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続・夏とバレンタインの話

作者: 氷川変電所

はい、バレンタインのチョコ

「えっ、あ…!ほぇえ!ありがとう!」

なに変な声出してんのよ

「だって、びっくりするじゃんか」

半年くらい前から待ち望んでたんじゃないの?

「ん?何のこと?」

覚えてないの…?

「覚えてるって?」

はぁ…もういいからはやく仕舞っときなさい

「えーだってこんなん作れたんだーって思って」

さりげなく失礼ね

「しかもまさかもらえるとは思ってなかったから」

よかったね

「昨日までは覚えてたはずなんだけどなぁ」

本当に忘れてたのね…

「へぇ…でもすごいなぁこれ」

いつまで見てるのよ

「女の子っていつこういうこと覚えるんだろう」

男の子には一生わからないでしょうね

「でも感心しちゃうなぁ」

大したものでもないから…

「これ全部食べられるんでしょ?」

当たり前じゃない。なんで食べられないお菓子をわざわざ作って渡すのよ

「あはは、それもそうか」

あなた急に元気ね

「そりゃそうだよ!チョコもらってうれしくないヤツなんていないってマツジュンも言ってたじゃない!」

知らないわよ

「バレンタイン楽しい!!」

はぁ…よかったわね

「冬も悪くないもんだなぁ!」

早く暖かくなってくれないかな…

「冬にこういうイベントが多い理由がなんとなくわかってきたぞ」

またその話…?

「きっと冬は寒さで出不精になるからこういうイベントでもないと人が外に出ない、お金を使わない、経済が滞る、日本たいへんなことになる。ほら」

なにが『ほら』よ

「だからこの季節の楽しみ方はこういうことだよ。出不精になることは許されたものとして普段はお家でぬくぬくと過ごす。そしたら気付けばイベントが近づく。それに応じて時々外に出てこうやって楽しいことをする。このある種の波動のような恰好をとった…」

はいはいもういいから

「しかしあれだな。気付いた頃にはもう冬も終わりに差し掛かってるのか」

ま、気付けただけよかったんじゃないの

「次の冬はきっと有意義になるぞ…」

私は夏の方がまだ落ち着いてる気がするけど

「夏なんてみんな暑さに浮かれて思考も散漫になる。よくない」

あなたずっと家で涼んでるだけじゃない

「それもそうだけど」

結局どの季節も出不精には変わりないじゃない

「そんなことはない。春には桜の花びらの儚げな色相を夢に見るし秋には…」

やっぱ家で寝てるだけじゃない

「ツッコミが早いよぉ」

ツッコまなかったら延々話し続けるじゃないの

「とにかく僕は冬を見直した」

そう

「チョコは帰ってから食べるでいい?」

うん、お店で食べるのもあれだし

「感想はまた今度のイベントで」

はいはい

「でも次のイベントって何だ…?」

ふふっ…あーあ、夏が来ないかなー…

「…七夕か!」

なんでやねんっ


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