偵徒/勝率0の脱出
「ちっーい!!!?」
「痛!!」
フルーツマンが、石に躓いて転んでしまう。
「もう! どーしてアイテム集めにログインしただけで、あんな化物級に遭遇するの~!」
「ひぃ!!!?」
爆発に怯えてうずくまる。
「もう諦めてログアウトしよ~」
しかし、爆発に捲き込まれて廃墟に飛ばされてしまう。
「……早くしなきゃ」
【ログアウト】
「よーし、これで!」
【……】
「あ……れ? ログアウトできない~」
「わああああ!?」
再び爆風で吹き飛ばされ、さらに爆発の衝撃で廃墟が崩れていく。
「……建物が……崩れて……えぇぇ!?」
フルーツマンは身体を動かすが、廃墟の一部が瓦礫となって動きを封じられていた。
「……ついてないな。僕~」
フルーツマンの上に、瓦礫となった廃墟が無情にも落下した。
(……)
(……)
(……)
【カウント】
(……不具合なのか判らないけど……自力でログアウトできないなら……このままカウントまで待っていれば……)
【10、9、8、7、6、5、4】
(このバカ偵徒おおお!! 敗けたら承知しないわよ)
偵徒の脳裏に美岬の声が浮かぶ。
(あ~あ。美岬ちゃんなら、言いそうだ~)
【アタック】
「ヒーリング」
瓦礫を退かしてフルーツマンが飛び出した。
「価値の無い敗けはしたくない!!」
【アタック】
「トロピカルバズーカ!」
フルーツマンがバズーカ砲で、爆発を起こす相手に反撃した。
「うー!!」
相手が起こす爆発がフルーツマンを容赦なく襲う。
「……全てが謎のアバター。姿は黒いオーラで覆われていて識別不能……、コードネームもレベルもアバタータイプも不明。今までいなかったハズだ……そんなのは~」
【ログアウト】
「駄目なのかな!?」
【ログアウト】
「お願い~!!」
フルーツマンの身体が消えだす。
「……」
黒いオーラが迫る。
「よし!!」
フルーツマンがログアウトした。
※ ※ ※
「ふー。危なかった~」
偵徒はマシンから出ると、仮面英雄伝の公式コミュニティサイトを見る。
「やっぱり大勢の報告が挙がってる。いきなり現れては、一方的に襲い掛かってくる。一切の攻撃が通じない!? 僕が弱かったのが理由じゃなかったんだ~」
画面をスクロールする。
『公式は仕様説を否定。現在、原因を究明中』
偵徒は腕時計を見る。
「新しいゲームの稼働まで一週間ないよ~。このままじゃ……気持ちよく移行できないよ~!!」
偵徒は不安を覚えた。




