シモノアの話
皆さんは、うさぎのカップケーキフェスティバルを知っていますか。
そこには、たくさんのうさぎのカップケーキ職人が集まりコンテストをするのです。色んなカップケーキのお店が並びそれぞれ自慢のカップケーキを審査員やお客様に紹介し食べてもらうのです。
優勝者には、素敵なものがもらえると言われています。
フェスティバルの最後には、コンテスト出場者たちが作り上げた最高のカップケーキをみんなで食べるのです。
フェスティバルに行けるのは、招待状をもらったたった一人しか参加出来ないのです。
フェスティバルは、うさぎの国では一年ごとと言われていますが人間の月日で表すと五年に一度なのでした。そんな素晴らしいフェスティバルに招待されたカップケーキが大好きな小さな女の子パティのお話です。
「パパ!パーパー!」小さな女の子パティが元気な声でお父さんのシモノアを呼んでいました。
シモノアは、町でも有名なカップケーキ職人でした。小さな女の子パティはシモノアが大好きです。
「パティ、今新作のカップケーキを作っているよ。食べてみるかい?」シモノアが作るカップケーキは、美味しいのはもちろんですが幸せをくれるような暖かいものでした。
「パパ、あまりカップケーキばかり食べているとご飯が食べられなくなるわよ。」母のリアは、いつも暖かく二人を見守っています。
「ママ!パパのカップケーキならずっと食べれる!誰にも負けないよ!」シモノアは、照れながらカップケーキを頬張るパティの頭を撫でました。
「パティは、本当パパのカップケーキがすきね。ママもパパのカップケーキが大好きよ。」三人は、仲良く幸せに暮らしていました。町で有名なシモノアのカップケーキは、毎日大忙しです。リアもパティもシモノアを手伝い幸せなカップケーキ店としても有名でした。
シモノアは、いつもパティが眠る前にいつも同じ話をするのでした。
「パパ。またあのお話が聞きたい。うさぎのカップケーキフェスティバル!」パティは、ベッドの上を跳ねながらシモノアにお願いをしていました。
「パティは好きだな。じゃあ、カップケーキフェスティバルに招待された時のことを話そうか。」
「うん!」
「まだ、店もなくて見習いだった頃の話だ。どうしてもうまく出来なくて本当に悩んでいたんだ。そんな気持ちがどんどん強くなってしまって作ることを辞めてしまおうか悩んでいた時に家に帰ったら手紙が置いてあったんだ。」シモノアは、懐かしそうに遠くを見つめました。
「手紙?うさぎからなの?」
「そう。うさぎからだった。うさぎからなんてびっくりしてね。誰に話しても信じてもらえないと思ったんだ。」パティは、シモノアに抱きつきました。
「うさぎさんは、パパのこと好きなんだよ!」
「パパもうさぎ達のことが好きだしママやパティが大好きだ。今じゃうさぎ達のおかげで有名になれた。やっと作りたいものが出来たんだ。」シモノアの目には涙がありました。辛かった見習いの時を思い出したのです。
「うさぎさんは、パパになんて書いたの?」
「招待状にはね、場所や時間は書いてなくて迎えにくるしか書いていなかったんだ。いつ来るかもわからず待ち続けて四日後の夜になって部屋に入るとあちこちにカップケーキが置いてあったんだ。色んなカップケーキに見たことないものまであって感動していたらごそごそとうさぎの耳がついたカップケーキが動いたんだ。」
「カップケーキのうさぎさん!」
パティは、シモノアの話に夢中でした。
「そう、迎えにきたのはカップケーキに入ったうさぎでね。凄く小さくて可愛らしく元気なうさぎだった。名前は、フルミル。フルミルは、私にお辞儀をしてフェスティバル会場まで連れて行ってくれたんだ。行くときにあるはずもない洞窟があってびっくりしたのを覚えてるよ。うさぎ達は元気かなあ。」
「パティも招待状貰えるかな。」パティは、シモノアに質問しました。シモノアは笑顔でパティを抱きしめました。
「パティの所に絶対くるよ。うさぎ達に言ってたからね。」
「本当⁉パパ!」パティは、立ち上がりベッドを飛び回ります。
「ああ。きっと今頃準備をしてるだろう。楽しみだねパティ。」
「うん。パティもカップケーキ職人になる!」パティの言葉にシモノアは嬉しく幸せだと実感しました。パティは、はしゃぎすぎたせいか目が閉じていきます。
「パティ、ゆっくりお休み。フルミルがパティを迎えにくるよ。」シモノアは、パティの頭を撫で眠りについたパティを起こさないよう部屋を後にしました。
パティは、深い眠りにつきました。
誰もいないパティの部屋に小さなうさぎの耳がついたカップケーキがごそごそと動きます。
「んー。よいしょ。シモノアが元気で良かった。この子がパティか。シモノアによく似ている。もう少しで招待状が届くから待っててね。」うさぎのカップケーキのフルミルは、パティの頭を撫で元の世界へ戻っていきました。
これから起こることは、パティ知りません。
パティは、どんどん大きくなりカップケーキを作るようになった頃思いもよらぬことになってしまったのです。