ワープ社からの依頼/新天地は異国街
「よう。待ったか?」
緋がリュックを背負って到着した。
「必要な物は用意すると言った筈だけど」
キイラが半ば呆れた様子で言った。
「で、空港に行くんだろ?」
「空港までは車で行くの。今こっちに向かってると連絡があったわ」
「うーん。来るまで暇だぜ」
「……今のは洒落のつもり?」
「は?」
「なっ……なんでもないわよ!」
「ふーん。まあいいや」
待ち合わせの広場には、カップルが複数居る。
「ねえ……気にならないの?」
「何が?」
「……周りよ。休日だからカップルだらけ」
「漢には関係ない」
「一応訊くけど……ちゃんと言ってきた?」
「言ってきたぜ。皆、背中を押してくれた」
「今日も言ってきた?」
「いや、伝えたい人達には言ってあるし」
「バカじゃないの!? そういう問題じゃないのよ!」
キイラがジタバタする。
「どうしたんだよ!?」
「いい! よく聞きなさい! いくら声が聞けても、いくら姿が見れても、傍に居ることには敵わないの!」
「……?」
「ましてや半年間よ。傍に居てほしくても叶わない事が女の子にとってどんなに辛いか分かって?」
「……おっ、おい!? ……大丈夫か」
ポロポロ涙を流すキイラに、緋は動揺する。
「……いますぐに……七菜ちゃんに連絡しなさい!」
「……わ、わかった……」
緋は混乱しながらも七菜に電話する。
「……もしもし……七菜?」
【……】
「返事してくれよ」
【……ばか。発つ日に連絡を寄越すなんて……らしくないこと……余計さ】
七菜の声が涙声になっている。
「キイラが五月蝿くてな。悪い」
【……ううん。嬉しい】
車のクラクションが鳴る。
「迎えが来たから切るぜ」
【そうかい。……応援している!】
「励みになるぜ! ……んじゃ、行ってくる」
緋が電話を切った。
「もういいのか」
助手席から札哉が言う。
「準備万端だぜ」
「それじゃ行きましょう!」
車が空港に向かった。
※ ※ ※
3日後。
「ナンダ……ッテ?」
【%#¥*@℃≦○£@】
「ワタシ。エイゴ、ワッカリッマセーン」
緋が受話器を片手に固まっている。
「お馬鹿!!」
事務所に入ってくるなり、キイラが受話器を奪い取る。
「Hello。……」
(だめだ。キイラが何言ってるのか解んない)
「……O.K.」
キイラが受話器を置いた。
「え~と……何て?」
緋が恐る恐る訊く。
「ここがワープ社の新作ゲームの要ってのは説明したでしょ? もうプロジェクトは動き出しているから、各担当が色々バタバタしているの。足りないのは意見場だから、このあと事務所で集まれないかって電話よ」
「その間、漢は何をしてれば」
「こっちに来てから時差でなかなか落ち着けなかったんじゃない? 隣にあるカフェで少し身体を落ち着けてきなさいよ」
「……頼み方がわかんない」
「コレ。持っていきなさい」
「同時通訳機か! ありがてえ!」
「緋君。君はワープ社のスペシャルアドバイザーなんだからね。ヨロシクよ?」
キイラはウインクした。
「おう! 頑張るぜ」
緋は気合いをいれた。




