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バージョンアップ

 年が明けて、冬休みが終わった。


「緋、ちょっと手伝ってくれ!」


 破耶が緋の教室に来た。


「どうしたんすか!? わざわざ」


「卒業式の準備に人手が欲しくてな。一年から何人か声をかけておるのだ」


オレは構わないッスけど……」


「なら、ついてきてくれ」


 破耶が早歩きで廊下を突き進んでいく。


「……オレは何をすれば?」


「とりあえず生徒会室に行こう。卒業式に必要な書類を校長に提出しなければ」


オレが書類を書くんスカ?」


「違う。探してほしいのだ」


「はい?」


 生徒会室に到着する。


「え~と……多分この辺なのだ」


 破耶が部屋のファイルを漁る。


「この辺スね?」


 緋もファイルを漁る。


「生徒会の歴史か……」


「気になるのか? 緋」


「気になるというか……この高校の生徒会は色んな意味で有名だから」


「どういう人が所属していたか気になるか?」


「まあ」


 緋が、開いていたファイルを閉じる。


「今回の目的は書類でしたっすね」


 緋は手前のシークレットファイルを取り出す。


「破耶さん、これっスか?」


「おう! でかしたぞ、緋!」


 破耶が書類に書き込む。


「本当は書類作成は優秀な書記がやるのだが、あいにく書記は三年生でな」


「副書記は居ないんスカ?」


「居るぞ? 宇留田というが、別件で手が放せなくてな」


 破耶が書類を書き上げた。


「校長室に向かうぞ」


「はい」


 踏み出した瞬間、足を躓かせ転んでしまう。


「大丈夫か!? 緋」


「つまずいただけッス」


 緋の視界に一枚の写真が入る。


「生徒会の集合写真?」


「そうなのだ」


「……この、破耶さんの隣に居るのが彼氏っすか?」


 緋が写真に指を指す。


「会いたいか?」


「会えれば会いたいっす」


「今度、会わせてやろう」


 破耶が戸締まりを確認した。


「冬休み前から妙な報告が校長に届いてるみたいだからな。用心に越したことはない」


「卒業式が関係してるとか?」


「分からんのだ」


※ ※ ※


「確かに確認した」


 校長が書類を受け取った。


「校長、その後の報告の件は、どうなっているのだ?」


「何か嫌な予感がするんだよ」


「なんか遭ったんすか?」


「脅迫電話があったんだよ」


「電話?」


「いまは内密にしておきたいのだよ」


「生徒会と校長だけのっすか?」


「そういうわけだ」


 二人は校長室を出た。


「どうしたのだ?」


オレの勘すけど、校長は何かを隠してるっすよ」


「校長が?」


「……さあて……ひと暴れしたいっすね!」


「放課後なら構わん。バージョンアップしたあとは、まだ行ってないからな」


※ ※ ※


「レッド見参!」


「クレナイ、参上!」


「クール……登場」


 三人は、名乗りの練習をしていた。


「なあ、クール。もっとポーズをなんとか出来ないか? 流石に棒立ちじゃよ……」


「僕はポーズをとりたくない」


「折角チームを組んだんだから、名乗りとかポーズは欲しいだろ」


「僕は別に」


「レッド。無理強いは良くないのだ」


「……まあ、今度でもいいか」


 レッドがリストからバイクを呼び出す。


オレが、ずっと持ってるんだが、バイクヒーローじゃないからな。クールにやるぜ」


 レッドがアイテム所有をクールに移した。


「ほら、承認しないとバイクの譲渡が完了しないぜ?」


「現実でも野球帽キャップとボールを貰ったばかりなのに、ゲームの中とはいえ、バイクを貰うなんて……」


オレは、クールに貰ってほしいんだ」


「良いのか?」


「ああ!」


 レッドが親指を立てた。


「……ありがとう」


「クールもバージョンアップを果たしたな!」


 ピピピッと音が鳴る。


「この音は……レイドだアアア!」


「早速だが、クールはレッドを乗せてバイクで走るのだ!」


「分かった」


 レッドとクールはバイクに乗った。


「クレナイさんは!?」


「案ずるな、行け!」


 クレナイの合図でバイクは走り出した。


「現れたな!」


 クレナイの前に現れたのは、大きな翼を羽ばたかせるモンスターだった。

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