手紙
「ゼヴァを倒したなんてスゲー!」
「闘の初日にゼヴァを見れた、ゼヴァを倒した奴を見た。まるで夢を見ているみたいだ」
「今日は得した!」
ハッチの中でもゲーセンでも、お祭り騒ぎだった。
「……漢……注目されてるのか?」
緋は周りの反応に戸惑っている。
「納得してないか?」
「え!?」
「僕には分かるさ」
七菜はニッコリとする。
「……絶対に……ひとりじゃ勝てなかった。なのに漢だけが注目されてる」
「まったく。僕も破耶先輩も海乃さんも美岬も偵徒も気にしないさ。実際、ゼヴァに勝ったのは君なんだから」
「おう」
緋の顔は晴れずにいた。
※ ※ ※
「起きなさい。起きなさい、緋!」
「む? ……?」
「こら! 二度寝しない。今日から学校よ!」
「……学校? ……そうだ!!」
緋は急いで飛び起きると、身支度を済ませた。
「行ってきます。母さん」
緋は高校に向かった。
※ ※ ※
「お! 飾ってある」
靴を履き替えて廊下を歩く七菜の目に、トロフィーが映った。
「あー! 間に合ったぜ!」
「おはよう」
「よ! 大会の優勝トロフィーだよな?」
「うん。先輩達に、良い贈り物を渡せた」
七菜の目が潤んでいる。
「次は七菜の番だぜ」
「頑張るさ」
緋と七菜は教室に向かった。
「きゃー!」
「妬けちゃうって」
「おめでとう」
教室が騒がしい。
「どうした。やけに賑やかだけど」
「聞いてよ七菜! さっちゃんに彼氏が出来たんだよ!」
「さっちゃんに?!」
「みんな大袈裟よ。まだ付き合い始めたばかりだし」
「おめでとう、さっちゃん。ゆっくり愛を育んでいってほしい」
七菜は拍手する。
「ありがとね」
さっちゃんは喜んだ。
「紅蓮ってヤツは居るか?」
教室の扉を男子が叩く。
「……漢が紅蓮だけど?」
「話がある。……その前にコレを見ろ」
男子は緋に手紙を渡した。
「……これって……ラブレター!?」
「渡せと五月蝿くてな」
「そうかあ。けど悪いが、この人の気持ちには応えられないぜ」
「わかった。伝えておくよ」
「……それで話ってのは?」
「屋上で話したい」
「分かった」
緋と男子は、屋上に向かった。
※ ※ ※
「……さてと……話すとするか」
「漢に話ってなんだ?」
「ボクは桐山札哉。会社の使いでキミを訪ねたんだ」
「仮面英雄伝 闘のか?」
「……仮面英雄伝 闘の開発会社の一社、ワープ社の社長の息子だ。キミとは別の形で既に会っている」
「へ?」
「……キリフダーと言えば分かるか?」
「キリフダー!?」
「キミの事は、キイラから聞いている。キミがレッドだとは信じがたいがな」
「そっか。それで漢を知ってたんだな」
「キミに伝えたいことは二つ。ひとつは謝罪だ。高校対抗戦の際は迷惑をかけた。あのときは社長の息子としての変な意地があって……済まなかった!」
「気にしないでいいぜ。んで、もう一つは」
「紅蓮緋。キミにワープ社からスペシャルアドバイザーの依頼が来ているんだ」
「スペシャルアドバイザー?」
「先日、キミが倒したゼヴァをプログラミングしたのは会社の社員だったんだ。それでキミに是非とも、今度わが社が送り出す新作のスペシャルアドバイザーとして協力してほしいと話が出てな」
「無理だぜ!? 漢、べつにプログラム関係は得意じゃないし……!」
「専門知識は要らない。ただ、新作の取材の為に海外に半年間行くことが決まっているから、パスポートを作っておいてほしい」
「パスポートは持ってるけど……半年間って何時からなんだ!?」
「来月からだ」
「……来月ー!? ……急すぎだぜ!!」
「返事は一週間後でいい。急な頼みで済まないが待っているよ」
札哉は屋上から降りていった。
「半年間か……」
緋は教室に戻っていった。
※ ※ ※
「……手紙は渡した」
札哉は電話をしている。
【なんて言っていた?】
「……キミの予想通りだ」
【そうよね……まあいいわ、吹っ切れた。それで例の件は?】
「返事は一週間後だ。結構戸惑っていたけど」
【わかったわ。ご苦労様】
「……キミなら大丈夫だ……キイラ」
札哉は励ます。
【気遣いどうも】
キイラが電話を切った。
「……悩むのよ? 七菜と半年も離れなければならないんだから!」
キイラが涙を拭った。




