新たなる始まり
「ぼ、僕があああ!?」
卒業式から一ヶ月後。貼り出された紙を見て七菜が絶叫していた。
「どうしたんだ?」
書類を運んでいた緋が不思議がる。
「僕が……僕が生徒会長!?」
「へー、良かったじゃん。生徒を引っ張っていかないとな」
「まさか選ばれるなんて思ってもみなかった!」
「不安か?」
「僕に務まるかどうか……。破耶先輩のような、皆が付いてきてくれる会長になれるのか……」
「らしくないぜ。いつも通りの七菜で居ればいいんだよ」
「いつもの僕、か」
「それに愛生ちゃんだっている。漢も一緒だ。協力して乗り越えればいい」
「まったく、頼もしくなったな」
「光栄だぜ」
緋と七菜が生徒会室に着くと、入口で生徒が待っていた。
「うん? そのリボンの色は新入生か?」
緋が訊く。
「はい! 高校説明会のときから是非、生徒会に入りたいと思っていました!」
制服を着ているというより、制服に着せられていると言ったほうがしっくりくる、幼さが残る女子生徒の目は期待と不安を覗かせている。
「そいつは助かるぜ。ちょうど生徒会長に選ばれてテンパってるのが居るからよ」
「うるさいぞ!」
七菜が顔を赤くする。
「ふふっ!」
女子生徒が小さく笑う。
「何か可笑しかったかい!?」
七菜が慌てる。
「あ、ごめんなさい! 悪気はなかったのですが、お二人を見ていたら可笑しくて」
「良かったじゃんか、漢達の話を聞いて笑ってくれる後輩が来てくれてよ!」
「何か複雑さ」
「何はともあれ、ようこそ生徒会へ。漢は三年の紅蓮緋だ」
「同じく三年で生徒会長の矢吹七菜さ。よろしくね」
「私は一年の天道灯可里です! 足手まといだとは思いますが、精一杯頑張ります! よろしくお願いします!」
腰まで伸びた黒髪を時折直しながら、恥ずかしそうに挨拶をした。
※ ※ ※
「ここの筈だよ」
「結構、立派な高校かな」
「上手く会えるかな~」
正門前に他校の制服を着た者達が居た。
「ありゃ?」
緋と七菜が正門に向かうと、その者達に気付く。
「美岬に偵徒……それに海乃さんまで!?」
七菜は驚く。
「いきなり来てしまってすまないな、矢吹。私が大学終わりに二人を誘ってみたんだ」
「二人の最上級生ぷりを見に来たよ」
「ボク達もだけどね~」
「まあ、何だっていいぜ。こうして久し振りに会えたんだからな!」
「これから皆で行くのかい?」
七菜が訊く。
「二人さえ良ければだけどね」
「勿論さ、美岬」
「その誘い、乗ったぜ」
「決まりだね! 行こ行こ!」
美岬がはしゃぐ。
「それでは行こう」
海乃が歩き出す。
「行こうぜ、七菜。お前は生徒会長であるまえに、一人の女の子で……野球部主将で……漢の大切な彼女だぜ」
「まったく。緋、君の彼女になれて僕は幸せさ」
緋が差し出した手を七菜はしっかり掴んだ。




