしねぇとなぁ」

 信長はやれやれ、我ながらすげぇもん作ったモンだと背伸びをして答える。

 ボキボキと背中や関節から音が鳴る。御年66歳。平均寿命が既に一四〇歳となり見た目年齢×二倍の法則が適用されているとはいえ長時間の会議は誰でも疲れるものである。


 余談だが、皇紀一七二七年(西暦一〇六七年)に平均寿命一二〇歳で、皇紀二二六〇年(西暦一六〇〇年)で平均年齢一四〇歳であるが、五〇〇年以上経過しても平均寿命が20歳ほどしか上昇してないのは、人間の限界とも言えていた。一〇〇歳を超えると徐々に老け始めて一四〇歳辺りになると八〇歳ほどの外見となり老衰を迎えるのであった。


 まぁそんな訳で数十年後、いわゆる蒸気機関とされる超小型化した長曾我部機関を搭載した、レールを走らない機関車のような装甲車が完成するのであった。小型化事態はほんの二・三年程度でできたが、瑞穂星の技術での小型化に予想以上の年月がかかってしまったのであった。

 効果は絶大であるものの、車輪を大砲で狙われると大破の危険性はあり、水平射撃に特化した大砲……こちら側に言わせれば対戦車砲……の開発により、突破用装甲車の効果は半減してしまった。

 ここで装甲の研究に入るかと思われたが、なんと皇紀二二八二年(西暦一六二二年)に建御名方神タケミナカタ計画は終了してしまった。

 そもそも皇紀二二八〇年(西暦一六二〇年)にフリントロック式がやっと出た現状、これ以上の模索は脱線する可能性があるとして模索研究は中止される事となる。

 信長本人も「機関銃が登場しちまったら、いやそれ以前に鉄や物資の大量生産が始まったらその人口変動と経済変動が現状では全く予想が付かない。幸い火打石式の銃がどうにかでてきた以上、俺の理論は大体あっていた事になるが、かなり行き詰まりになってきた感じがある。そんな訳で計画はここでおしまい。後は瑞穂星がどこまで俺の予想通り効率化してくれるかにかかってくる」とコメントを残している。


     *    *

 皇紀二二四八年(西暦一五八八年)

 アカマツ宙域 大和星間武士軍 旗艦型戦艦<山城:三六七番艦> 士官専用休息スペース


 「武田提督、こちらでしたか」

 高天乃星の景色が広がる空間に、一人の将官が入室する。

 限りなく黒に近い蒼の長髪をポニーテールにしているのが特徴的な落ち着きのある30代の女性士官である。

 『ああ明智参謀。貴方も休憩か?』

 そう答えるのはソファに座ってPVMCGをいじって大和のニュースを見ている武田提督と呼ばれた女性提督、彼女はダストール系大和人であった。

 「はい、指揮は今三好艦長が行ってます。今の所全艦異常なし。との事です」

 『よろしい。このまま何事もなければいいのだが』

 明智参謀の言葉に武田提督はやや難しい顔をする。

 「正体不明の艦隊は、未知の文明国家のものとする見方が強いです」

 『そうだろうな……』


 事の発端は半年前、このアカマツ宙域を航行中の探索船が何者かに襲撃される事件が発生。

 当初はまたガーグかと思われていたがいささか違っていた。


 現れた何者かは、明らかに陣形を組んだ艦隊であり、国旗らしきものを艦に施されていたからである。その艦の形状からどうやら駆逐艦ないし機動型戦闘艦と思われる編制の艦隊の出現であった。

 すんでの所で付近を航行中のディスカール艦隊が駆けつけると、その艦隊はすぐさま退却してしまったという事件である。


 この事件により大和国は急きょ艦隊を派遣。調査と安全確保を目的として活動を行っていた。


 「あの事件以降、我々がこうして調査の為にここに駐留しておりますが、散発的な出現のみで艦隊レベルでの遭遇はないですが……」

 『まず威力偵察とみていいだろう。最近はその頻度も高くなってきている』

 提督はテーブルにあるコップに入ったコーヒーらしき液体に口を付ける。

 「こんな時、隆景殿が居てくれればよいですが……」

 『彼は交代で今頃は八島の演習場だろう。それに交代で来たお前の同期も優秀と聞いたが?』

 提督のいたずらめいた目に、まぁ確かにと付け加える。

 「確かに上杉殿は私の同期で次席でしたが……隆景殿が守りに秀ていますが、上杉殿は攻めに秀ていると思います。現状は守りなので、むしろ……と言った処です」

 『なるほど。現状においてはお前としては上杉より隆景か……』

 ふふ、と提督は小さく笑う。


 「ところで、先ほどからどのようなニュースを見ているのですか?」

 その反応にちょっと不思議がる明智参謀だが、先ほどから見ているニュースに興味が移る。

 『ん、これか。これは例のハルマ技術発展模索プロジェクトの民間ニュースだ。新しいブラスターの開発が行われて今回の演習で使用されているそうだ』

 「ああ、あの信長の……」

 武田提督の返答に、途端に興味をなくす明智。

 『なんだ、興味ないのか?』

 「ええ、信長氏はあまり好きではありません。主に言動の関係で。主張的にも全面的にまだ未確定な部分も多く、好印象ではないですね……」

 『ははは、なるほど。言わんとしている事はわかる。だが……』


 武田提督が発言しようとした瞬間、緊急の通信が入る。明智参謀と同時である。


 <上杉隊がポイントAX-0067で敵艦隊発見、数200以上!現在交戦中!救援要請が出されています!>

 『了解。全艦に第一種戦闘配置発令。本国に連絡。我不明艦隊と交戦す』

 既に提督と参謀は指揮所へ向けてはじかれたように向かうのであった。


 この戦闘が以後長い時間の間続く戦争状態の幕開けとなるのであった。


     *    *


 皇紀????年(西暦    年)

 瑞穂星 場所不明 時刻不明 どこかの雪深い山脈のように見える。


 「まさか、本当にあるとはな……」

 動物の毛皮から作ったとされる分厚いフード付きコートに身を包んだ東欧人……ロシア人らしく見える。


 「こいつは何なんだ? 明らかにこの世のものじゃないぞ」

 別の西欧人が言う。こちらはロシア系ではなくイギリス系に見える。


 「これが……神のゆりかご……」

 もう一人の東欧人が膝をついて小さな十字架を取り出して神に祈っている。


 「あきらかに人間が作ったものではないのは確かだが……」

 最初のロシア人が言う。


 「問題はこいつをどこに売り込むか、だ」

 イギリス系の男がそう商売の話をしだす。


 「祖国はダメだろう。もはやここを売り渡す事しか考えてない」

 最初のロシア人が憤慨したように話す。


 「確かにそうでしょうが、しかし皇帝にこれを話せば……」

 祈りをささげる男が食い下がる。


 「アメリカなら任せろ。幸いコネならある。確か戦前に売り渡す話があった筈だ」

 イギリス系の男が思い出したように言う。


 「だが、まだここはロシアだ。慎重に話を進めなければ」

 ロシア人がそう釘を刺すように言う。


 「ああ、とにかく作業を始めようぜ」

 イギリス系がそう不敵に笑うと、その<目の前にある物体>に向けて歩みを始める。


     *    *


 「え……これは……」

 いきなり映像が砂嵐になり、雪深い山脈が移りだすという唐突なホラー演出に驚きを隠せない柏木サン。

 右下に『※演出です』と書かれてなければリアルで変な声が出そうになったくらいである。

 だが、これ以後急激な変化を予感させる、そんな映像であった。


 「おっと、もうこんな時間か」

 すっかり見惚れていたが、空腹になったので時間を見たらもうそんな時間なので、キリもいいので一旦休憩する事にする柏木サンであった。

大変遅くなりましたが、どうにかなりました。

戦国編はここで終了で、次回から時代が進みます

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