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関所にて

 翌日、ケルティアとの国境まで徒歩で移動し、ようやく辿り着くと関所付近は異様な雰囲気に包まれていた。

 数百名前後の赤と白のセントラル帝国の鎧を纏った兵士たちが整列していたのだ。

 指揮官らしき者が、兵士たちの先頭に立って、声を掛けていた。

「セントラル帝国所属、ケルティア国境警備隊――揃ったかっ!」

「「「はっ!!」」」

「今朝の第一報により、帝都は紅血騎士団の襲撃を受けたという! 皇帝陛下は消息不明、その跡継ぎ様も同時に失踪してしまったらしい!」

 指揮官の言葉に、無言ながらも顔色を蒼くするものがすべてだった。

「しかし! 我々は紅血騎士団所属ではない! 我々は皇帝陛下に仕える誇り高き帝国市民である! ……おそらく、皇帝陛下は周辺領土に居られる領主様方が騎士団の影響を受けているだろう、と考え国境を越えて、ケルティア国へ亡命される為に、こちらへ向かってくるだろうと考えられる! そこで、我々は皇帝陛下を保護し、隣国に渡られる前に、皇帝陛下を紅血騎士団の息のかかっていない領主の元へお連れする義務があるだろう! 隣国へ亡命など、皇帝陛下がされるものではない! 近隣領主様と手を組み、悪しき騎士団を帝都から追放し、皇帝陛下の世を取り戻すのだっ!!」

「「「オォォォォオオオオ!!」」」

 長々とした指揮官の大演説の後、セントラル帝国の兵士たちは軒並み士気を高めていた。

「なんと、これほどまでに優秀な指揮官が居たとは……」

 ルゼルノは指揮官をしている男を見て、そうつぶやいていた。

「それで、どうしますか? 陛下。ケルティアへ亡命するのは取りやめて、彼らに保護してもらった方がよさそうですけど……」

「主様の言う通りじゃ。父上。彼らに保護してもらった方が良いと思うが……」

 カイリとシオンがルゼルノの耳元で囁くと、追従して、ミランダも同意の声を漏らした。

 一瞬の逡巡のあと、ルゼルノは意を決したようにすぐさま立ち上がり、隠れていた茂みの中から街道のど真ん中へと躍り出た。それに合わせて、ミランダとカイリとシオンも後をついていく。

 それがちょうど、進軍を始めた指揮官の目の前に現れる形となった。

 いきなり現れた皇帝の姿に、指揮官の男は目を丸くする。

「私はこの通り無事であるぞ! 安堵せよ、国境警備隊の者達よ!」

「こここ、皇帝陛下っ!?」

 先ほどまでの勇猛な指揮官が、あわてて馬を降りると、後ろに追従していた兵士たちもすぐさま馬を降りた。

「本当に皇帝陛下だっ!」

「御無事だったのかっ!」

 ルゼルノの無事を確認すると、安堵からか泣き出すものまでいる始末。

「この状況でよく正確な情報を得て、私をよく探そうと考えたな、警備隊の指揮官よ。帝都でさえ、お主のように的確に行動できるものは少なかったぞ」

「お、お褒めに預かり、光栄にございます! 陛下!」

「うむ。そなた、名をなんという」

「はっ、私は国境警備隊隊長を務めさせていただいております、ガレイアス・フェイレンと申します!」

「おぉ、フェイレン家の者であったか……! これは何たる幸運かっ」

 その名を聞いて喜ぶルゼルノの姿に、カイリはひそひそとシオンに話しかける。

「なぁ、フェイレン家ってすごいのか?」

「すごいも何も、この近くにある街の領主がフェイレン家の長、フェニグトス・フェイレンなのじゃ――それにしても、運命とは不思議なものよ。最高神様が我々を導いてくださっているのかや?」

 はは、とカイリは半笑いを浮かべた。

 その可能性は否定できないな、と思ったからだ。

 あの白井、もとい、アレンならやりかねない。


 その後の話しはトントン拍子で面白いように進んだ。

 皇帝陛下の捜索をしようと思ったら、その張本人が居たのだから当然の事だろう。

 シオンも皇女殿下と呼ばれ、慣れないながらも指揮官と話していた。

「そういえば、そちらの御仁は……?」

「私はカイリ・アマツミ。レティシオン皇女殿下の騎士です」

「お、おぉ……あなた様が殿下の騎士様であられましたか。ご無礼をいたしました。お許しください」

「良いのじゃ。ガレイアス殿。初対面であれば無理はない。それよりも今後の身の振り方じゃが――」

 などと言うやりとりを交わしたカイリは、名実ともにシオンの騎士として周囲に認知されていった。


 皇帝と警備隊隊長の話が終わり、少しの間時間が出来たカイリとシオン、ミランダは関所に女性用の更衣室があったのでそれを利用することにした。

 カイリは皇后様と同じ場所で着替える訳にはいかないと断ろうとしたのだが、シオンとミランダに無理やり更衣室へと連れて行かれたのだ。

「カイリちゃんってお肌綺麗よね……四十過ぎのおばさんには羨ましいわ」

「えっ、あ、ちょ……ひゃっ、や、やめてください皇后様」

 着替えようと脱いだカイリの肌を見て、いきなり人が変わったようにはしゃぎだしたミランダに、カイリは驚きを隠せなかった。

「母上! わっちのカイリを取らないでくりゃれっ」

「ちょ、シオンまで、おい、さらしは取るなって――あぁっ///」

「いいじゃない、カイリちゃん。さらしも交換しましょ……あらあら、顔はこんなに綺麗なのに、体はすっごいわがままボディね。どれどれ……」

「ひっ、皇后様!? 目がヤバイですって、ちょ、ちょまっ」

 じりじりとにじり寄ってくるミランダ。

「わ、わっちも主様の身体――触りたい!」

 完全に目がイってるシオン。

 両方を見て、カイリは悟る。

(あ、これ――ダメなパターン)

 三人は馬鹿騒ぎを起こしながら、束の間の休息を楽しんだ。

 カイリは休息どころの話ではなかったが。


 そして、その日の昼を過ぎ、ようやくフェイレン家の領地へ向かう準備が整った。

 馬を使って移動するという話を聞き、乗馬経験など無いカイリは青ざめるが、今日の分のガチャをしたらパッシブスキル【馬術】LV1を習得したので、なんとか最低限は乗れるようになった。

 シオンは服を着替え、女性士官用の装備を身に着けていた。シオンも乗馬の経験がなかったため、カイリが馬に乗れると聞き、喜んでカイリの後ろに乗った。

「主様のサポートは任せてくりゃれ!」

「あ、ああ。頼むな。シオン」

 魔法を使えるとはいえ、皇女殿下を後ろに乗せる騎士ってのはどうなんだ? とガレイアスは独り呟くが、その呟きは誰にも聞こえることはなかった。

 ルゼルノもボロボロだった衣服を着替えて、指揮官よりも少し豪華に見せたマントを羽織り、皇帝の威厳を醸し出している。

「それでは、行軍する! いつ、どこで紅血騎士団の輩が襲ってくるとも限らん! 周囲の警戒は怠るな!」

「「「はっ!!」」」

 軍の先頭を率いるはガレイアス警備隊長だ。警備隊の半分は国境に残してある。これは国境に紅血騎士団が来ても不審に思われないようにするためだ。

 隊長の後ろに皇帝陛下とミランダの乗った馬車、その周りにカイリと兵士達、といった配置だ。

(馬って初めて乗ってみたけど、なんか面白いなっ!)

 初めての乗馬体験にテンションを上げながらも、カイリは周辺の監視を忘れない。

 こうして、フェイレン家の領地、『フェレス』へ一行は向かうのだった。

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