冒険者ギルドへ…いけない(挿絵あり)
「うわ…すごい人だな…」
カイリが外に出てまず目にしたのは、この街のメインストリートだ。
何百人もの人がひっきりなしに行き交っている。
その中には商人が御者をしている荷馬車もあったり、騎士風の鎧を見にまとっている人、ファンタジー小説で見たような冒険者風の男や女…ぼろぼろな格好をした物乞いまで様々な人がいた。
その光景に圧倒されながらも、カイリは冒険者ギルドへと向かおうと…
―ぎゅるるる
した時、おなかの虫がなった。
「…そういえば朝から何も食べてなかったな」
食事をしようかな、なんて考えていた時、カイリは衝撃の事実に気付く。
「金が…ない」
そう、この世界の通貨をカイリは持っていなかったのだ。
これは紛れもないピンチだ。
だがその時、あの携帯がブルった。
「なんだ…って、アレンか?」
―メール(返信不可)―
―そろそろ飯が無いとか騒ぎ出す頃かと思って仕掛けておいたぞ―
―お前のあの財布に帝都の通貨で20000ジェリム入れておいた。これは貸だと思うなよ?お前はこれから課金して、ガチャをもっと回すことだけ考えておけばいい。あと、お前がガチャった金は、俺の懐へと入るからな。安心して課金して、破産してくれ。byアレン―
「あいつ…ま、でもありがたい。受け取っておくか」
なんだかいろいろ突っ込むのがめんどくさくなったカイリは財布からこの国の通貨である20000ジェリムを取り出した。入っていた貨幣は日本とあまり変わらないらしく、いろいろな貨幣で…といっても数字は貨幣に書いてあるのだが…そろえてあった。
どれも知らない人の顔やら、なにかの武器やら、紋章やらが掘り込まれている。
「飯でも食べに行こうかな」
カイリは大通りを人の波にのって移動し、飲食店のありそうな方向に勘だけで進んでいった。
宿もあったくらいだ。食事するところもあるだろうというカイリの予想は外れなかった。
喫茶店で、中世っぽい雰囲気の店がそこにあり、看板で大きくこの世界の文字で【セルテア喫茶店】と書いてあった。ハングル文字でも、英語でもないその文字はカイリの異世界言語理解のスキルで翻訳できるのだ。
そこで、慣れないながらも日本で居たように同じように料理を注文したカイリ。
店内はそれほど広くなく、カウンター席10席くらいの狭い…バーのようなところだ。
マスターがカウンター内に居て、カイリの後ろの棚にはお酒やらジュースやらなにやらわからないビン類がたくさん置いてあった。
普通、カウンターのマスターの後ろにあるはずの酒類の棚。
それが客の後ろにあることの違和感にカイリはなぜかファンタジー感がして、少しわくわくしたが…大人っぽいこの店の雰囲気にあてられたのか、少し気取ってみたくなった。
「…軽い食事がしたいので、マスターのおすすめをいただけますか?」
「はい。かしこまりました」
マスターっぽい人が威勢よく返事をし、料理を作り始めた。
そして、カイリは流し目で隣にあったロックグラスを見やる。
その光景は、かなり絵になるものだった。
「君…かなりきれいな顔してるね?」
「え…?あ、ありがとうございます」
ロックグラスを手に取り、ぐいと煽りながら、隣に居た客はカイリに声を掛けた。
その身なりだけなら貴族風のカイゼル髭のおじ様は、かなり酔っぱらっているようだった。
「外見だけなら私のどストライクなんだがなぁ…あぁ…私がもう少し若ければキミを口説いていたよ…!はっはっは」
「またまた…そんな」
「ははっ…綺麗なお嬢さん、いきなりだがこんなうわさは聞いたことがあるかね?」
機嫌がよさそうに笑うそのおじ様。
カイリは真面目に問答を繰り返すのもめんどくさいし、適当でいいと思いながら言葉を返す。
こういう手合いは、流すに限るからだ。
「何をです?」
「最近皇帝がな…命を狙われているらしい。正確には、反逆…だな」
「へぇ、それはそれは…初耳ですね」
「そう…大変なんだ。それで、私はなんと…その皇帝への反逆を目論んでいる大臣が所属している組織の名前を知ってるんだよ」
ぴく、とカイリはその言葉に反応した。
もしその反逆をするというのが本当なら、もう少しでこの街にはいられなくなる可能性が非常に高い。
というより、危険と隣り合わせになる可能性が非常に高い。
情報はあるに越したことはないと思い、カイリは聞き返す。
「へぇ…それは、なんていう組織ですか?おじ様」
「ふふ…それはな…かの有名な…【紅血騎士団】だよ…」
「なんですって!?」
カイリはその騎士団の名前を知らないが、大げさに反応してみせた。
すると、おじ様は殊更上機嫌に笑う。
どうやら、この反応は正解だったようだ。
「私が知っているのはそれだけだがね。本当か嘘かはわからないが。君もこの街の衛兵たちには注意したまえ。前から奴らは下衆な生き物だと思っていたが、ついに地まで堕ちたってことだからね」
「ご丁寧に教えてくださってありがとうございました」
「いや、なに、君みたいな綺麗な子と隣で飲めただけで私は幸せだよ」
ダンディな笑みを浮かべて言うおじ様。
「はは、私でよければいつでもお相手しますよ?おじ様」
「それはいい!今度見かけたときはぜひとも声を掛けてくれたまえ」
そう言って、席を立ったおじ様。
「マスター。今の私はとても機嫌が良い。」
言いつつ、金貨を一枚、マスターに渡して、カイリに向かってウィンクした。
もしかして、とカイリは思う。
「では、ごきげんよう。ハッハッハッハ!」
おじ様は笑いながら、素早く店を出てしまった。
「マスター…もしかして」
「はい。あの方は今、あなたの分もお支払しました。なので、お代は結構でございますよ」
あちゃあ、とカイリは思うが、後の祭りだ。
カイリが彼に恩を返す日は、来るのだろうか。
―――――
「…ふぅ…やっちゃった…罪悪感が半端なくあるんですが…それは…」
カイリは一人ごとを呟き、歩き出した。
そこであることに気付く。
「あー!!マスターに冒険者ギルドの場所…聞けばよかった…!!」
そう、ギルドの場所がわからないのだ。
先ほどの雰囲気の良い店に戻るのも気が引ける。
間抜け面さらして聞くなんて、あれほどの事があった手前戻ることなんて論外だ。
「…こっち…だな!なに、帰り道だけ覚えてればいいし!」
カイリが城壁で区切られている区画を抜けると、そこは貴族街のような場所だった。
前にテレビで見たヨーロッパ特集…そこで見たような豪邸が立ち並んでいるのだ。
「あ、こっちじゃないな」
道を進んだところで、こっちにはないな、と思ったその瞬間
「待て!この不審者め!ここをどこだと思っている!王族の方々がいらっしゃる区画だぞ!一般人は立ち入り禁止だ!」
「へ、あ、す、すみません!」
カイリは騎士風の鎧を着こんだ…この街を警備している衛兵の一人につかまってしまった。
衛兵はカイリを見て、一瞬だが好色そうな下品な顔になった。
それをカイリは見逃さない。
これは…と思うが、時すでに遅し。
「…貴様…怪しい身なりだな…王族の方々にはお前のような者はいない!さては最近巷を騒がせている暗殺者だな!」
「ち、違います!人違いだ!」
「おとなしくしろ!お前を牢屋にぶち込んでやる!」
「人違いだって、言ってんだろぉぉおおおお!?」
あっと言う間に拘束されるカイリ。
そして、衛兵が言った言葉にカイリは耳を疑った。
「お前…やっぱりいい匂いするな…」
「ひぃ!?なにこの人!マジキモイんですけどおおおお!?」
「地下牢にお前を閉じ込めて…ぐふふ」
「衛兵マジやべええええええええ!?」
凶運が、加速する。
個人名:カイリ
種族:人族
レベル:1
体力:10
魔力:1
STR:10
DEF:10
TEC:11
SPD:11
INT:0
RES:0
LUK:-
所持SP:0
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・ランク:- 【最高神】アレン
※挿絵は借り物で、あくまでイメージ画像です。
ジュエルセイバーFREE
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