破耶/忍び寄る影
「破耶、悪いけど葱を買ってきてくれ」
「その辺の葱で構わないのか?」
「急に団体の予約が入ったんだ」
破耶の父親が、残り少ない葱を見せる。
「仕方ない……ちょっと行ってくる」
破耶が出掛けた。
※ ※ ※
「やはり八百屋が良いか」
破耶は信号で止まる。
「……なんなのだ?」
破耶が気配を感じて振り返る。
「……気のせいか……」
信号が青になり歩き出す。
(まただ)
破耶は突き当たりを曲がる。
(なんだのだ!? この気配は?)
破耶は振り返るが誰もいない。
(本当に気のせいなのか!?)
破耶は走り出す。
(……くっ!?)
路地に入る。
(しつこいのだ!!)
壁に突き当たる。
「誰なのだ!! 姿を見せるのだ!!」
破耶は叫ぶが誰も出てこない。
「うん!?」
音のする方向に向く。
「隙あり!」
「なっ……!?」
押し倒された破耶の目に映ったのは、三人の男だった。
「ナンパは相手の隙を突けってね」
「荒いナンパをするのだな」
破耶が立ち上がる。
「おっと? 逃がさないよ。ナンパだから」
「残念だが、生憎わたしには恋人が居るのだ。すまないが退いてほしい。葱を買わなければいけないのでな」
破耶は歩き出すが腕を掴まれる。
「そう簡単に上玉を逃がすと思うか?」
「いい度胸だ」
破耶は腕を掴んでいる男の脛を蹴ると、走り出した。
「隙だらけな奴等だったのだ」
破耶の前に大量の空き缶が降ってきた。
「逃がさないんだよ?」
見知らぬ男が現れる。
(仲間が居たのか!?)
驚く破耶の後ろから男たちが追ってくる。
「俺がいなければ逃げられてたよ?」
「ああ助かったぜ」
男たちは勝手に盛り上がる。
(今のうちに!)
破耶は空き缶を踏み越える。
「逃がさないって言ったろ!」
男の一人は破耶を羽交い締めにする
「気が済むまで付き合ってもらう!」
「……野蛮な奴らなのだ!」
破耶は睨む。
「いいね~、その目サイコー!」
「くっ……!?」
破耶がズルズル引きずられていく。
(このままでは!?)
「あん? なんの音だ」
「ガハッ!?」
男の一人が倒れる。
「なんだよ!」
羽交い締めをしていた男の力が抜ける。
「こっちよ!」
別の腕に掴まれながら、破耶は通りに戻った。
「!?」
破耶は目を丸くする。
「助けてあげたんだから感謝しなさい」
「ありがとうなのだ……。キイラ」
破耶は驚きながらも感謝した。




