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ガラルドという男

帝都【セントラル】。

ここは名前の通り帝都…すなわち、皇帝がいる都だ。

居城はまさしく豪奢という言葉がふさわしいであろう外観である。

だが、そんな豪奢な外観にはそぐわぬ、物騒な噂がこの頃帝都内では飛び交っていた。

内容はまさしく、皇帝の忠臣であるガラルド・ハイペンタス卿が反乱を企てている…というものだ。

もちろん、噂であるが故にガラルドという名前までが吹聴されている訳ではない。

名前は伏せられ、どうやら皇帝陛下の臣下の間で、反乱の気運が高まっている…という内容の噂なのだが、この噂はもちろん、皇帝の耳にも届いていた。


場所は、帝都セントラルの皇帝の居城。

ガラルドの私室に近くの廊下で、それは起こっていた。


「ガラルド卿!紅血騎士団が皇帝陛下に対し、反乱を企てているという噂を(それがし)は耳にしたぞ!?一体どういうことなのだ!?」

「…はて、私はまったく存じ上げませぬぞ?イスラ卿。初耳ですな?」


やはり来たか、とガラルドは思うが、仕方のないことか、とも思う。

ガラルドの目の前にいるこの男は、【紅血騎士団】…いわゆる帝都衛兵隊を直轄している大臣である。

騎士団を統括しているイスラ・ベンジャミン…といえば聞こえはいいが、実際はそのような器ではない。

衛兵隊を実際に指揮し、動かしているのは衛兵隊長…騎士団長のテノル指揮官である。

要するに、目の前の男はお飾りの大臣なのだ。

顔がよく、少しばかり頭が切れるだけの、私腹を肥やすことに一生懸命なただの豚…という認識でやはり間違いないとガラルドは思う。

どうせ、今回の一件を聞きつけて追及しに来たに決まっているからだ。

あわよくば一儲けしてやろうという下衆のにおいがしたので、ガラルドは顔を顰める。


「だが、帝都市民がそう言っているのだぞ…?これは帝都市民たちからの信頼を無くす噂だ!火のないところに煙はたたん…!ガラルド卿…白状するのだ!某の騎士団に一体何を吹き込んだ!ことと次第によっては皇帝陛下に報告するのもやむを得んだろうな!」


やれやれ…とガラルドは思う。

まさか、反乱の決行日にこんなことになろうとは微塵も思っていなかっただけに腹が立った。


腹が立って、腹が立って。


「それは…なんのつもりだ!?ひ、ひぃいいい!やめ」


―ザシュ!


イスラの首を飛ばしてしまった。

冗談のように噴き出る血潮。

周りを真っ赤に染めていく。


「…うるさいんだよ…豚が。私は…今日これよりこの国の皇帝となるのだ…こんなところで躓くわけにはいかんのだよ」


かつかつ、と軽快に歩を進めていくガラルドの手には、イスラの首があった。

バン!と庭園へとつながる門を開けるとそこには


「ガラルド卿…いえ、皇帝陛下。ご命令を」


数百名を超える紅血騎士団の面々が野望の色をたたえた目をして、立っていた。

ガラルドに指示を仰いだのは、ほかの誰でもない。帝都が誇る最大規模の騎士団…【紅血騎士団】…テノル・ライザック騎士団長であった。


「それでは行くぞ…わが忠臣たちよ。…復讐の時は、きたれり」


―――――


場所は変わり、帝都地下牢内。


「離せ…!こら、変なとこ触るなよっ!キモイんだよおおお!」

「ぐふ…ぐふふっ…男言葉なところもそそるな…ほら、ここに入ってろよ?お嬢ちゃん…勤務時間が終わったら、たぁあっぷり遊ぼう…ね?」


にたぁ…と笑って言う衛兵。

カイリはその衛兵の言葉を聞いた瞬間、鳥肌が止まらなくなった。


(キモイキモイキモイキモイキモイィィィィィイ…)


―バタン!


と地下牢の扉が閉められ、ついにカイリは閉じ込められてしまった。


「え?嘘っ!本当に閉じ込められちゃったぞ!?」


ウソだろ、とカイリは思うが、もはや後の祭りだ。


「まだホテル二泊できたのに…!?こんなところで拉致監禁されるなんて、運が悪いにも程があるだろ!?」


目隠しに手かせまでされていたカイリはなんとかして目隠しをとることに成功した、


「…うぇぇっ…汚いなぁ…」


石造りのシンプルな牢獄…まさにファンタジーの地下牢を思い起こさせるつくりだ。

寝床であろうわらが敷いてあるだけの部屋。


「こんなところで待ってろって?しかも、キモイおっさんに犯されるのを待て、と?」


冗談ではない。


「冗談じゃないぞ!?何としてでも脱出しないと…!」


カイリが大声を上げたその時、


―ドゴォォオォオオオォオン!


という爆音が遠くで聞こえた。


「ひっ!?なんだ?」


思わず身構えたカイリは窓の外を見ようとするが…天高くにある鉄格子の窓までは身長が足りなく、見ることができなかった。


「……逃げなきゃ。なんかわけわかんないことに巻き込まれる前に逃げないと…!」


不審な男に拉致監禁されたうえ、何かが爆発したような異常な事態。

もうすでにいろいろ手遅れな気がしているカイリだったが、逃げることをまだあきらめてはいない。

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