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大人の事情

「なんか見るからにやばそうなものを引いちまったんですけど!?しかも、SSRだと?」


俺は思う。これは何かの罠か、と。


「SSRって言ったら、最高レアのアレだよね!?アレなレアだよね!?ゆ、夢じゃなかろうか…!?」


これ以上ない位の喜びが、俺の頭の中を支配する。

何度見ても、表示は変わらない。

確かに俺の手の中の携帯電話には、「SSR」という文字が表示されていた。


「やった…!前の人生はロクなものじゃなかったけれど…今日、この時から俺は勝ち組になったんだ…!!」


拳に自然と力が入る。

SSR。それは、白井が言った通り、最高のレア度を誇る、最強のスキルだ。


「……手に入れたからには…使いたいよね…?」


俺がどれほどのモノを手にしたかもう知りたくて知りたくてしょうがない。

幸い、魔力0でも召喚できそうな表記なので、さっそくやってみることにした。

俺が【英霊召喚】と思い浮かべると、瞬時に効果は表れた。

俺より一メートル先くらいの場所に魔法陣っぽいものが出現したのだ。

それは幾何学的な模様で、六芒星などの見たことのあるような陣ではない。

もっと複雑で、難解で、どこか神々しいものも秘めた魔法陣であった。


「す…すごいな…」


たかが地面に描かれた魔法陣一つ。だが、俺に感嘆の声を出させるほどの何かがそこにはあったのだ。

そして、魔法陣が出現して数瞬。

異変は突然起こった。


「伏せろカイリ!!」


姿のない声がしたと思ったとき、異様な気配を感じ取ったので俺はすぐさましゃがみこむ。

ズシャ!という生々しい音。それは確かに肉を切った音だと感じた。

『ガアァァア!!』

後ろからトラのような猛獣の鳴き声が聞こえたので、俺は思わず前方へとジャンプし…しりもちをついてしまった。

反射的に振り返った俺は……見た。




見てしまった。





「よう。さっき振りだな?カイリ」




不敵な笑みを浮かべている…白井がそこに立っていた。

彼の二倍はあるであろうトラを片足で押さえつけながら。


「おおおおおおおお、おま、お前…!し、白井…!?」

「ああ?そうだが?…だが、ひとつ言っとくぞカイリ?…今はアレンだ」


よっ、という掛け声とともに彼は蒼く輝く剣をどこからともなく取り出し…突き立てた。

『ガアアア!!』

痛みにもがくトラ。

初めのうちは大量に出血していたが、段々とそれが弱まっていく。

よく見ると、傷口が緑色の光に覆われていて、だんだんと回復しているようだった。


「…ちっ…やっぱり魔力0ならこんなものか…魔獅子すら一撃じゃないとか……。おいカイリ。状況が呑み込めてないような顔をしているが、まず動け」

いきなり俺の名を呼ばれ、どこかに行ってしまっていた意識を取り戻した俺は、瞬時に立ち上がった。

「どどどどうすればいいんだよ!?これ!?」

「どうするっつったってなぁ…?早くこいつの頭でもなんでもいいから蹴り飛ばしてくれ。そうすればあとは俺がなんとかできるから」

「な…!?できるわけ…」

「できないのか?なら、二人とも死ぬだけだぞ?」


その嫌に現実味を帯びた白井…今はアレンと名乗っているのか?

まぁ、そのアレンが言った言葉に俺は現実に引き戻された。


やらなきゃ、こっちがやられてしまうのだ。


「だけど…」

「あぁ…悪いなカイリ早くしてくれ。時間がもったいないだろ?いいからこいつの注意を俺から一瞬だけ放せ。そうすりゃあとは楽なんだから」


どこまでも淡々と言うアレン。

その額にはかすかに汗がにじんでいた。


「…くっ…」


覚悟を決めた俺は…

トラの頭を…蹴っ飛ばした。

―ゴッ!

鈍い音が靴を通して伝わってくるが、トラはなんでもないことのように頭を振りかぶり、こちらを睨みつけた。


「ひっ…!」

「よくやった。カイリ」




―ズバン!!!




小気味の良い音と共にトラの頭が吹き飛んだ。


「……」

「おいカイリ?どうした?」

「………」

「って…気絶してるな…はぁ、参ったな…近くの町に運んでやるとするかな」


気絶してしまったカイリを背負って、アレンは歩き出した。

彼の後方に見えたトラは徐々に光の粒子へと変わっていった。

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